All Chapters of 婚約者に売られ、親友に顔を奪われた私は、二度目の人生で全てを取り戻す: Chapter 151 - Chapter 160

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帰りたくない

 遅めの昼食を終えたあとも、二人はすぐには帰らなかった。 水族館の近くにはいくつか店が並んでいて、綾香がショーウインドウを覗けば、遥臣も特に急かすことなく足を止める。「遥臣、退屈じゃない?」「別に」「本当に?」「退屈なら先に帰る」「私を置いて?」「帰り道くらい分かるだろ」「ひどい」 綾香が睨むと、遥臣はまたわずかに笑った。「また笑ったでしょう?」「笑ってない」「今日はよく笑うわね」「お前が変なこと言うからだろ」「私のせいなの?」「ああ」 そんな他愛のない会話さえ楽しくて、綾香は店から店へとゆっくり歩いた。 雑貨店の前を通った時、小さな水槽を模した置物が目に留まった。青いガラスの中に、小さなクラゲが浮かんでいる。「可愛い」 立ち止まって眺めていると、遥臣も隣から覗き込んだ。「欲しいのか」「見るだけよ」「そうか」 綾香はしばらく眺めてから、その場を離れた。 何かを買いに来たわけではない。ただ遥臣と歩いていたかった。 それからカフェに入り、飲み物を頼んだ。 窓の外を眺めながら、綾香は今日のことを思い返す。 水族館へ行って、昼食を食べて、店を見て回った。 ただそれだけ。 事件も起きていない。 誰かに尾行されたわけでもない。 理央から連絡が来たわけでもない。 それなのに、これまで遥臣と過ごしたどの日よりも時間が早く過ぎた気がした。「何時?」 遥臣に聞かれ、綾香はスマートフォンを見る。「もう五時ね」「そろそろ帰るか」「……そうね」 答えながら、自分でも分かるほど声が沈んだ。 遥臣がこちらを見る。「何だ」
last updateLast Updated : 2026-09-11
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好きだと気づいた朝

 翌朝、目を覚ました綾香は、しばらく天井を見つめていた。 昨日の帰り際、自分の中ではっきりと認めてしまったことを思い出す。 ――私は、遥臣が好き。 眠って起きれば少しは冷静になるかと思ったのに、気持ちは何も変わっていなかった。 むしろ、一晩経ったせいで余計にはっきりしている。「……どうしよう」 思わず呟いてから、綾香は布団を頭までかぶった。 好きだと気づいたからといって、何かが変わったわけではない。遥臣に告白されたわけでもなければ、自分から告白したわけでもない。 ただ、自分の気持ちを自覚しただけだ。 それなのに昨日まで普通にやり取りしていた相手を、急に意識してしまう。 枕元のスマートフォンを手に取る。 遥臣からの新しいメッセージはない。 少しだけ残念に思った直後、そんな自分が恥ずかしくなった。(昨日あれだけ一緒にいたのに、朝から何を期待してるのよ) スマートフォンを伏せ、起き上がる。 いつも通りにすればいい。 そう自分に言い聞かせたところで、画面が震えた。『起きたか』 綾香は動きを止めた。 何度も見たような短いメッセージなのに、昨日までとはまるで違って見える。『起きてるわ』 返信してから、これでは素っ気なかっただろうかと思う。 もう一言送ろうか。けれど何を書けばいいのか分からない。 迷っているうちに、遥臣から返信が来た。『昨日歩いたから疲れてないか』『大丈夫よ』 そこまで打って、綾香は少し考えた。『遥臣は?』『平気だ』『今日は仕事?』『ああ』『そう。頑張ってね』 送信した瞬間、綾香は顔を覆った。(何なのよ、これ) ただ仕事へ行く相手に「頑張って」と送っただけだ。 何もおかしくない。
last updateLast Updated : 2026-09-11
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知られたくない相手

 美月と別れたあと、綾香はまっすぐ御影家へ戻った。 車の中でも、先ほどの会話が頭に残っていた。『じゃあ、九条先生とか?』 美月が遥臣の名前を出した瞬間、胸が跳ねた。 けれど、それは恋心を言い当てられそうになったからだけではない。 どうして美月が、遥臣の名前を出したのか。 最近よく会っているみたいだから、と美月は言っていた。 確かに二人で出かけることも増えた。だが、美月の前で遥臣の話をした覚えはほとんどない。(……誰かから聞いたのかしら) そう考えたところで、綾香は首を振った。 今の段階で疑っても仕方がない。 自分と遥臣が一緒にいるところを見た人がいてもおかしくないし、共通の知人から耳に入った可能性もある。 ただ、美月が遥臣に興味を持ったのだとしたら、それは嫌だった。 前世の記憶があるからではない。 それだけではなく、もっと単純な感情だった。(……嫌なのね、私) 美月が遥臣について尋ねることも。 遥臣を知ろうとすることも。 自分の知らないところで、二人が親しくなることも。 想像しただけで胸の奥がざわつく。 これが嫉妬なのだとしたら、ずいぶん分かりやすい。 綾香は小さくため息をついた。 好きだと気づいた翌日から、こんなことで悩むことになるとは思わなかった。◇◆◇ 御影家へ戻ると、玄関には橘がいた。「お帰りなさいませ、お嬢様」「ただいま」「本日は美月様とお会いになっていたのでございますか?」 綾香は足を止めた。「どうして知ってるの?」「美月様がお迎えの車をお使いにならずお帰りになるとのことで、先ほど先方からご連絡がございました」「ああ、そういうこと」 特別な意味はなかったらしい。「お夕食はいか
last updateLast Updated : 2026-09-11
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次の予定

 翌朝、綾香はいつもより早く目を覚ました。 昨夜、理央から聞いたことが頭に残っている。 美月は、自分と会ったその日のうちに理央へ連絡していた。 何をどこまで話したのかは分からない。 ただ、遥臣の名前を出したことだけは確かだった。 前世でも、美月と理央は自分の知らないところで繋がっていた。 あの頃の綾香は、それに気づかなかった。 二人とも信じていたからだ。 けれど今は違う。 美月には遥臣のことを話さない。 理央にも、自分が遥臣をどう思っているのか知られないようにする。 それだけ決めると、綾香はベッドから起き上がった。 今すぐ二人の連絡を止める必要はない。 むしろ、自分が何かに気づいたと悟られる方が困る。 これまで通りに接しながら、自分の大切な情報だけを渡さなければいい。 朝食を終えて父へ電話をかけ、体調に問題がないことを確認する。 父は今日も元気そうだった。『こっちは過ごしやすいぞ』「それならよかったわ」『もう少しいてもいいかもしれないな』「そうして。せっかく静養に行ったんだから、ゆっくりしてきて」『会社の方も気になるんだがな』「今すぐ戻らなくても大丈夫でしょう?」『まあな』 父の声は以前より明るい。 少なくとも今は、北海道へ行ってもらったことは正解だった。 綾香は通話を終えると、スマートフォンを机へ置いた。 その直後、画面が震える。 遥臣だった。『来週の日曜、空いてるか』 綾香は思わず笑った。 昨夜、「次はどこにする」と話したばかりなのに、もう日程まで決めようとしている。『空いてると思うわ』『思う?』『予定を確認するから待って』 手帳を開く。 特に予定は入っていない。『空いてるわよ』『じゃあ空けとけ』『どこに行くの?』『考えてる』『まだ決まってないのね』『候補はある』 綾香は少し迷ってから、『楽しみにしてる』 と送った。 既読がつく。 しばらく返信がない。(……何か変だった?) 不安になりかけたところで、新しいメッセージが届いた。『俺も』 綾香は画面を見つめた。 たった二文字なのに、胸が騒がしい。「……ずるいわ」 本人にはそんなつもりなどないのだろう。 だから余計に困る。◇◆◇ 午後、綾香は自室で母の残した資料を整理していた。 今日は新しいことを調べ
last updateLast Updated : 2026-09-12
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悪くない秘密

 日曜日までの数日は、驚くほど何事もなく過ぎた。 父は北海道で元気にしている。 理央からは時折メッセージが来たが、内容は他愛のないものばかりだった。美月からも一度連絡があったものの、遥臣について尋ねられることはなかった。 綾香も、久世や相沢について新しく調べることはしなかった。 何も起きていない時に、わざわざ自分から危険へ近づく必要はない。 ただ、母の残した資料を整理していた時、一つだけ気になるものを見つけた。 古い手帳の隅に、小さく書かれた数字だった。 日付のようにも、金額のようにも見える。 その横には、アルファベットが二文字だけ記されていた。 何を意味するのかは分からない。 綾香は写真だけ撮り、それ以上は調べなかった。 今すぐ意味を見つけようとすれば、また際限なく過去を追い始めてしまう。 手帳を元の場所へ戻し、机の引き出しを閉じる。 その時、スマートフォンが震えた。『明日十時』 遥臣からだった。 綾香は時計を見る。 日曜日の前日の夜。『分かってるわよ』『朝飯』『食べるってば』『歩ける靴』『それも聞いたわ』『ならいい』 綾香は画面を見ながら笑った。『結局、どこに行くの?』『明日分かる』『まだ秘密なの?』『ああ』『変なところだったら怒るわよ』『その時は帰れ』『置いていくつもり?』『送って帰る』『そういう意味じゃないのよ』 返事は来なかった。 代わりに少しして、『寝ろ』 とだけ届いた。「もう……」 綾香はスマートフォンをベッドへ置いた。 明日の服は、すでに決めてある。 歩ける靴も用意した。
last updateLast Updated : 2026-09-12
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大切な写真

 植物園へ入ると、綾香はすぐに足を止めた。 園路の両側には季節の花が咲き、少し先には大きな温室が見えている。都心からそれほど離れていないはずなのに、周囲は驚くほど静かだった。「思ったより広いのね」「ああ」「全部回るの?」「好きなところだけでいいだろ」「そうね」 入口でもらった案内図を広げる。 いくつかの庭園と温室、展望スペースまであるらしい。「どこから行く?」「お前が決めろ」「連れてきた人が決めてくれないの?」「ここまで決めた」「そこで仕事を終えたつもり?」「ああ」 綾香は笑いながら案内図へ視線を戻した。「じゃあ、温室から行きたい」「分かった」 二人で歩き始める。 遥臣は花について詳しいわけではないらしい。綾香が立ち止まれば一緒に止まり、説明を読んでいる間も急かさず待っている。「遥臣、退屈じゃない?」「何で」「だって、あんまり花に興味なさそうだから」「詳しくないだけだ」「好きなの?」「普通」「また普通」 水族館でも同じことを言っていた。「遥臣の好きなものって何?」 何気なく尋ねると、遥臣は少し考えた。「寝ること」「もっとあるでしょう?」「休み」「忙しい人の答えじゃない」「そうか?」「そうよ。食べ物とか、趣味とか」「飯なら肉」「雑ね」「何が」「もっと具体的にないの? ステーキとか焼肉とか」「どっちも食う」「そういうところ、本当にこだわりないのね」 呆れながらも、綾香は少し楽しかった。 考えてみれば、遥臣のことを自分はあまり知らない。 医師であること。 ぶっ
last updateLast Updated : 2026-09-12
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次も二人で

 温室を出る頃には、もう昼を過ぎていた。「お腹空いたわね」「だから朝飯食えって言っただろ」「食べたわよ。それでもお昼になればお腹は空くでしょう?」「なら正常だな」「診察しないで」 綾香が呆れると、遥臣は小さく笑った。 園内のレストランへ向かうと、窓際の席へ案内された。大きな窓の向こうには庭園が広がり、食事をしながら花を眺められる。「ここまで調べてたの?」「一応」「昨日?」「もっと前」 綾香はメニューから顔を上げた。「もっと前って、いつ?」「水族館の次の日くらい」「そんなに早く?」「次も行くって言っただろ」 遥臣は何でもないことのようにメニューを見ている。 けれど綾香にとっては、何でもなくなかった。 水族館から帰った翌日には、もう次に自分と行く場所を探していたということだ。「……遥臣」「何だ」「もしかして、こういうの好き?」「こういうの?」「誰かと出かける場所を考えるの」「別に」「じゃあ、どうしてそんなに早く探したの?」 遥臣の視線がメニューから上がった。 数秒、綾香を見る。「お前が楽しそうだったから」 それだけ言って、また視線を戻した。 綾香は何も言えなくなった。 心臓がうるさい。「注文決まったか」「……まだ」「さっきから同じページ見てるぞ」「誰のせいだと思ってるのよ」「知らん」 本当に分かっていないのか。 それとも分かっていて言っているのか。 最近の遥臣は、時々判断に困る。◇◆◇ 食事を終えたあと、二人は屋外の庭園へ向かった。 午前中より人が増えていたが、それでもゆっくり歩ける程度だった。 綾香は花を眺めながら園路を進む。 少し先に色とりどりの花が広がっているのを見つけ、そちらへ向かおうとした時だった。「綾香」「何?」「そっちじゃない」 言われた瞬間、腕を掴まれた。 足元を見る。 綾香が進もうとした先には、立入禁止を示す低い柵があった。「あ……」「花しか見てないだろ」「ちゃんと前も見てたわよ」「見てない」「見てたわ」「なら何で入ろうとした」 反論できない。「……ちょっと気づかなかっただけよ」「それを見てないって言うんだ」「もう分かったから」 そこで、綾香は気づいた。 遥臣の手がまだ自分の腕に触れている。 意識した途端、その場所だけが妙に
last updateLast Updated : 2026-09-12
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もう少しだけ

 植物園をひと通り回り終えた頃には、午後三時を過ぎていた。 入口近くまで戻ってきた綾香は、案内図を見ながら少しだけ名残惜しく思った。「もう全部見たか?」「だいたいはね」「じゃあ帰るか」「……もう?」 思わず口から出た。 遥臣が綾香を見る。「もうって、朝からいるだろ」「まだ三時よ」「三時だな」「夕方ですらないわ」「帰りたくないのか」 水族館の日にも同じことを言われた。 あの時は誤魔化そうとしたけれど、今日はもう少し素直になってもいい気がした。「もう少し一緒にいたいの」 遥臣が黙った。 綾香は急に恥ずかしくなる。「……嫌なら帰るけど」「嫌とは言ってない」「じゃあ、どこか寄っていかない?」「どこに」「それは遥臣が考えて」「急だな」「次は遥臣が行きたいところって話をしたばかりでしょう?」「今日からなのか」「今日からよ」 遥臣は少し考えたあと、駐車場へ向かって歩き始めた。「分かった」「どこかあるの?」「ある」「どこ?」「来れば分かる」「また秘密?」「今度は大したところじゃない」 綾香は笑いながら、そのあとを追った。◇◆◇ 車で十分ほど走って到着したのは、小さな喫茶店だった。 植物園のレストランとは違い、昔からそこにあるような落ち着いた店だ。「ここ?」「ああ」「遥臣がよく来るの?」「たまに」 それを聞いて、綾香は少し嬉しくなった。 今日は自分のために選んでくれた場所だけではなく、遥臣が普段利用する場所へ連れてきてくれた。
last updateLast Updated : 2026-09-12
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帰り道の距離

 喫茶店を出る頃には、外はすっかり夕方になっていた。 遥臣の車へ向かいながら、綾香は何度も自分の額を意識してしまう。 ほんの一瞬、熱がないか確かめられただけ。 医師である遥臣にとっては、きっと何でもない行動だったのだろう。 それでも、好きだと自覚してしまった綾香には刺激が強すぎた。「どうした」「何が?」「さっきから静かだな」「遥臣のせいでしょう?」「俺?」 本当に分かっていないらしい。「もういいわ」 助手席へ乗り込み、シートベルトを締める。 遥臣も運転席へ座り、エンジンをかけた。「疲れたか」「少しだけ。でも楽しかった」「そうか」「遥臣は?」「楽しかった」 あっさり答えられ、綾香は隣を見る。「今日は素直ね」「聞かれたから答えただけだ」「いつもそうすればいいのに」「いつも答えてるだろ」「言葉が足りないのよ」「そうか?」「そうよ」 車がゆっくりと駐車場を出る。 窓の外には夕暮れの景色が流れていた。 しばらくして、綾香は今日撮った写真を思い出した。 スマートフォンを取り出し、二人で並んだ写真を開く。「ねえ、遥臣」「何だ」「やっぱりこれ、送っておく?」「写真?」「そう」「好きにしろ」「いらないって言ったじゃない」「送るなとは言ってない」「どっちなのよ」「お前が送りたいなら送ればいいだろ」 綾香は少し考えてから、写真を送信した。 すぐ隣にいる遥臣のスマートフォンが鳴る。「送ったわよ」「ああ」「ちゃんと保存してね」「何で」「せっかく二人
last updateLast Updated : 2026-09-12
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母の好きだった花

 植物園へ行った翌日、綾香は母の遺品を整理していた。 最近は久世や理央との繋がりばかりを探していたせいで、手帳を開いても、つい怪しい名前や数字に目が向いてしまう。 けれど、その日はページの間から一枚の押し花が落ちた。「あ……」 小さな青い花だった。 長い年月が経って色は褪せている。それでも、綾香には見覚えがあった。 幼い頃、庭に咲いていた花だ。 その瞬間、遠い記憶が蘇った。 まだ母が元気だった頃。 庭で遊んでいた綾香は、綺麗に咲いていた花を見つけ、母のところまで走っていった。『お母様、見て!』『まあ、綺麗ね』『お母様にあげる』 小さな手で差し出した花を、母は嬉しそうに受け取ってくれた。『せっかくだから、残しておきましょうか』『残せるの?』『押し花にすればね』 そう言って笑った母の顔を、今でも覚えている。 綾香は押し花をそっと指先でなぞった。「……残してたのね」 自分ですら忘れかけていた思い出を、母はずっと手帳に挟んでいた。 胸の奥が少しだけ痛くなる。 昨日、植物園へ行った時も、たくさんの花を見て嬉しかった。 昔から自分は花が好きなのだと思っていた。 けれど、もしかすると始まりは母だったのかもしれない。 綾香は改めて手帳をめくった。 今度は、久世の名前を探すためではない。 母がどんな人と会い、何をして、どんな毎日を過ごしていたのか。 そんな目で見ると、今まで気にも留めなかったものがいくつも見つかった。 行ってみたい店。 父への買い物。 綾香の学校行事。 そして、知らない人たちの名前。(私、お母様のことを調べていたつもりで……) 母を死に追いやった
last updateLast Updated : 2026-09-13
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