「榊原。お前が以前から、理聖を疎ましく思っていることは知っていた。……だが、俺の知らないところでここまで手を出すとはな」 廃倉庫に響き渡ったのは、一切の感情を含まない平坦な声だった。 逆光を背に歩み出てきた大翔の手には、鈍色の光を放つ拳銃が握られていた。 大翔は床に横たわっている榊原と、昏倒している九条を冷酷に見下ろすと、躊躇う素振りすら見せずに引き金を引いた。 乾いた銃声が二発、連続して轟く。 榊原と九条の額の中心が正確に撃ち抜かれ、赤黒い血だまりが冷たいコンクリートの床へと広がっていく。 そのあまりにも無慈悲な処刑劇を目の当たりにし、残っていた構成員たちは悲鳴すら上げられず、足を引きずり這うようにして倉庫の外へと逃げ出していった。 血と硝煙のむせ返るような匂いが立ち込める中、理聖、和花、雄之助、そして梁の上の蘭華の四人は、大翔の放つ底知れない狂気に呑まれ、一歩も動くことができなかった。「芥、理聖を守ってくれてありがとう」 大翔は銃を下ろし、まるで部下の労をねぎらうような穏やかな声で雄之助に微笑みかけた。そして、倉庫の暗い高所を見上げて目を細める。「……そっちにいるのは、蘭華か? また随分と美しくなったな」「……どうも。錦戸、久しぶりだね」 蘭華でさえ、声に微かな震えを混じらせていた。深凪組の絶対的な頂点に立つ男の威圧感は、それほどまでに圧倒的だったのだ。 大翔はゆっくりとした足取りで、理聖の正面へと歩み寄った。「理聖、記憶は戻ったかい?」「…………」 理聖は息を呑み、ゆっくりと首を横に振った。 その様子を見た大翔は、少しだけ残念そうに眉を下げ、やがて理聖の背後に隠れるように立っている和花の姿を捉えた。「……おや。そちらのお嬢さんは?」「大翔、さん……」 理聖は和花をかばうように一歩前へ出ると、内ポケットから折り畳まれた一枚の紙を取り出した。高井が発行した、正式な診断書だ。「僕は、記憶を失いました。脳の損傷が激しく、これ以上の回復は見込めないと……正式な診断が下されています」 差し出された診断書を、大翔は無言で受け取った。 張り詰めた沈黙の中、上方にいる蘭華が理聖の言葉を裏付けるように声を張り上げる。「アタシも確認したわよ。こいつの頭の中、マジで空っぽだった。アタシが昔教えた殺しの手口も、一緒に消した標的の顔も、裏
Last Updated : 2026-08-24 Read more