『会社の人間かもしれない』 綾香は、その一文を何度も読み返した。 会社。 母がそう考えた根拠までは書かれていない。 けれど、理央が御影家の仕事や資産について知りたがっていた時期と重なっている。(お父様の会社の人と会ってた?) もしそうなら、話は変わってくる。 理央一人で御影家について調べていたわけではない。 内部から情報を得ていた可能性がある。 前世で御影家が追い詰められていった時のことを思い出す。 理央が裏で動いていたことは分かっている。 けれど、すべてを一人でやったとは限らない。 むしろ――。(協力してた人がいた方が自然だわ) 綾香は立ち上がった。「ありがとうございました」「お役に立てたのでしたら」 男性スタッフへ礼を言い、ホテルを出る。 次に調べるべきことは決まった。 三年前。 父の会社にいた人間。 その中から、理央と接点を持っていた人物を探す。 ◇◆◇ 屋敷へ戻ると、綾香は書斎へ向かった。 父はいない。 だからこそ、今なら落ち着いて調べられる。 ただし、会社の人事資料を勝手に見るわけにはいかない。(どうしよう……) 三年前に在籍していた年上の男性。 それだけでは範囲が広すぎる。 役員だけでも複数いる。 管理職まで広げれば、何人になるか分からない。 しかもホテルのスタッフの記憶が正しいとも限らない。「お嬢様?」 声に振り返る。 橘だった。「どうかなさいましたか?」「昔の会社案内って、どこかにない?」「会社案内ですか?」「うん。三年くらい前の」 橘が不思議そうな顔をする。
Last Updated : 2026-08-30 Read more