All Chapters of 妊娠中に夫が浮気。お腹の子を守るため離婚を決意したら御曹司に溺愛されました: Chapter 121 - Chapter 130

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お腹の子は大丈夫なの?

 「思いついたことがあるの」 和江は意味ありげに微笑んだ。 拓也は顔を上げる。「何?」「美月さん、お腹の子がいるのよね」「ああ」「だったら、赤ちゃんのことを心配してるはずでしょう?」 拓也は頷く。「それがどうしたの?」 和江はソファへ腰を下ろすと、当然のように言った。「だったら、その子のことを理由に連絡すればいいじゃない」「え?」「『子どものことが心配だから話がしたい』って」「きっと返事くらいは来るわよ」 拓也は少し考え込む。「でも……」「返事、来ないかな」「今まで何度連絡しても駄目だったじゃない」 和江は首を横へ振った。「今までは、あなたと美月さんの話だったでしょう?」「でも今回は違うの」「赤ちゃんの話よ」「母親なら、無視なんてできないわ」 拓也はスマートフォンを手に取る。 確かに、そのとおりかもしれない。 美月は何よりも子どもを大切にする。 だったら――。 和江はさらに続ける。「お腹の子の父親なんだから、心配する権利はあるでしょう?」「病院はどこなのか」「赤ちゃんは順調なのか」「ちゃんと聞かなきゃ駄目よ」 拓也は迷いながら、美月とのトーク画面を開いた。 何度送っても既読にならない画面。 しばらく指が止まる。 そして、短く文字を打ち始めた。『子どものことが心配です。』『一度だけでいい。話をさせてください。』 送信ボタンの上で指が止まる。「送ればいいのよ」 和江が背中を押す。「子どものためなんだから」 拓也は小さく息を吐き、そのまま送信した。 画面には「送信
last updateLast Updated : 2026-08-08
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助けを待っている

 翌朝。 拓也は目を覚ますと、真っ先にスマートフォンへ手を伸ばした。 画面を開く。 美月とのトーク画面には、昨夜送ったメッセージがそのまま残っていた。『子どものことが心配です。』『一度だけでいい。話をさせてください。』 既読は付いていない。「……まだか」 拓也は小さく息を吐いた。 夜はもう遅かった。 きっと寝ていただけだ。 そう思い直して朝食を済ませた。 だが、昼になっても状況は変わらない。 何度画面を開いても、既読は付かず、返信も来なかった。「おかしいな……」 思わず呟く。 子どものことを書けば、さすがに返事くらいは来ると思っていた。 美月は何よりも、お腹の子を大切にしていた。 だからこそ、この話だけは無視できないはずだった。「返事は来た?」 和江がリビングへ入ってきた。 拓也は力なく首を横へ振る。「いや……」「既読にもならない」「えぇ?」 和江は目を丸くした。「そんなのおかしいじゃない」「子どものことなのよ?」「美月さんが読まないわけないもの」 拓也も違和感を覚えていた。 美月は昔から、どんな内容でも必ず返事をくれる人だった。 忙しい時でも、『あとで連絡するね』の一言くらいは送ってくる。 それなのに今回は違う。 既読すら付かない。 和江は腕を組み、何かを確信したように何度も頷いた。「分かったわ」「え?」「あの九条さんよ」 拓也は顔を上げる。「きっと、美月さんのスマホを見られないようにしてるの」「そんなこと……」
last updateLast Updated : 2026-08-08
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助けに行かなきゃ

 「このままじゃ駄目よ」 和江は立ち上がると、リビングを落ち着きなく歩き始めた。「美月さんは助けを待ってるの」 拓也はソファへ座ったまま、小さく息を吐く。「でも、どこにいるか分からないんだ」「だから探すのよ」 和江は当然のように言った。「あなた、さっき何て言った?」「え?」「メッセージを送っても既読にならないんでしょう?」「ああ……」「そんなの、おかしいじゃない」 和江は何度も頷く。「スマホを自由に使えないってことよ」「だから返事もできないの」 拓也はスマートフォンを見つめる。 既読が付かない画面。 和江の言葉が頭から離れない。「もし、本当にそうだったら……」「本当よ」 和江は即座に言い切った。「美月さんは優しいもの」「あなたを無視するなんて、絶対にしないわ」 拓也はゆっくりと俯いた。 美月は、困っている。 誰かに自由を奪われている。 そう考え始めると、これまでの出来事まで違って見えてきた。 弁護士を立てたことも。 実家へ帰らなかったことも。 カフェを辞めたと言われたことも。 全部、九条に言われたからではないか。「……助けないと」 その言葉は、今度ははっきりと口から出た。 和江は満足そうに笑う。「そう、その意気よ」「親として見過ごせないもの」「親?」 拓也が首を傾げる。「あら」 和江は少し照れたように笑う。「私はもう、美月さんのことを娘だと思ってるのよ」「だから放っておけないの」 その言葉は一見すると優しく聞こえる。
last updateLast Updated : 2026-08-08
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九条蒼真

 翌朝。 拓也は朝から落ち着かなかった。 スマートフォンを開いても、美月からの返事はない。 既読すら付かないメッセージを見つめ、大きく息を吐く。「……何なんだよ」 その様子を見ていた和江が、ふと思い出したように口を開いた。「そういえば」「何?」「美月さんと一緒にいた人、九条さんって言ってたわよね」 拓也は頷く。「ああ」「下の名前は……蒼真、だったか」 ホテルで名乗っていたのを思い出す。 和江は腕を組んだ。「その人が何者なのか調べてみたら?」「何者って……」「今は何でもネットで分かる時代でしょう?」 その言葉に、拓也はスマートフォンを手に取る。 検索画面を開き、『九条 蒼真』 と入力した。 検索結果が表示される。「……え?」 思わず目を見開いた。 最初に表示されたのは、企業の公式サイトだった。 そこにはスーツ姿の蒼真の写真とともに、大きく肩書が記されている。『代表取締役CEO 九条蒼真』「CEO……?」 拓也は信じられないというように画面を見つめた。「社長なの?」「どれどれ?」 和江も隣から画面を覗き込む。「まあ……」 二人はしばらく言葉を失った。 拓也の知る蒼真は、美月を連れてホテルにいた男。 それ以上でも、それ以下でもなかった。 まさか、大企業の経営者だったとは思いもしなかった。 拓也は震える指で画面をスクロールする。 企業紹介。 経営者インタビュー。 経済誌の記事
last updateLast Updated : 2026-08-09
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計画的だったんだ

 拓也はソファへ腰を下ろしたまま、スマートフォンの画面を見つめていた。 表示されているのは、九条蒼真のインタビュー記事だった。『若き経営者として注目を集める九条ホールディングスCEO』『冷静な判断力と卓越した経営手腕』 そんな見出しが並んでいる。「こんな人だったのか……」 拓也は思わず呟いた。 ホテルで会った時は、ただ雰囲気のある男だと思っていた。 だが、画面の向こうの男は違う。 テレビや雑誌にも取り上げられるような有名人だった。「だから余裕があったのね」 和江も隣で記事を読んでいる。「ホテルであなたと話した時も、全然慌ててなかったもの」 拓也はホテルでの出来事を思い返した。 自分が感情的になっても、蒼真は終始落ち着いていた。 あの時は腹が立っただけだった。 だが今は、別の考えが頭をよぎる。「最初から自信があったんだ……」「え?」「俺なんか相手にならないって」 そう思っていたから、あんな態度だったのではないか。 拓也は勝手に結論づける。 和江も大きく頷いた。「そうよ」「お金も地位もある人なんでしょう?」「だから、美月さんだって落とせると思ったのよ」 証拠はない。 だが二人の中では、その考えが少しずつ事実へ変わっていく。 拓也は別の記事を開いた。 そこには、蒼真が新しい福祉事業へ力を入れているという内容が載っていた。「福祉……?」「社会貢献もしてるのね」 和江は鼻で笑う。「表向きは、でしょう?」「こういう人ほど、裏では何を考えてるか分からないものよ」 拓也は何も言わなかった。 画面に映る蒼真の穏やかな笑顔。
last updateLast Updated : 2026-08-09
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思い込み

 拓也の視線は、本社の住所が表示された画面で止まっていた。「やっぱり会いに行くの?」 和江が尋ねる。 拓也はすぐには答えない。 しばらく画面を見つめたあと、スマートフォンをゆっくり伏せた。「……その前に、一つだけ気になることがある」「何?」「九条は、どうして美月を助けたんだ」 あの日、偶然職場で倒れた美月を病院へ連れて行った。 その後、住む場所まで用意した。 普通なら、そこまで他人に親切にするだろうか。「やっぱり、おかしい」 拓也は何度目か分からない言葉を口にする。 和江は腕を組みながら頷いた。「そうよ」「社長さんなんでしょう?」「忙しい人が、見ず知らずの女性のために、そこまでする?」「……しないよな」「でしょう?」 和江は身を乗り出す。「最初から美月さんが目当てだったのよ」「だから助けたの」「弱っているところにつけ込んだんじゃない?」 証拠はない。 ただの想像だった。 それでも拓也の胸には、その言葉がすとんと落ちた。「そうだったのか……」 美月は優しい。 困っている人を疑わない。 だから恩人だと思い込み、そのまま九条を信じてしまったのではないか。 そう考えると、これまでの出来事が一本の線でつながる気がした。「きっと今も、美月は気付いてないんだ」 拓也は小さく呟く。「九条の本当の目的に」 和江は満足そうに微笑んだ。「だから、あなたが助けてあげないと」「夫なんだから」 拓也は拳を握り締める。 助けなければ。 このままでは美月が利用されてしまう。 そんな
last updateLast Updated : 2026-08-09
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代表番号

 翌日の昼過ぎ。 拓也はスマートフォンを握ったまま、何度も深呼吸を繰り返していた。 画面には、九条ホールディングスの公式サイトが表示されている。 代表電話番号。 その数字を見つめながら、指先だけが動かなかった。「掛けないの?」 和江が不思議そうに尋ねる。「……掛ける」 そう答えたものの、緊張は隠せない。 相手は大企業の社長だ。 今まで関わったことのない世界の人間だった。 それでも、確かめたい。 美月は本当に自分の意思であの男のそばにいるのか。 拓也は意を決し、通話ボタンを押した。『ありがとうございます。九条ホールディングスでございます』 落ち着いた女性の声が聞こえる。「あ、あの……」「九条蒼真さんをお願いしたいんですが」『失礼ですが、お名前を頂戴できますでしょうか』「朝倉です」「朝倉拓也といいます」 電話口の女性は穏やかな口調のまま続けた。『恐れ入りますが、お約束はございますか』「ありません」「でも、大事な話なんです」『申し訳ございません』『お約束のないお取次ぎはいたしかねます』 拓也は焦る。「一言だけでいいんです」「本人に伝えてください」「美月のことで話がありますって」 一瞬、電話口が静かになった。 女性は少し間を置いてから答える。『申し訳ございませんが、ご用件はお伺いできかねます』『必要でしたら、ご面会のお約束をお取りください』「だから、その約束が――」『失礼いたします』 静かに通話が切れた。 拓也はしばらくスマートフォンを耳へ当てたまま動かなかった。「切られたの?」 和江
last updateLast Updated : 2026-08-09
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会わせてください

 翌日の午後。 拓也と和江は、九条ホールディングス本社の前へ立っていた。 ガラス張りの高層ビルを見上げ、拓也は思わず息をのむ。「大きい会社ねぇ」 和江も周囲を見回しながら呟く。「こんなところで働いてるのね」 拓也は何も答えず、自動ドアをくぐった。 広々としたエントランスには、受付カウンターが設けられている。 受付係は二人へ気付くと、笑顔で一礼した。「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」 拓也は一歩前へ出る。「九条蒼真さんにお会いしたいんです」「恐れ入りますが、お約束はございますか」「ありません」 受付係は変わらぬ笑顔で答えた。「申し訳ございません。お約束のないご面会は承っておりません」「昨日、お電話もしたんです」 拓也は食い下がる。「どうしても本人に話したいことがあるんです」「申し訳ございません」 受付係は深く頭を下げる。「お取り次ぎもいたしかねます」「お願いします」「ほんの五分でいいんです」 拓也の声が少し大きくなる。 近くを歩いていた社員が足を止め、ちらりとこちらを見た。 受付係は落ち着いた口調を崩さない。「申し訳ございませんが、ほかのお客様のご迷惑になりますので、お声の大きさをお控えください」「でも!」 拓也は焦りを隠せなかった。「妻のことなんです!」「妻が、九条さんと一緒にいるんです!」 受付係の表情は変わらない。「恐れ入りますが、その件につきましても、お取り次ぎはいたしかねます」「どうしてですか!」 その瞬間。 少し離れた場所に立っていた警備員が静かに近付いてきた。「お客様」 穏やかな口調だった。「こちらでお話を伺いますの
last updateLast Updated : 2026-08-10
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もう来たのですね

 コンコン――。 控えめなノックのあと、秘書が執務室へ入ってきた。「失礼いたします」 蒼真は書類から顔を上げた。「どうしました」「受付から報告がございました」 秘書は手元のタブレットを確認しながら続ける。「朝倉拓也様と名乗る男性が来社されました」 蒼真の表情は変わらない。「受付で面会を希望されましたが、お約束がなかったため、お断りしております」「何か問題はありましたか」 蒼真は静かに尋ねた。「大きな騒ぎにはなっておりません」「受付で少し声を荒らげる場面はあったようですが、警備員が対応し、お二人ともお帰りになりました」「そうですか」 蒼真は小さく頷く。「受付や警備には迷惑を掛けましたね」「申し訳ないと、お伝えしておいてください」「かしこまりました」 秘書は一礼する。 蒼真は窓の外へ視線を向けた。 拓也が会社まで来る可能性は考えていた。 だから驚きはしない。 問題は、その行動が少しずつ大胆になってきていることだった。「社長」 秘書が静かに声を掛ける。「今後も同様のことがございましたら、どのように対応いたしましょうか」 蒼真は少し考え、穏やかな口調で答えた。「これまでどおりで構いません」「お約束のない面会はお断りしてください」「受付や警備の皆さんにも、そのように共有をお願いします」「承知いたしました」 秘書はメモを取りながら頷く。 蒼真は少し間を置いてから続けた。「それと」「朝倉さんが外出される予定がある日は、私にも知らせてください」 秘書は一瞬だけ驚いたような表情を見せたが、すぐに頷いた。「かしこまりました」 秘書が退室すると、執務室には再び静けさが戻る。 蒼真は机の上に置かれたスマートフォンへ視線を落とした。 会社まで来たことを、美月へ伝えるつもりはない。 妊娠中の彼女を、不必要に不安にさせたくなかった。「……まだ大丈夫です」 誰に言うでもなく、小さく呟く。 できることなら、このまま何事もなく終わってほしい。 そう願いながら、蒼真は再び机の書類へ視線を戻した。 一方その頃。 会社をあとにした拓也は、車の助手席で黙り込んでいた。「会えなかったわね」 和江がぽつりと呟く。 拓也は前を向いたまま、小さく頷いた。「ああ」「でも……」 その目には、諦めの色はなかった。「
last updateLast Updated : 2026-08-10
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次の健診

 数日後。 美月はダイニングテーブルで母子手帳を開いていた。 診察券を確認し、予約票へ目を落とす。「次は明後日……」 ぽつりと呟く。 お腹へ手を添えると、小さく笑みがこぼれた。「順調だといいね」 まだ胎動は感じない。 それでも、お腹の中で少しずつ育っている命を思うと、不思議と心が温かくなった。 その時、蒼真がリビングへ入ってくる。「何か確認しているんですか」「次の健診の日です」 美月は母子手帳を見せながら微笑んだ。「明後日なんです」「そうですか」 蒼真は静かに頷く。「体調はいかがですか」「大丈夫です」「前よりつわりも落ち着いてきました」「無理はしないでください」「はい」 短いやり取りだった。 けれど、美月はその何気ない会話が心地よかった。 必要以上に踏み込まず、それでいて気に掛けてくれる。 そんな距離感がありがたかった。「健診の日も、お送りします」 蒼真が自然に言う。 美月は少し申し訳なさそうな表情になる。「いつもすみません」「気にしないでください」「朝倉さんと赤ちゃんが無事でいることが、一番大切ですから」 その言葉に、美月は照れくさそうに笑った。「ありがとうございます」 少し前まで、一人で不安を抱えていた毎日が嘘のようだった。 病院へ行くことも、帰り道を心配することもない。 安心してお腹の子のことだけを考えられる。 そんな日々を過ごせるとは思ってもいなかった。 一方その頃。 拓也は、自宅でぼんやりとスマートフォンを眺めていた。 美月からの返信は、相変わらずない。「拓也」 和江が新聞を畳み
last updateLast Updated : 2026-08-11
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