映画は、思った以上に面白かった。エンドロールが流れても、しばらく席を立てなかった。余韻がある。怖いというより、考えさせられる怖さ。主人公が最後に選んだこと。途中で出てきた意味深な部屋。誰が本当に見えていたのか。頭の中で、いくつもの場面がつながっていく。ロビーに出てから、私は珍しくパンフレットを買った。久しぶりの映画。久しぶりに、映画の余韻をちゃんと持ち帰りたいと思った。ページをめくる。その時、後ろから影が落ちた。少しだけ近い。翔太が自然に覗き込む。「え、俺こいつ死ぬと思ったのに」指差したキャラクター。私は思わず笑う。「私も同じこと思った」「でしょ?」自然に盛り上がる。考察。伏線。演出。話が止まらない。「あの鏡のシーン、絶対二回目見ると違うよね」「分かる。あれ、あの時点で入れ替わってるっぽい」「でも音だけ先に変わってなかった?」「変わってた。だからたぶん、あの部屋に入る前からおかしい」「だよね」翔太の目が、少し楽しそうに細くなる。こういう時の翔太は、話を合わせているというより、ちゃんと同じ場所で面白がっている。それが伝わる。だから会話が軽い。無理がない。一緒に同じものを見て、同じところで引っかかっている感じ。楓が呆れた顔をした。「なに?」私が聞くと、楓はポップコーンの空箱を持ったまま肩をすくめた。「二人ともなんか似てるね」少し間。「考え方」私は止まる。楓が続ける。「愛子の感性に合うこと、光栄に思いな?」謎のシスコン目線。翔太が少し笑った。「うん、まあ」少しだけ間を置く。それから、私を見る。「貴重だよね。相性の良さってあるし」からかっている。少しだけ。でも、目線がちゃんとこっちを見ている。冗談にして逃がしているのに、言葉の中身は軽くない。私は思わず視線を逸らした。なんで。そんな言い方をするんだろう。少しだけ、照れる。楓がまた空気を読まない。「なんかアートバー前に食べたくない?」「楓さっきポップコーン食べてたよね」「別腹」翔太が少し考える。「美味しいおにぎり屋あるけど行く?」「え、知ってんの?」「近いんで」「最高」楓が即答した。私は翔太を見る。「詳しいね」「この辺、映画のあとによく歩くので」「一人で?」聞いてから、少しだけしま
Last Updated : 2026-08-17 Read more