「どっ、どうって……」 そこで一瞬口ごもってから「す、すごく……感じのいい先生だった、よ?」と母親の方を見ないでつぶやく。 何だかいま美鳥に顔を見られたら、変な勘ぐりを入れられそうで怖かったからなのだけれど、どうしてそんなことを思ってしまったのかは、結葉自身にもよく分かっていなくて。 「すっごくいい男だったのね」 なのにさすが母親というべきか。 美鳥の確信めいた言葉に、結葉はカップを持つ手がピクッと跳ねた。「な、なんでそんなこと……っ」 ソワソワと視線を彷徨わせながら言ったら、「あの病院の院長先生がハンサムっていうのは満場一致でよく聞く話だもん」と美鳥が笑う。 その言葉に結葉は観念したように「……芸能人かと思うくらいハンサムな先生だった」と溜め息を落とす。 正直、幼なじみの想以外に、結葉があんなに胸をときめかせたのは初めてかも知れない。「もし先生とうまくいったら、想くんのこと、諦められそう?」 母親に労わるような声音を投げかけられて、今度こそ結葉は驚いてしまった。 想に片思いをしている話を、結葉は両親のどちらにも言った覚えなんてなかったからだ。「えっ」 驚きの声を発すると同時に美鳥の方を見たら、「気付いてないと思ってた?」と淡く微笑まれて。 その言葉に真っ赤になってうつむいたら、「何年貴女のお母さんをやってると思ってるの?」って頭をふんわり撫でられた。「だからね、想くんに彼女が出来たって聞いた時、お母さんゆいちゃんのこと心配だったの。だけど――」 そこで結葉の方にくるりと身体ごと向き直ると、美鳥がにっこり微笑む。「さっき福ちゃんと一緒に帰って来たゆいちゃんの表情を見てね、お母さん『あれ?』って思ったのよ?」 美鳥の言葉に
Last Updated : 2026-07-23 Read more