「はい、分かりました。頑張ります」源一郎は相好を崩し、奈緒の手を軽く叩いた。「ああ、お前は我が貞末家の血を引く子だ。信じているよ。何か困ったことがあれば、遠慮なく俺に相談しなさい」その言葉は、奈緒にとって確かな後ろ盾を得たも同然だった。源一郎の後ろ盾さえあれば、何事も進めやすくなる。「ふん」和やかな空気に満ちた病室に、場違いな冷笑が唐突に響いた。絢斗が席を立つ。百九十センチの長身に、がっしりとした肩幅、引き締まった腰。彼が立ち上がっただけで、部屋の空気が一瞬にして威圧感に包まれた。「ここはどうも息苦しい。外の空気を吸ってくる」源一郎に向けた言葉だった。奈緒には一瞥もくれず、そのまま背を向けて出口へと歩き出す。絢斗が本当に出て行こうとするのを見て、奈緒は慌てて後を追った。「絢斗お兄様、どちらへ?私もご一緒しますわ」絢斗はドアの前でふと足を止め、奈緒を見下ろすように睨みつけた。「いいだろう。苛々していたところだ。八つ当たりの相手にはちょうどいい」射殺さんばかりの視線と物騒な言葉に、奈緒はぎょっとして思わず一歩後ずさる。「絢斗、奈緒もお前を気遣って言っているんだ」源一郎が奈緒をかばうように口を挟んだ。絢斗はわずかに眉をひそめ、細めた鋭い目に苛立ちを滲ませる。「こいつはあなたの見舞いに来たんじゃないのか。なんで俺についてくる?二人で仲良く親子ごっこでもしていろ。俺は行く」言い放つなり、絢斗はドアを開けて出て行った。最後まで奈緒には一瞥さえくれなかった。取り残された奈緒は顔を青ざめさせ、両手を胸元で握りしめ、いかにも狼狽した様子で立ち尽くす。だが、そのか弱げな外見とは裏腹に、彼女の内心ではどす黒い感情が渦巻いていた。ふざけないで!あんたなんて、所詮は伯父様の養子に過ぎないくせに!養子なんて、ただ貞末家に拾われただけのよそ者でしょ。あんたの体に貞末の血なんて一滴も流れていない!貞末の血が流れているのは、この私なのよ。将来この家を継ぐのは、この私だけなんだから。こんなに下手に出て機嫌を取ってやっているのに、なんでいつもそんなに偉そうにするのよ!奈緒がその場から動けず、小刻みに震えているのを見て、源一郎は彼女が絢斗の言葉に怯えたのだと思い込み、優しくなだめ始めた。「怖がらなくていい。絢斗は機嫌が悪か
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