ここは安全じゃない。だから怜司は短く告げ、余計な説明はしなかった「おばあさんに頼まれて来たんだ。おばあさんが言うには……」言いかけたその時、怜司の顔色が変わり、遥を力強く突き飛ばした。パァン!一発の銃弾が怜司の腕をかすめ、たちまち袖が真っ赤に染まった。「逃げろ!」彼は遥の手を引き、大木の陰に身を潜めた。遥は両手で彼の傷口を押さえた。指の隙間から、温かい血がどくどくとあふれ出す。「泣くな」怜司は空いた手を伸ばし、彼女の頬を伝う涙をそっと拭う。「俺は平気だ」「頼んでなんかないのに……っ」遥は声を詰まらせながら、慌ててスカートの裾を破り、傷口にきつく巻きつけた。「こんなに出血してる!」遠くから争う物音が聞こえてくる。怜司の護衛たちが、すでに襲撃者と交戦していた。彼は痛みをこらえながら、どうにか立ち上がり、遥を背後に庇う。「ここから離れないと」遠くに焼け落ちた家が見えた。それを見つめる遥の心は、重く沈んでいった。これもまた、西園寺家からの警告なのだろう。警告ならもう何度も受けてきた。それでも足を止めなかったのは、遥自身だ。けれど今回は無駄ではなかった。彼女はあのノートを手に入れたのだから。その後、遥は怜司に付き添って病院へ向かった。消毒液の匂いが鼻を突く。遥は処置室の外の椅子にへたり込んでいた。怜司が運び込まれてから、もう30分が過ぎている。彼女のスカートの裾には、まだ彼の血痕が残っていた。幸い傷は浅く、出血量こそ多かったものの、命に別状はないとのことだった。「遥ちゃん!」貴子が車椅子で駆けつけてきた。怜司が怪我をしたことは貴子に知らせないよう、遥は皆に固く口止めしていたはずだが、どういうわけか、すでに貴子の耳に入っていた。「おばあさん……?どうしてここに」「怜司が怪我をしたと聞いたわ。どうしてあなたたち、私に黙っていたの?」貴子は遥の手を握り、頭から足元まで心配そうに見つめた。「遥ちゃんは大丈夫なの?」遥は首を横に振った。「私は平気よ。おばあさん、落ち着いて。彼も……」言葉を遮るように、処置室のドアが開いた。医師が出てきてマスクを外した。「出血は多かったですが、命に別状はありません。数日は入院していただきます」遥はほっと息をついた。もし怜
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