翌朝。 朝食の席には、今日もグレープフルーツが並んでいた。「綾香、食欲がないのか?」 父が心配そうに尋ねる。「そんなことないわ」 綾香は微笑み、パンを口に運ぶ。 父は何の疑いもなく、グレープフルーツを一切れ頬張った。 その様子を見ながら、綾香は胸の奥がざわつくのを感じる。 考えすぎかもしれない。 けれど、見過ごすこともできなかった。◇◇◇ 朝食を終え、自室へ戻ろうとした時だった。「お嬢様」 橘に呼び止められる。「午後から旦那様が病院へ向かわれます」「病院?」「定期検査でございます」 綾香は思わず足を止めた。 定期検査。 ちょうどいい。「そうだったの」「私は会社へ書類を届けなければなりませんので、本日は運転手がお供いたします」 橘は穏やかに微笑んだ。「いつもありがとうございます」「とんでもございません」 一礼すると、橘は仕事へ戻っていく。(今日……) 綾香は静かに考えた。 病院へ行く。 もしかしたら何か分かるかもしれない。◇◇◇ 午後。 父を乗せた車が屋敷を出ていく。 それを見送ると、綾香も自分の車へ乗り込んだ。「少し寄り道をお願い」「かしこまりました」 運転手は何も疑わず車を走らせる。 父の車とは別のルート。 十分ほど遅れて病院へ到着した。 受付の近くで父の姿を探す。 ほどなくして、診察室へ案内される父の後ろ姿が見えた。(間に合った……) 綾香は人目につかない場所から、その様子を見守る。 診察室の扉が閉まる。 数
Huling Na-update : 2026-07-29 Magbasa pa