บททั้งหมดของ あなたのいない冬を越えて: บทที่ 1 - บทที่ 7

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第1話

水を飲もうとリビングへ出ると、ちょうど書斎から出てきた理人と鉢合わせた。スマホを握りしめた彼は珍しく焦りを隠せない様子で、私と目が合うと一瞬だけ足を止めた。「少し出てくる。依頼人に会わないといけない」壁の時計は、すでに午後9時を回っていた。「香澄さん?」私が静かに尋ねると、理人は玄関に置いていた車の鍵を手に取った。「ああ。精神的にかなり参っている。今夜は1人にしないほうがいい」私が何か言うより早く、理人は玄関を飛び出していき、重いドアが閉まる音だけが静まり返った部屋に残った。誰もいなくなった玄関を見つめながら、香澄のことになると普段の冷静さを簡単に失う理人は、昔から何も変わっていなかったのだと思った。私と交際を始めてからも、理人は香澄と連絡を取り続けていた。彼女から電話がかかってくれば、どれだけ忙しくても仕事を中断して駆けつける。それを指摘するたびに、「別れたあとも友人ではいられる。交友関係に口を出すな」と言われてきた。香澄が結婚してからは次第に彼女の話をしなくなったため、もう気持ちは残っていないのだと信じていたが、結局、何も変わっていなかった。午前0時を過ぎても理人は帰ってこなかったため、私は電話をかけた。「もう遅いよ」「香澄がまだ落ち着かない。今は離れられない」困ったように答える理人の向こうから、香澄のすすり泣く声が聞こえてきた。「理人、私、長い時間を取らせすぎたよね……ごめんなさい。こんなふうに心配してもらったの、久しぶりで……」「気にするな。君は俺の依頼人なんだから」あくまで仕事なのだと言い聞かせるような返事だったが、その口調は妙に早く、香澄に誤解されたくないと焦っているようにも聞こえた。私はテーブルに置いていた予約票を手に取った。「午前10時から、結婚写真の撮影だから。忘れないでね」受話口の向こうで物音がした。理人は席を立って香澄から離れたらしく、少し間を置いてから声を潜めた。「香澄がつらい思いをしているときに、わざわざそんな話をする必要があるのか?」はっきりと苛立ちをにじませたまま、理人は言葉を続けた。「時間には間に合わせる。琴葉は先に寝ていろ。待たなくていい」通話が切れる直前、香澄へ優しく声をかける理人の声が聞こえた。「何でもない。気にしなくていいことだ
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第2話

家へ戻ると、理人に事務所に届けてほしいという資料を探すため、私はそのまま書斎へ向かった。机の上に開かれたノートを横目に、指定された引き出しを開ける。香澄の離婚事情や財産関係が細かく書き込まれたノート、その隣には、淡いピンクのリボン柄の小箱が置かれていた。理人が選ぶとは思えないデザインに気を引かれ、ふたを開けた瞬間、息が止まった。中には、理人と香澄が一緒に写った写真が何十枚も、きれいに重ねてしまわれていた。理人と交際して3年になるが、私たちが一緒に写真を撮ったことはほとんどない。理人は写真が嫌いだと言い、私が何度頼んでも「子どもみたいなことを言うな」と冷たく断ってきた。けれど、本当は写真が嫌いだったのではなく、私と一緒に写りたくなかっただけなのだ。写真の1枚を手に取ると、サテンの白いワンピースを着た香澄が、理人と手をつないで幸せそうに笑っていた。裏返した写真には、理人の字で短い言葉が残されていた。【これで、君を妻にしたかった俺の願いも、叶ったことにしよう】胸の奥を鋭くえぐられるような痛みとともに、理人がサテンのドレスにこだわった理由を悟った。香澄がかつて、同じような服を着ていたからだったのだ。……法律事務所へ着き、エレベーターを待っていると、近くにいた受付の女性たちの話し声が聞こえてきた。「神崎先生、今朝、女性と一緒に来てたよね。もしかして、恋人かな?」「私もそう思う。さっき資料を間違えて渡しちゃったのに、怒るどころか『次から気をつけて』って笑ってくれたの。神崎先生があんなに優しい顔をするなんて、初めて見た」「すごくお似合いだったよね」理人は昨夜から今まで、ずっと香澄と一緒にいたらしい。胸の奥に広がる鈍い痛みを押し込めるように目を閉じ、私は到着したエレベーターへ乗り込んだ。執務室のドアを開けると、楽しそうに話していた2人が同時に口を閉ざした。私を見た途端、理人の顔から笑みが消え、差し出した書類を無言で受け取る。「助かった。もう用がないなら、先に帰っていい」私がその場を動かずにいると、理人は面倒そうに眉を寄せた。「まだ何かあるのか?」いつもそうだった。理人は、私に対してだけ驚くほど気が短い。「昨日の夜から、ずっと香澄さんと一緒だったの?」自分でも驚くほど小さな声で尋ねると、理人の眉間に深
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第3話

玄関のドアが開いたとき、私はリビングで荷物をまとめていた。理人は後ろにいた香澄を家へ招き入れると、靴箱から新品のスリッパを取り出した。「香澄、これを使え」それは私が自分のために買い、まだ袋さえ開けていなかったものだった。淡い色と小さなリボンが気に入って理人に見せたときは「子どもっぽい」と顔をしかめていたのに、今は何のためらいもなく香澄へ差し出している。続いて理人は、私の前に菓子箱を置いた。「香澄は家を出てきたばかりで、今は行く場所がない。しばらくここに泊める」箱の中には、私が昔から好きだったシュークリームが並んでいたが、今はその甘い匂いさえひどく鼻につき、吐き気を覚えた。「理人が決めたなら、それでいいよ」私が抵抗しなかったことが意外だったのか、理人は目を瞬かせたあと、テーブルに置かれたブライダルフォトのパンフレットへ視線を移して笑った。「もうすぐ結婚するんだし、これくらいは聞き分けてもらわないとな。写真は式までに別の日を決めよう」「理人、荷物はどこへ置けばいい?」香澄に声をかけられると、理人の意識はすぐに彼女へ向いた。「こっちだ」2人が廊下の奥へ消えていくのを見送り、私は自嘲するように笑った。理人からの埋め合わせは、安いシュークリームと、いつでも破られる約束だけだった。寝室へ戻ると、荷造りはほとんど終わっていた。最後に身の回りを確認していると、理人が奮発して選んでくれた大粒のダイヤの婚約指輪が見当たらないことに気づいた。寝室からリビングまで隅々を探したものの、どこにもない。物を動かす音を聞きつけた理人が、客室から出てきた。「何をしている?」「婚約指輪がないの」「あれだけ大事なものを、どうしてなくすんだ。最後に置いた場所をよく思い出せ」胸がざわつくのを感じながら、テレビボードの横に置いたはずだと伝えた。理人はすぐに確かめたが、指輪は見つからず、振り返った彼の目には私を疑う色が浮かんでいた。「なくしたなら、そう言えばいい。わざわざ嘘をつく必要はないだろ」「嘘じゃない!」思わず声を荒らげたものの、指輪が見つからない以上、私の言葉を裏づけるものは何もなかった。「探しているのは、これ?」そこへ現れた香澄が左手を持ち上げると、その薬指には私の婚約指輪がはめられていた。「床に落ちていた
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第4話

理人が玄関のドアを開けると、靴箱にあったはずの琴葉のスリッパがなくなっていた。数日も外で頭を冷やしたのだから、さすがに自分の非を認めたのだろうと思い、理人は小さく笑った。「琴葉」家の中へ呼びかけても返事はなく、代わりに廊下の奥から香澄が出てきた。「理人、おかえりなさい」香澄の足元を見た理人は、彼女が琴葉の買ったスリッパを履いていることに気づき、なぜか胸の奥に引っかかるものを感じて眉を寄せた。その視線に気づいた香澄は、気まずそうに足元を見下ろした。「最初に借りたものを水で濡らしてしまったの。それで、靴箱から適当に選んで……」「別のものに替えてくれ」そう告げた理人はスマホを取り出し、琴葉へ電話をかけた。しかし何度かけても、つながらないことを告げる自動音声が流れるだけだった。以前の琴葉なら、こんなふうに連絡を無視することはない。次第に胸騒ぎを覚えた理人は、彼女の勤務先へ電話をかけ、同僚につないでもらった。そこで初めて、琴葉が海外へ赴任したことを知らされた。「海外赴任……?そんな話、俺は何も聞いていない」言葉を失う理人に、電話の向こうからわずかに同情を含んだ声が返ってきた。「海外での開発プロジェクトを担当するため、昨日出発しました。何か行き違いがあるなら、早めに話し合ったほうがいいと思います」通話を終えるなり寝室へ駆け込み、クローゼットを開けると、琴葉の服や身の回りの品は半分以上なくなっていた。身分証明書や通帳を保管していた引き出しからも、彼女のものだけがきれいに消えている。これまで感じたことのない焦りに胸を締めつけられながら、理人は、なぜ琴葉が何も言わずに遠い国へ行ったのかと考えた。勤務先へ電話をしなければ、海外へ赴任したことさえ知らないままだったのだ。そのとき、あの写真の箱を胸に抱えた香澄が書斎から出てきた。目をうっすら赤くしながら、理人を見つめる。「理人、まだこの写真を取っておいてくれたのね」しかし、理人の視線は香澄の薬指に吸い寄せられた。そこには、琴葉の婚約指輪がまだはめられていた。「その指輪は、あの日すぐに外せと言ったはずだ。誰がつけ続けていいと言った?」一気に冷たくなった声にも、香澄は答えず、理人へ駆け寄って抱きついた。「理人、さっきの電話、全部聞こえたわ。琴葉さんは、あなたをそ
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第5話

自分で思っていた以上に、私は新しい環境へ早くなじむことができた。不動産会社と連絡を取って住む部屋を決め、必要な日用品をそろえるうちに、雪の多い異国の街にも、ようやく自分だけの居場所ができていった。渡航から1週間が過ぎる頃には仕事や生活のリズムにも少しずつ慣れ、以前暮らしていた街よりも厳しい冬が、理人との出来事を整理するための時間と距離を与えてくれた。彼のいない日々にも慣れ、すべてが少しずつ正しい方向へ動き始めているように思えた。その日は朝から雪が降り続き、郊外の道路が通行止めになったため、上司から在宅勤務へ切り替えるようメールが届いた。私は温かいココアを入れ、オンライン会議の開始を待った。するとスマホの画面が明るくなり、元の職場の同僚から、理人が会社へ電話をかけ、私が出社しているか尋ねてきたという連絡が入った。ようやく今になって私を思い出したらしい。すでに南半球にいると知ったとき、理人はどんな顔をしたのだろうと思いながら、小さく笑った。その直後、見覚えのない番号から電話がかかってきた。「もしもし、どちら様ですか?」「俺だ」聞こえてきたのは理人の声だったが、私の心は少しも揺れなかった。「何の用?」「どうして海外赴任のことを俺に言わなかった?」問い詰めるような口調にも、静かに言葉を返した。「婚約指輪を香澄さんに渡したあなたに、何を話せばよかったの?」一瞬黙り込んだ理人は、やがて言い訳をするように続けた。「あの日、指輪を勝手に持ち出したのは香澄だった。琴葉は嘘をついていなかった。もう気は済んだだろ。戻ってこい。結婚式はまだ取り消していない。今なら間に合う」まるで裁判官が判決を下すような口ぶりで、私が受けた傷を勝手に過去のものにする身勝手さに、思わず笑いが漏れた。「結婚?本当に私と結婚するつもりだったなら、どうして私の婚約指輪を別の女性の指にはめたの?」理人は答えなかったため、私はそのまま言葉を続けた。「資料を探した日、書斎の引き出しで写真を見つけたよ」「あれは捨てるのを忘れていただけだ!香澄への気持ちはもうない。俺が愛しているのは琴葉だ」以前なら、その言葉を聞いただけでうれしくなっただろう。けれど、わずか1週間ぶりに聞いたその言葉にも心は凪いだ水面のように静かなままで、私はココアを一口
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第6話

「これ、食べてみて」朝倉湊(あさくら みなと)が、運ばれてきたばかりのシーフードリゾットを私の前へそっと寄せた。一口食べると濃厚な魚介のうまみが広がり、思わず親指を立てる。「本当においしい」私の反応を見た湊は、うれしそうに笑った。「この店は、地元でも評判なんだ。俺もよく来る」湊と知り合ったのは、こちらへ来た翌日のことだった。スマホの電池が切れたうえに道に迷い、日が暮れ始めても家へ戻れず途方に暮れていたところ、近くから聞き慣れた母語が聞こえてきたため、それを話していた湊に思い切って声をかけたのだ。話してみると、湊も私と同じ国の出身で、幼い頃に両親とこの街へ移り住み、ここで育ったという。何度か顔を合わせるうちに親しくなり、私がこちらの食事にまだ慣れないとこぼしたところ、とっておきの店へ案内すると言ってくれた。慣れない食事に苦労していた私にとって、湊が勧めてくれた料理は、心からほっとできる味だった。食事を終えると、湊は家まで送ると言い、私たちは食後の散歩を兼ねて、ゆっくりと街を歩いた。空から舞い落ちる細かな雪に思わず手を伸ばした。以前暮らしていた町は比較的温暖で、雪を見る機会はほとんどなかったのだ。すると湊が、私の手のひらへ小さなものを載せた。ニット帽をかぶり、小さなおもちゃの剣を手にした、ふわふわのシロクマのぬいぐるみだった。「店で見かけたとき、琴葉さんに似合うと思った。1人でここへ来て、大変なことがあっても全部自分で乗り越えてきただろ」そう言ってぬいぐるみを指さし、湊は笑った。「琴葉さんは勇敢だよ。こいつみたいに」照れくさくなってうつむくと、手のひらに触れる柔らかな感触から、温かさがじんわりと広がっていった。家の近くまで来た頃、玄関の前に誰かが立っているのが見えた。目が合った途端、その人影は早足で近づいてきて、次の瞬間には強い力で抱きすくめられていた。「琴葉、やっと見つけた」理人がはるか遠く離れたこの街まで来るとは思っておらず、息をのんだ。けれど、すぐに我に返って腕から逃れようと身をよじる。「放して」それでも理人が腕を緩めなかったため、湊が彼を引き離し、私を背後へかばった。背の高い湊の体に視線を遮られ、理人の顔が険しくなる。「琴葉、その男は誰だ?」湊は私を振り返った。「琴葉さん、知
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第7話

あれだけはっきり拒絶すれば、理人も諦めると思っていたが、彼は帰国しなかった。それどころか、私の家の近くに短期滞在用の部屋を借り、勤務先まで調べて、毎日のように会社の前で待つようになった。何度帰るよう伝えても、理人は聞こうとしない。「琴葉、今日は少し遅かったな。残業だったのか?外は寒い。家まで送る」これまで見せたことのない、すがるような態度で近づきながら、理人は道路脇に止めた車を指した。私は何も答えず、彼が見ている前で湊の車へ乗り込んだ。「このところ、何度も迎えに来てもらってごめんね」「気にしなくていい。俺がそうしたくて来ているんだから」湊はそう言って、穏やかに口元を緩めた。この国の厳しい寒さに、理人につきまとわれる日々の疲れまで重なったのかもしれない。翌朝目を覚ますと全身がばらばらになりそうなほど痛み、体温計は39度近くを示していた。朦朧としながら薬を飲み、会社に2日間の休暇を申請したあと、再び眠りに落ちた。スマホの振動で目を覚ましたときには、すでに午後になっていた。画面には十数件の不在着信と、湊からのメッセージがいくつも届いていた。【今日は会社で見かけなかったけど、どうしたの?】【同僚から、体調を崩して休んだと聞いた。大丈夫?】【電話がつながらないから心配してる】今は少し良くなったと音声メッセージを送ると、すぐに返事が届いた。【家で待っていて】それから15分ほどで玄関のベルが鳴った。ドアを開けると、最初に目に入ったのは湊の顔ではなく、両手に提げた大きな袋だった。薄い寝間着姿の私を見るなり、湊は寒いから中へ入るよう慌てて促した。ドアを閉める直前、道路の向こう側に、薬局の袋らしきものを手にした理人が立っているのが見えたが、私は何も言わずに扉を閉じた。湊は片方の袋を開いた。「家に薬があるか分からなかったから、解熱鎮痛薬と経口補水液、のど飴を買ってきた」袋いっぱいに詰め込まれた品を見て、思わず笑ってしまった。「薬局ごと買ってきたみたい。もう1つの袋は?」「卵がゆ。家でつくってきた」少し照れたように笑いながら湊が保温容器のふたを開けると、湯気とともに優しい香りが広がり、その途端、空っぽだったお腹が小さく鳴った。おかゆを食べているとスマホの画面が明るくなり、理人からのメッセ
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