「そこで考えたのです。靖也さんに競り落としてもらい、それを私から会長に贈るという形にすれば、遠回りではありますが、その方がかえって会長の格を引き立てる贈り方になるのではないかと」善起はそれを聞くと一瞬きょとんとした顔を見せ、やがて大声で豪快に笑い出した。「いい、実にいい!なかなか面白いことを考えるお嬢さんだ!その発想、その計略、なかなかできることじゃない!」ひとしきり笑うと、善起は表情を改めた。「以前、君についていろいろ言われていたことも、今なら信じる気にはなれないな。これだけ頭が切れて、肝も据わっている君が、あんな軽率なことをするとは思えん。誰かにはめられたと考えるほうが自然だ。これから、うちと関わっていく中で何か困ったことがあれば、遠慮なく言ってくれ。疑いを晴らすためなら、私もできる限り力になろう」遥は立ち上がると、善起に向かって深々と頭を下げた。「信頼してくださり、またお力添えまでいただき、ありがとうございます。このご恩は、決して忘れません。この先も誠心誠意、ご期待に沿えるよう努めてまいります」善起は手で制して座るように促し、再び事業の話を始めた。時が経つのも忘れ、気づけばふたりはすっかり話し込んでいた。「今日は話せて、実に有意義だった。これからも、ぜひ気軽に顔を出してくれ。もっといろいろと話をしよう」善起は立ち上がり、自ら遥を玄関まで見送った。「こちらこそ、恐れ入ります。お話しできたこと、光栄に思っております」遥が去ったあと、善起の表情は一変した。「父さん、だから言ったでしょう、遥さんはなかなか得難い人材だって。彼女の誠意を見てくださいよ、300億円もの茶器ですよ。うちとの付き合いにも、彼女は間違いなく本気ですよ」息子の言葉を聞きながら、善起はただ笑うばかりで何も言わなかった。昭は父の真意がつかめず、さらに探りを入れる。「父さん、彼女を色眼鏡で見ないでやってくださいよ」「お前がこれほど誰かを気に入って推すのは珍しいことだ。俺も、お前の見込みを信じて考えてみるとしよう」この言葉は昭にとって、ひとまずの安心材料となった。本当かどうかは分からないにせよ。少なくとも表向きには、善起が遥と手を組む流れになったのは確かで、それは彼女が当時の事件を調べる上で好都合だった。親子は二言
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