先ほどはセスにバレてしまったので、今度はバレないように本を読むふりをしながら、こっそりとまたセスを観察する。暖色の照明の光を受け、輝く色素の薄い白い髪がさらりと下へと落ちる。そこから覗く空を溶かしたような水色の瞳は、真剣な眼差しで書類を睨んでいた。どうすればセスは以前のように私を見てくれるのだろう。リタ代役時代には見たことのない、私に向けられるあの仄暗い瞳。あれこそが、今のセスの不安定さを物語るものだった。ここで生活していれば死ぬことはないのかもしれない。しかし、全てを管理され、世話されて生きていることが、果たして本当に生きていると言えるのだろうか。ここでの私はただセスに可愛がられている人形だ。一生人形としてここで過ごすなんてそんなの嫌だ。私は帝国外へと逃げ、自由気ままに生きるのだ。その為には、やはりセスを精神的に安定させ、安心させる必要がある。セスを刺激しない。セスの要求はなるべく飲む。そうして少しずつだが、セスを落ち着かせ、信頼を得て、最終的に味方につけるのだ。未だに仕事を続けるセスの姿に、私は密かにそう決意を固めた。その後、そんな私の視線にまたセスは気がついた。不思議そうに「どうされましたか?」といきなり聞かれた時は、心臓が止まるかと思った。何故、こちらを一切見ていないのに視線に気づくんだ。恐ろしい。*****セスの精神を安定させ、ついでに味方にし、帝国外へと安全に逃げる。その為に私はなるべくセスの要求を受け入れながらも、かつてセスと共に過ごしたリタ代役時代と変わらぬ態度で平和な日常を過ごせるように心がけた。そしてここでの生活ももう一ヶ月が過ぎようとしていた頃。「ただいま戻りました」窓の一切ない異常なこの部屋の唯一の出入り口である扉から、今晩も少しだけ疲れた様子でセスが現れた。私はそんなセスをいつものように「おかえり、セス」と笑顔で迎え入れる。もちろん、定位置であるベッドの上で。「今、夕食を作りますからね。今日は市場で新鮮な野菜を手に入れたんです。あ、あと苺も見つけたので買いましたよ」「本当?新鮮な野菜ならサラダにして食べたいな。苺はそのままでも最高だけど生クリームでも食べたいかも」「ふふ、かしこまりました。ではそのようにいたしましょう」柔らかな笑みを浮かべるセス。その瞳には、確かな光がある。こ
Last Updated : 2026-09-22 Read more