天音はベッドに横になり、目を閉じて眠ろうとした。すると突然、誰かに布団をめくられ、ひやりとした空気が肌に触れた。目を開けると、瑛司が消炎鎮痛剤を手にして立っていた。天音は眉をひそめた。その薬の匂いが苦手だったからだ。瑛司が言った。「腕を揉んでおけ。そうしないと、明日もっと痛むぞ」天音の腕には、あの高城家の男に強くつかまれた跡が、何か所も紫がかった赤色になって残っていた。「自分でやる」天音が手を伸ばして受け取ろうとすると、瑛司の細長い指が彼女の手首をつかみ、そのまま引き寄せた。手のひらに薬を少し垂らすと、温かな手のひらが天音の細い腕をすっぽり包み込んだ。天音は眉間にしわを寄せた。最初はひんやりとした刺激と痛みがあったが、瑛司がゆっくり揉みほぐしていくうちに、その痛みはずいぶん和らいでいった。瑛司の力加減はちょうどよく、天音は思わず、彼を振り払うことも忘れていた。気づいたときには、もうほとんど揉み終わっていた。「反対側も」瑛司が手を差し出した。長く整った指は薬で濡れていて、妙にきれいに見える。天音は少し意地になって言った。「自分でやる」それでも瑛司は彼女を見つめたまま動かない。「君の力で足りるのか?」天音は気にする様子もなく、何気なく答えた。「薬を塗って揉むくらいなら十分」瑛司は天音の前にしゃがみ込み、視線を落としたまま淡々と言った。「そんなに俺を拒まなくてもいいだろ」「拒んでるんじゃない。あなたとはもう何の関係も持ちたくないだけ。それに、あなたに触れてほしくない。もうあなたに何かしてもらう必要もないから。できることなら、今すぐ離婚したい」天音は目を伏せ、瑛司の長いまつ毛を見つめた。まつ毛が、普段の深い眼差しを隠している。すっと通った鼻筋に、今は固く結ばれた唇。その輪郭がいつも以上にはっきりして見えた。薄い唇が動く。「俺がいつ君を粗末にした?芸術センターの仕事だって辞める必要なんかなかっただろ。あそこではみんなが君を大事にしてくれていたのに、それを捨ててわざわざ他人のダンスカンパニーに入って、外回りまでして。その結果、他の男に絡まれて、危うく逃げられなくなるところだった」天音は一言一言、はっきりと言った。「あなたがいなくても、私一人でちゃんとやり返せた」今となっては、あのとき自分一人でやり返
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