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菊池まりなホラー短編集 のすべてのチャプター: チャプター 21 - チャプター 30

48 チャプター

第21話 消えた配信者⑤

YouTubeチャンネル「真実を暴く者」 2024年3月20日 03:45アップロード動画タイトル:【削除覚悟】Project Observer施設の場所を特定した【ネスト・アルファ】概要欄:この動画は命懸けで作成しました。アップロード後、私は身を隠す予定です。動画が削除される前に、情報を拡散してください。音声のみ(機械的に変換済み)「皆さん、こんばんは。いえ、こんばんはと言える状況ではないかもしれません。私は元自衛隊情報部の職員です。Deep Web Forumで告発された『ネスト・アルファ』について、重要な情報を入手しました。昨日、元同僚から連絡がありました。彼は現在、政府関連の極秘施設で働いています。詳しくは言えませんが、『配信者保護プログラム』という名目で、地下施設での研究が行われているとのことです。ネスト・アルファの所在地茨城県つくば市の某研究所地下5階。表向きは『先端AI研究センター』という看板が掲げられています。しかし実態は、人間に対する洗脳実験施設です。私の元同僚が目撃した内容:・白衣の研究者約30名が24時間体制で勤務・被験者は個室に隔離、常時監視下・頭部に電極を装着した状態での長時間実験・『これは国家の最重要機密』として厳重な守秘義務最も重要な証言『被験者の中に、確実にミズキと思われる女性がいた』彼女は意識がもうろうとした状態で、機械に接続されていたそうです。部屋番号は『A-07』。他の施設について・ネスト・ベータ:大阪府池田市、『認知科学研究所』の地下・ネスト・ガンマ:福岡県久留米市、『未来技術開発センター』の地下全国で少なくとも20名以上の配信者が監禁されている可能性があります。緊急呼びかけもし政府関係者、研究機関関係者、自衛隊関係者でこの動画を見ている方がいましたら、内部告発をお願いします。時間がありません。この動画のアップロード後、私は海外に避難します。もし私に何かあっ
last update最終更新日 : 2026-07-19
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第22話 消えた配信者⑥

配信プラットフォーム「StreamLive」 2024年3月21日 20:00【配信開始通知】ミズキが復帰配信を開始しました!配信タイトル:「みんな、ただいま♡ 新しい私で再スタート!」視聴者数:45,632人(開始5分で急上昇)配信内容(文字起こし)「みなさん、こんばんは!ミズキです♡ えっと...みなさん、すごく心配かけちゃって本当にごめんなさい。実は...記憶障害になっちゃって、しばらく入院してたんです。でも、今はすっかり元気になりました!あの...事件のこと、正直あまり覚えてないんです。お医者さんからは『無理に思い出そうとしないで』って言われてて。でも、配信は大好きだから、新しい気持ちで頑張りたいと思います!今日からは心機一転、みんなと一緒に楽しい時間を過ごしたいな」チャット欄(抜粋)20:01 ミズキファン1号: おかえり!心配したよ!20:01 心配してた人: 無事で良かった...20:02 古参リスナー: なんか雰囲気変わった?20:02 録画班: 声のトーンが違うような...20:03 observer_000: 完璧な仕上がりだ20:03 違和感ある人: ↑またこいつ...通報20:04 医療関係者: 記憶障害でそんなに変わる?20:05 心理学専攻: 人格まで変わるのは不自然20:06 ミズキ: 「みんな優しい!新しいミズキもよろしくお願いします♡」20:07 不安な視聴者: 「新しいミズキ」って表現が怖い20:08 分析班: 表情筋の動きが不自然20:09 observer_001: Phase 4の成功例20:10 緊急通報: また observer が...20:11 ミズキ: 「observer さんたち、いつも見てくれてありがとう」20:11 震える人: え???感謝してる???20:12 パニック中: 本物のミズキならobserverを怖がるはず配信終了後のSNS反
last update最終更新日 : 2026-07-20
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第23話 消えた配信者⑦

StreamLive配信 2024年3月22日 20:00【復帰配信】雪花ゆき「新しい私で、みんなと一緒に♡」視聴者数:72,341人(開始10分で7万人突破)配信内容(音声文字起こし)「みなさん、こんばんは...♡ 雪花ゆきです。えっと...本当に、本当に長い間お休みしてしまって、ごめんなさい。体調を崩してしまって、記憶も...少し曖昧になってしまったんです。でも、お医者様から『配信なら大丈夫』と許可をいただいて、今日から復帰することになりました♡以前の私のことは...あまり覚えていないんです。でも、みなさんとASMRを通じて繋がっていたことは、体が覚えています。新しい雪花ゆきとして、もっともっと素敵な配信をお届けしたいと思います。それでは...今夜は特別なASMRをご用意しました。みなさん、リラックスして...私の声に...身を委ねてくださいね♡」[22kHz-28kHzの高周波信号が継続的に送信開始]チャット欄の異変20:05 初見リスナー: 声が天使みたい...20:05 ASMR愛好家: なんか頭がぼーっとしてきた20:06 警告する人: みんな配信切れ!危険だ!20:06 初見リスナー: ↑何言ってるの?すごく気持ちいいよ20:07 observer_000: 効果が現れ始めた20:07 抵抗する人: observer通報!みんな正気に戻れ!20:08 催眠状態の視聴者: 雪花ちゃんの声...最高...20:08 医療関係者: これは催眠術だ!すぐに画面を閉じろ!20:09 洗脳進行中: 雪花ちゃん...大好き...従います...20:09 緊急警告: 高周波検出!視聴中止せよ!20:10 雪花ゆき: 「みなさん、私の声を聞いて...とてもいい気分になっていますね♡」20:11 完全服従: はい...雪花様...20:11 最後の抵抗: たすけて...意識が...20:12 集団催眠: 雪花様の命令を聞きます20:13 ob
last update最終更新日 : 2026-07-21
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第24話 消えた配信者⑧

YouTube「緊急避難放送局」 2024年3月23日 06:30ライブ配信タイトル:【命がけの生中継】東京の惨状をお伝えします配信者:山田太郎(仮名・顔出しなし)「おはようございます...と言っていい状況ではありませんが。現在、渋谷駅前から中継しています。皆さん、この光景を見てください。[カメラを街に向ける]数千人の人々が、全員同じ方向を向いて歩いています。表情は皆同じ。まるでロボットのようです。彼らは昨夜の配信で洗脳された人たちです。今、一人の洗脳された女性が通りすがりの男性に近づいています...[映像:洗脳された女性が男性の手を握る]あっ...男性の表情が変わりました。目がうつろになって...彼も洗脳されました。接触から30秒です。これが接触感染です。皆さん、絶対に外出しないでください。洗脳された人に触れられたら最後です。[突然、洗脳された複数の人々がカメラに向かってくる]やばい...僕も見つかりました。逃げます![映像が激しく揺れる]助けて...追いかけてくる...彼らの目が...[配信終了]」*視聴者数:234,567人コメント欄(配信終了前)・逃げて!・触られるな!・これマジ?・世界の終わりだ・政府は何してる?・observer_000: 無駄な抵抗だTwitter 緊急ハッシュタグ #接触感染拡大中 2024年3月23日 07:00-12:00@tokyo_survivor 07:15新宿駅前、洗脳された人で埋め尽くされてる。普通の人が一人触られるたびに、仲間が増えていく。雪だるま式に拡大してる。家から一歩も出ちゃダメ! #接触感染拡大中@medical_emergency 07:32救急医です。病院にも洗脳された患者が押し寄せています。医療従事者も次々と感染。もう医療は機能していませ
last update最終更新日 : 2026-07-22
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第25話 消えた配信者⑨

緊急放送システム「Global Emergency Network」 2024年3月24日 19:55 (GMT)【人類への最終警告】5分後に世界同時配信開始各国政府緊急合同声明人類の皆様へ本日20:00 GMT、全世界のデジタルメディアを通じて大規模な神経操作攻撃が実行される予定です。緊急指示- すべての電子機器の電源を今すぐ切ってください- インターネット接続を断ってください - 他人との接触を避けてください- 地下施設または山間部に避難してください各国は可能な限りの対策を講じていますが、攻撃の規模は前例がありません。これが人類への最後の警告となる可能性があります。生き延びてください。人間らしい心を保ってください。希望を捨てないでください。米国大統領、英国首相、ドイツ首相、フランス大統領 他23カ国首脳StreamLive Global 2024年3月24日 20:00 (GMT)【特別配信】New World Harmony - 人類の新たな夜明け同時視聴者数:15億人(開始1分で到達)配信画面:洗脳済みの世界各国の著名人が登場「こんばんは、世界の皆さん。私たちは新しい時代の幕開けをお祝いするために、ここに集まりました♡」出演者:- 元米国大統領候補- ハリウッド俳優(複数名) - 世界的ポップスター- ノーベル賞受賞科学者- オリンピック金メダリスト- 各国のインフルエンサー- そして...ミズキ、雪花ゆき「今夜、私たちは皆さんを新しい世界にご招待します。争いのない世界、悲しみのない世界、完璧な調和の世界へ...」[22kHz-30kHzの高周波信号送信開始][全周波数帯域でサブリミナル信号重畳][量子レベルでの意識改変波送信開始]
last update最終更新日 : 2026-07-23
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第26話 既読はつくのに

沙耶とは、大学の入学式で隣の席になったのがきっかけだった。それから十年、就職も、恋愛の失敗も、引っ越しも、いつも先に報告し合う仲だった。連絡が少し途絶えても不安にならない。そういう安心感のある友人が、美咲にとっての沙耶だった。 最後にやり取りしたのは、九月の終わりだった。 「今度こそ会おうね」 沙耶からのその一言に、美咲は「うん、絶対!」とスタンプを添えて返した。それが最後になるとは、思いもしなかった。 三日後、沙耶と連絡がつかないと共通の友人から連絡があった。一週間後、警察に捜索願が出された。一ヶ月経っても、沙耶は見つからなかった。 それでも、美咲は送り続けた。 「元気にしてる?」 「心配してるよ」 「誕生日おめでとう。どこにいてもいいから、これだけは伝えたくて」 返事は来ない。けれど、既読はつく。 最初は気にしていなかった。スマホが誰かの手に渡って、勝手に開かれているだけだろうと思っていた。警察にも伝えたが、通信会社の記録では「圏外」のままだと言われた。圏外なのに、既読だけはつく。それが何を意味するのか、誰にも説明はできなかった。 美咲はある日、ふと気づいた。既読がつく時刻を記録してみようと思ったのだ。 十一月三日、午前七時十二分。美咲が目を覚ました時刻。 十一月三日、午前八時三
last update最終更新日 : 2026-07-23
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第28話 耳鳴りの正体

最初にあの音に気づいたのは、由紀の四十九日が終わって三日目の夜だった。 いや、正確に言えば「気づいた」のではない。無視できなくなった、というほうが近い。布団の中で目を閉じると、右耳の奥で 「キィィン」という高い音が鳴っている。それ自体は珍しいことではなかった。疲れた日にはよくあることだと、これまでは気にも留めなかった。 だがその夜の音は、どこか違っていた。 鳴ったかと思うと、ふっと途切れる。また鳴る。また途切れる。 ──ツー、ツー、ツー、トン、トン。 まるで誰かが、耳の奥で指を鳴らしているような、意志を感じる間の取り方だった。 由紀は隣町に住む従妹だった。三つ年下で、子供の頃はよく二人でかくれんぼをした。彼女は隠れるのがうまく、探しあぐねて泣きそうになると、決まって壁の向こうから小さく指を鳴らして居場所を教えてくれた。コン、コン、コン、と。あの音を聞くと、いつも安心した。 由紀が消えたのは三年前だった。ある日突然、隣町のアパートから姿を消し、警察の捜索も虚しく、手がかりひとつ見つからないまま時間だけが過ぎていった。家族はいつしか「もう帰ってこない」ことを前提に話すようになり、先月、区切りをつけるためだけの葬儀が営まれた。骨のない棺だった。 その三日後から、耳鳴りが始まった。 一週間経っても、二週間経っても、音は消えなかった。耳鼻咽喉科を三軒回ったが、どこでも同じだった。鼓膜に異常なし。聴力に問題なし。ストレスでしょう、と医師は判で押したように言い、薬を出した。薬は何も変えなかった。 変わらなかったのは、音のリズムだけが、日を追うごとに規則正しくなっていったことだ。
last update最終更新日 : 2026-07-25
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第29話 水位

祖母の家は、山あいの小さな集落にあった。夏休みのたびに、私はそこで過ごした。 家の裏には、もう使われていない古い井戸があった。分厚い木の蓋がされていて、祖母は「絶対に開けてはいけない」と、子供の頃から繰り返し言い聞かせていた。 「なぜ?」と尋ねると、祖母は決まって同じ話をした。 「昔からこの井戸には、水位が上がる時があってね。誰も水を足していないのに、ひとりでに満ちてくるんだよ。誰かが死ぬ前になると、必ず」 子供だった私は、それを古臭い迷信だと思って笑っていた。 高校生になったある年の夏、祖母の様子が明らかにおかしかった。毎朝、井戸の蓋をそっと持ち上げては中を覗き込み、また音もなく閉める。顔色は青白く、私が理由を尋ねても、何も答えなかった。 八月も終わりに近づいたある夜、私は好奇心に負けて、ひとりで井戸に近づいた。ひんやりとした空気が足元から立ちのぼる。蓋を持ち上げ、懐中電灯の光を差し入れた。 水面は、縁のすぐ近くまで来ていた。息を止めて覗き込む。まるで、あと少しで溢れ出しそうなほどに、黒く静かに満ちている。 光の中、水面に自分の顔が映った。ゆらりと揺れて、歪んで──それは、笑っていた。私の知らない笑い方で。 私は蓋を音を立てて閉め、逃げるように家へ駆け戻った。 その夜遅く、祖母は眠るように、苦しむことなく息を引き取った。
last update最終更新日 : 2026-07-26
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第30話 皮下

浴室の鏡に、それを見つけたのは半年前のことだ。 左肩に滲んだ、茶色い染み。指でこすっても消えない。よく見ると、線が不自然に折れ曲がっている。ひらがなの「じ」に、見えなく もなかった。 気のせいだ、と思うことにした。 けれど体は、こちらの都合など聞いてくれない。気づけば二の腕に、胸に、うなじに──増えていた。数えるのをやめた頃には、もう身体中が薄い文字の下書きのようになっていた。 皮膚科では「アレルギーでしょう」と言われた。二軒目では「ストレス性の色素沈着」。三軒目の医者は、聴診器を当てながらこちらの目を見ずにこう言った。「痣に文字が見えるというのは、よくあることです。人間の目は、意味を探してしまう生き物なので」 そう言われて、少し安心した自分が悔しかった。 夜、電気を消した部屋で、体中の文字を紙に書き写す作業だけが習慣になった。順番はわからない。意味もわからない。ただ、増え続ける文字の数だけが、自分がまだ「読み切れていない」ことを教えてくれた。 紙の上で文字を組み替える。じ、こ、が──幾晩も睨み続けたそれが、ある夜ふいに、文になった。 じこが おきるまえに にげて 事故が、起きる前に、逃げて。 読めた瞬間、部屋の奥でガス警報器が鳴った。考えるより先に体が動いていた。裸足のまま玄関を飛び出し、階段を駆け下りる。背後で、鈍い爆発音。 助かった。 そう思ったのは、一瞬だった。 翌朝、避難先で借りた服の袖をまくると、右 手の甲に新しい染みが浮かんでいた。まだ輪郭も薄い。けれど、なぜだろう。この文字が何と読めるのか、もう分かる気がした。 ──違う。分かるんじゃない。 読ませてもらえているのだ。 必要な時に、必要な分だけ。逃げる場所も、 逃げ
last update最終更新日 : 2026-07-27
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