北海道。 そう決めてから、綾香はさらに候補を絞っていた。 札幌は便利だが、静養という雰囲気ではない。 かといって、山奥の温泉地では遥臣に言われた条件から外れてしまう。「病院が近くて、温泉もあって……」 いくつものホテルを見比べる。 長期滞在となれば、部屋の広さも重要だ。 一か月以上、普通の客室だけで過ごすのは窮屈だろう。 仕事をするならデスクも必要になる。 できれば食事も毎日同じではない方がいい。「ここ……いいかも」 目に留まったのは、温泉設備のあるリゾートホテルだった。 都市部からは離れているが、車を使えば大きな病院にも行ける。 長期滞在向けの広い部屋もある。 館内だけでなく、周辺にも食事ができる場所があった。(東京から来るなら飛行機に乗って、そのあとも移動が必要) 理央が気軽に来られる距離ではない。 もちろん、来ようと思えば来られる。 けれど、今の屋敷のようにいつでも父のそばへ近づける環境とはまるで違う。「ここにしようかな……」 まだ予約はしない。 まず父に見せる必要がある。◇◆◇「お父様」 夕食を終えた父を、綾香はリビングで捕まえた。「今度は何だ?」「静養先の候補を見つけたの」「まだ諦めてなかったのか」「諦めるわけないでしょう」 綾香は父の隣へ座り、タブレットを差し出した。「ここ」「北海道?」「うん」 父が画面を見る。「ずいぶん遠くまで探したな」「せっかく環境を変えるなら、このくらい離れた方が気分転換になるでしょう?」「北海道まで行く必要があるか?」「今の時期なら涼しいし」
Last Updated : 2026-08-25 Read more