『余計なことを話さない方がいい、と』 綾香はそのメッセージを何度も読み返した。 長谷川と会ったことを、誰かが知っている。 それだけではない。 長谷川が自分に何かを話したと考えている。『相手は誰だと思いますか?』 返信する。 しばらくして。『分かりません』『理央では?』『声が違いました』 綾香は眉を寄せた。『久世は?』『久世さんの声をはっきり覚えていません。三年前に数回会っただけなので』 理央ではない。 だからといって、久世とも限らない。『何と言われたか、できるだけ正確に教えてください』 長谷川から返事が来る。『昔のことを余計に話さない方がいい。今の生活を大切にした方がいい、と』 脅迫と呼ぶには曖昧だ。 けれど、意味は十分に伝わる。 黙っていろ。 そういうことだ。『警察には?』『これだけでは何とも言えないでしょう』 確かにそうかもしれない。 だが。『着信履歴は消さないでください』『分かりました』 綾香はスマートフォンを置いた。(どこから漏れたの?) 東亜アセットへ電話したこと。 長谷川とカフェで会ったこと。 どちらかを誰かが知った。 もし東亜アセット側からなら、久世よりも先に長谷川の周辺を疑うべきかもしれない。 けれど今の時点では何も分からない。 分からないまま動けば、またこちらの行動を知られる。 綾香は立ち上がった。「……病院に行こう」 母の記録は遥臣に預けてある。 今まで撮った写真もあるが、原本をもう一度確認したかった。 久世という名前がなくても。 今なら気づけることがあ
Last Updated : 2026-09-04 Read more