それから数日、家の中は変わらなかった。朝になれば航生が起きる。愛音は朝食を並べ、空になった食器を片づける。洗濯機を回している間に掃除を済ませ、昼になれば洗濯物を取り込む。時計の針だけが、いつものように進んでいった。 翌朝も、目覚ましの音で目を覚ます。カーテンを開けると、薄い雲が空に広がっていた。愛音は窓を少し開け、外の空気を入れる。キッチンへ行き、炊飯器を確認する。米は炊き上がっていた。 航生が起きてくるまでに、味噌汁を温める。冷蔵庫から卵を取り出し、フライパンを火にかける。油が広がる音を聞きながら、卵を割った。 「今日、帰り少し遅くなる」 「分かりました」 「夕飯、先に食べててもいいから」 「はい」 航生は時計を見て、椅子から立ち上がる。愛音は玄関まで見送り、扉が閉まる音を聞いた。 そのあと、食器を下げる。洗い終えた皿を水切り籠へ並べ、濡れた手をタオルで拭く。朝の光はいつもと同じように床へ差し込んでいた。 依子からの連絡が届いたのは、その日の午前だった。短い文面を読み終えたあとも、スマートフォンは何も知らせない。愛音は画面を伏せ、洗濯機の終了音が鳴るまで、そのまま家事を続けた。 ある日の昼前、スマートフォンが短く震えた。画面には依子の名前が出ている。愛音は指先で通知を開いた。 「提出しました」 それだけだった。 愛音は画面を見たまま数秒置き、返信欄を開く。 「ありがとうございます」 送信すると、画面はすぐに元の表示へ戻った。テーブルの上には朝に飲んだ湯飲みが残っている。愛音はスマートフォンを伏せ、その横にあった湯飲みを流しへ運んだ。 昼食を終えたあと、愛音は洗った食器を拭いた。皿を棚へ戻し、箸を引き出しへしまう。いつもなら午後の予定を確認する時間だった。カレンダーを開くと、以前書き込んだ予定の文字がいくつか並んでいる。愛音はそこへ新しい予定を書き足すことなく、画面を閉じた。 数日後、また依子から連絡が入った。 今度の文面も短かった。 「受理されました」 愛音はその文字を一度読んだ。もう一度読み直す必要はなかった。画面を閉
آخر تحديث : 2026-10-05 اقرأ المزيد