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22話

Author: 東雲桃矢
last update publish date: 2026-08-13 02:11:16

「こんなに買ってくれてたんですね。ヒカリさんのイチオシってどれですか?」

「そうですね、私は……」

 写真を見ながら話をしているうちに敬語が取れ、気づけば距離も近くなっていた。

「こんなに楽しくおしゃべりしたの、いつ以来かしら」

「あはは、僕もだよ。ヒカリさんに会えてよかった」

「こちらにいましたか」

 荻原が神経質そうな顔をして出てくる。壮介は荻原の顔を見ると、しまったという顔をし、指先でこめかみを掻く。

「あ、そうだ……。会議あるの忘れてた。ヒカリさん、またあとで」

「待って、壮介さん」

 ヒカリは咄嗟に壮介の手を掴む。今言わなかったら、チャンスを逃してしまう気がした。

「あの、交際の件だけど、よろしく願いします」

「それって、OKってこと?」

 うなずくと、抱きしめられた。ふわりと爽やかで甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐる。

「嬉しいよ、ヒカリさん。君のこと、何よりも大事にする。今度、一緒に食事しよう」

 壮介はヒカリの頬にキスを落とすと、荻原と一緒に消えてしまった。ヒカリはキスをされた頬に触れ、呆然としていた。

 撮られているとも知らずに……。

 数日後の朝、しつこいくらい鳴る呼
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    「そんな、壮介さんは悪くない。こそこそ撮ったマスコミが悪いの。それに私達、やましいことなんてないし。堂々としてればいいのよ」『そっか、そうだよね。僕にできることがあったら、何でも言って』 壮介の声に明るさが戻り、安堵する。どんな時でも、愛する人には笑顔でいてほしいものだ。「ありがとう。でも私もさっき知ったばかりで、状況把握できてないの。だから、もう少し待ってて」『分かった。余計なことしないで待ってるよ。それじゃ』「えぇ、また」 電話を終わらせて画面を見ると、たくさんのチャットやメッセージ、メールが届いていた。大半がお祝いメールだった。「まぁ、変なスキャンダルじゃないだけマシか……」 送られてきたメッセージのほとんどがお祝いということは、不倫に仕立て上げられたりしているわけではないようだ。自分の名前を検索バーに入力すると「四葉ヒカリ 熱愛」と予測された。その予測をタップして検索すると、ニュースサイトが並ぶ。 1番上のニュースサイトををタップすると、壮介に頬にキスをされている写真が視界に飛び込む。見出しは「薄幸のヒロイン、ついに幸せに!?」という、失礼極まりないものだった。 記事の内容は、某パーティの中庭で、ヒカリがflocon de neigeの社長と密会しているというもの。ふたりの会話内容や、馴れ初めについては書いていない。「これなら、なんとか……」 壮介との交際がバレてしまったことは想定外だったが、幸い悪い書かれ方はされていない。だったら、壮介に相談してから、真実を公表すればいい。やましいことなど何もないのだから。 他にもいくつかニュースサイトやメッセージなどを確認しても、同じような言葉が微妙なニュアンスの違いで書かれているだけだった。 ヒカリは事務所に壮介との交際は事実であること、あの写真が撮られた日から交際スタートしたこと。そして、これから壮介と相談してからSNSで正式に発表しようと思っていることを報告した。 事務所からの返事は「スキャンダルではないし、大人だから任せる。一応公表前に文書を確認させてほしい」といったものでだった。 ヒカリは壮介にメールをし、状況を簡潔に伝えた。壮介は『ヒカリさんが公表してから、僕個人のアカウントで公表するよ。僕は荻原に文書のチェックをしてもらおうかな』と返信が来た。「腹が減っては戦はできぬし、

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    「こんなに買ってくれてたんですね。ヒカリさんのイチオシってどれですか?」「そうですね、私は……」 写真を見ながら話をしているうちに敬語が取れ、気づけば距離も近くなっていた。「こんなに楽しくおしゃべりしたの、いつ以来かしら」「あはは、僕もだよ。ヒカリさんに会えてよかった」「こちらにいましたか」 荻原が神経質そうな顔をして出てくる。壮介は荻原の顔を見ると、しまったという顔をし、指先でこめかみを掻く。「あ、そうだ……。会議あるの忘れてた。ヒカリさん、またあとで」「待って、壮介さん」 ヒカリは咄嗟に壮介の手を掴む。今言わなかったら、チャンスを逃してしまう気がした。「あの、交際の件だけど、よろしく願いします」「それって、OKってこと?」 うなずくと、抱きしめられた。ふわりと爽やかで甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐる。「嬉しいよ、ヒカリさん。君のこと、何よりも大事にする。今度、一緒に食事しよう」 壮介はヒカリの頬にキスを落とすと、荻原と一緒に消えてしまった。ヒカリはキスをされた頬に触れ、呆然としていた。 撮られているとも知らずに……。 数日後の朝、しつこいくらい鳴る呼び出し音で起こされる。「もう、なんなの……。今日はオフなのに……」 スマホを見ると、金田からの着信だった。右上の時間を見ると、まだ早朝だ。「なによ、もう……」『ヒカリさん、大変です!』 ぶつぶつ言いながら耳に当てると、金田の大声で鼓膜が割れるかと思った。「ちょ、うるさい……。どうしたの?」『週刊誌に撮られてますよ!』「週刊誌ぃ? なんのこと?」 眠たい頭で考えるが、思い当たる節はない。壮介と飲んだ時は変装をしていたし、その件だとしたら、もっと早くに出てるはずだ。その人にとって大事な時期にスキャンダルを出すこともあるが、特に大事な時期というわけでもない。『海原さんとの写真ですよ!』「え? なんでまた……」『それはこっちが聞きたいです。キスしてるところ、ばっちりでしたよ!』「ええぇっ!?」 驚きのあまり飛び起きる。壮介とのキスなど、一度しかない。あのパーティでの東屋。何を言おうか迷っていると、誰かがヒカリのスマホに電話をかけているらしく、キャッチホンが鳴った。「ごめん、誰かから電話かかってきたみたい。一旦切るね」『え? ちょ、』 金田との電話を終わらせ、誰

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     大御所の人脈自慢パーティ当日。少し遅めに会場についたヒカリは、壁の花を決め込んでいた。人との交流があまり好きではないのだ。それでも、挨拶はしないといけない。今は挨拶前に会場内を見回し、順番を決めながら、心の準備をしている。「お姉ちゃん、こんなところにいたの?」 舞花がにこやかに近寄り、耳元に口を寄せる。「地味過ぎて気づかなかった」 いつもそうだ。人前でも、ヒカリにだけ聞こえるように暴言を吐く。まだ幼稚園児の方が、精神年齢が高いように思える。 両親と蒼斗も来て、ヒカリを見て嘲笑う。周囲を見回すも、隅の方だからか人がいない。「アンタも呼ばれてたのね。相変わらずシケた顔。不幸が移りそう」 結花はヒカリのつま先からてっぺんまで見てから、鼻で笑う。(そう思うなら来なければいいのに) 言い返したところで、ひどい目に遭うのは分かっている。ヒカリはただ、黙って時間が過ぎるのを待つ。「ダンマリかよ。なっさけねー。だから誰にも選ばれないんじゃねーの」 蒼斗の言葉に彼らはゲラゲラ笑う。「男漁りに来たのかしら?」「お前じゃ誰も選ばないだろ」「あぁ、いた」 そんな声が聞こえたのと同時に、肩を抱かれる。驚いて見上げると、壮介だった。「ご家族の団らんを邪魔してすいません」「どちら様?」 拓也は怪訝そうに壮介を見る。「ご挨拶が遅れました。僕はヒカリさんと交際をさせていただいている、海原壮介と申します。flocon de neigeの社長をしています」 壮介は4人に名刺を渡す。名刺を受け取った彼らは、一瞬顔をしかめるも、笑顔を浮かべた。「まだ若い会社ですので、今回初めて呼ばれたんですよ。いやぁ、ヒカリさんのご家族にお会いできてよかった」 壮介の柔らかな笑顔に、4人は笑顔が剥落し、気まずそうな顔をする。「交際してる人がいるなんて知らなかったわ」「お姉ちゃん水くさーい。言ってくれたらいいのに」「言う機会なくて」 ヒカリは曖昧に微笑む。そもそも壮介とは交際していないし、したとしても彼らに言うことは絶対にない。「ヒカリさんとふたりになってもいいですか?」「え? えぇ、どうぞ」「行こうか」 ヒカリの肩を抱いたまま、壮介は彼らから離れる。バルコニーに出ると、肩から壮介の手が離れる。「はぁ、緊張した……」 壮介は胸を撫で下ろすと、申し訳無さそうに

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