「思いついたことがあるの」 和江は意味ありげに微笑んだ。 拓也は顔を上げる。「何?」「美月さん、お腹の子がいるのよね」「ああ」「だったら、赤ちゃんのことを心配してるはずでしょう?」 拓也は頷く。「それがどうしたの?」 和江はソファへ腰を下ろすと、当然のように言った。「だったら、その子のことを理由に連絡すればいいじゃない」「え?」「『子どものことが心配だから話がしたい』って」「きっと返事くらいは来るわよ」 拓也は少し考え込む。「でも……」「返事、来ないかな」「今まで何度連絡しても駄目だったじゃない」 和江は首を横へ振った。「今までは、あなたと美月さんの話だったでしょう?」「でも今回は違うの」「赤ちゃんの話よ」「母親なら、無視なんてできないわ」 拓也はスマートフォンを手に取る。 確かに、そのとおりかもしれない。 美月は何よりも子どもを大切にする。 だったら――。 和江はさらに続ける。「お腹の子の父親なんだから、心配する権利はあるでしょう?」「病院はどこなのか」「赤ちゃんは順調なのか」「ちゃんと聞かなきゃ駄目よ」 拓也は迷いながら、美月とのトーク画面を開いた。 何度送っても既読にならない画面。 しばらく指が止まる。 そして、短く文字を打ち始めた。『子どものことが心配です。』『一度だけでいい。話をさせてください。』 送信ボタンの上で指が止まる。「送ればいいのよ」 和江が背中を押す。「子どものためなんだから」 拓也は小さく息を吐き、そのまま送信した。 画面には「送信
Last Updated : 2026-08-08 Read more