บททั้งหมดของ 黒翼の悪役令嬢は偽りの聖女を許さない : บทที่ 61 - บทที่ 70

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61話 黒翼の悪役令嬢は、偽りの聖女を許さない

​広場を埋め尽くしていた生徒たちが、一斉に息を呑み、そして阿鼻叫喚の声を上げて蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。 ​「きゃあぁぁっ! ヴァルハイト公爵家の……忌み子だわ!」 「なんでSクラスのルシエラ様がこんな暴挙を……!? 聖女様に何をする気だ!」 ​罵声と恐怖の入り混じる中、ルシエラは一切の動じることなく、コツコツと上品な足音を響かせながら壇上へと歩み寄った。その背後には、冷ややかな眼光を放つ従者・マルタが完璧な所作で付き従っている。 ​壇上の中心、数多の信者たちに囲まれていた白銀の髪の少女――エルミナは、突然の襲撃に目を丸くし、おろおろと両手を小さく揺らしていた。 ​「えっ……? あ、あの、ルシエラちゃん……? どうしてこんなこと……」 ​いつも通りの、あまりにも無垢で可愛らしい、怯えた聖女の演技。 周囲の生徒たちは、その姿を見てルシエラに対する怒気をさらに跳ね上がらせた。 ​だが、ルシエラはそんな周囲の反応などハナから気にも留めていない。 スッと冷ややかな冷笑を浮かべると、エルミナを品定めするかのように、上から下へとゆっくりと視線を這わせた。 ​「ふん……相変わらず、くだらない茶番劇を繰り広げているのね、エルミナ」 ​「ちゃ、茶番劇なんて……! 私はただ、みんなの体を治して、苦しみを取り除いてあげたいだけなのにおかしいわ……!」 ​エルミナはうっすらと瞳に涙を浮かべ、いかにも「無実の被害者」といった絶妙な表情を作り上げてみせた。 その姿に、熱狂的な男子生徒の一人が我慢できずに一歩前へ出た。 ​「よせ、ルシエラ! 聖女様をこれ以上侮辱するなら、僕たちが許さないぞ!」 「そうだ! 自分の測定器を爆発させたからって、みんなから愛されている聖女様に嫉妬しているだけじゃないのか!」 ​周囲から飛んでくる、トゲのある非難の言葉。 しかし、ルシエラは怯えるどころか、くすくすと上品に冷笑を漏らした。 ​「嫉妬、ねぇ……?」 ​ルシエラはふわりと優雅にドレスの裾を揺らしながら、エルミナの目の前まで歩み寄った。魔法で攻撃を仕掛ける気配など、毛頭ない。ただ、冷徹で気高い「悪役令嬢」としての威圧感を存分に纏い、見下すような視線を投げる。 ​「ねえ、あなたたち、目が腐っているのかしら?」 ​ルシエラは周
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-08-26
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62話 孤高の悪役、そして生徒会室の密会

​自ら進んで「悪役令嬢」の仮面を被った日。その選択によって手に入れた最大のメリットは、他でもない――堂々とエルミナの動向を監視し、その行動に介入するための「大義名分」だった。​これで、エルミナの巡礼場所にしつこく出没しては冷ややかな言葉で妨害したり、周囲の目を盗んで彼女がばら撒く「漆黒の核」を隠れて浄化したりすることが公然と可能になる。周囲からは「嫌がらせをする悪質な悪役令嬢」に見えているのだから、これほど好都合な隠れ蓑はない。​午後の授業が始まると、ルシエラは平然とした足取りで『特別魔導Sクラス』の教室へと戻った。​ガラリ、と重い扉を開けて中へ入ると、それまでざわついていた教室が一瞬で氷のように静まり返った。​「っ……!」「ル、ルシエラが戻ってきたぞ……!」​生徒たちの視線に怯えの色が混じっている。それも当然だ。昨日、全校生徒の前であの傲慢な宣戦布告を行い、聖女エルミナを徹底的に侮辱した「最凶の悪役令嬢」なのだから。​ルシエラは周囲の冷ややかな視線や怯えたざわめきを涼しい顔で無視し、最前列の真ん中にある自分の席へと優雅に腰を下ろした。​――と、その時。​ザワザワと周囲で小さな移動音が起きた。ふと横を見ると、ルシエラのすぐ隣の席にいたはずのエルミナが、怯えた子動物のようにびくっと肩を震わせ、自分の机と椅子を抱えるようにして教室の端の席へと引っぺがしていく。それに追従するように、ライネルをはじめとする他のクラスメイトたちも、「関わらないでおこう」と言わばかりに、自分の荷物をまとめて教室の隅っこへと固まってしまった。​最前列の真ん中。広々とした特等席には、ルシエラと、護衛として後ろに控えるマルタだけがぽツンと取り残されている。​(……ふふっ)​ルシエラは誰にも見えないようにそっと口角を上げ、心の中で小さく笑った。​自分を中心に半径数メートルが綺麗に空洞化している、この圧倒的なまでの「のけ者感」。下手に周囲からチヤホヤされるよりも、よっぽど気楽で居心地がいい。​(意外と気持ちがいいわね……。悪役令嬢も、悪くないかも)​窮屈な「良い子」の仮面を剥ぎ捨て、我が儘で高慢な悪女を演じ切るこの感覚は、どこか痛快ですらあった。​◇​そして、放課後。​ルシエラは授業が終わるとすぐに席を立ち、足取り軽く第一校舎の奥へと向かっていた。目的地は、生徒
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-08-27
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63話 聖女の影と、忍び寄る光

放課後の薄暗い生徒会室。 思いがけない遭遇から始まったその密会は、ルシエラにとって予期せぬ大きな転換点となった。 ​「私の部屋へいらっしゃい」 ​ルシエラがそう告げると、セレスは小さく息を呑み、不安そうに裾をぎゅっと握りしめた。しかし、すぐに「はい……お邪魔します」と健気に頷き、ルシエラの後をついて女子寮の自室へと足を運んだ。 ​◇ ​特別魔導Sクラスの女子寮。その最奥にあるルシエラの部屋。 ​「どうぞ、座って」 ​ルシエラが促すと、セレスはおずおずとソファの端に腰掛けた。小柄な身体に対して少し大きな制服が、彼女の頼りなさをいっそう際立たせている。 ​ルシエラは紅茶を淹れると、向かいの席に静かに座り、まっすぐにセレスを見据えた。 ​「……セレス、さん、だったわね。父上と同じ苗字ということは、貴方はあのオーガスト枢機卿の……」 ​「はい。……父が亡くなったことは、耳に届いていますでしょうか」 ​「ええ。命懸けで私を導いてくれた、恩人だわ」 ​ルシエラの言葉に、セレスは少しだけ表情を和らげ、しかしすぐに真剣な眼差しへと戻した。 ​「父は生前、いつもルシエラ様のこと心配していました。大天使としての強大な力と、あまりに過酷な運命を背負う貴方のことを、自分の娘のように……いえ、それ以上に大切に想っていました」 ​「父から、ルシエラ様がこの学園に入学されると聞いた時、私は本当に嬉しかったんです。いつか直接お会いして、父の遺志を伝えたかった……。なのに、まさかこんな状況になってしまうなんて」 ​セレスは俯き、自分の膝の上で小さな手をぎゅっと重ねた。 ​「こんな状況、というのは?」 ​ルシエラが低く問いかけると、セレスは顔を上げ、怯えを含んだ震える声で語り始めた。 ​「……最近、学園の中で『聖女エルミナ様』の噂がすごいですよね。みんな、彼女のことを本物の救世主だと崇めて、次々と治療を受けています。でも……あれは、おかしんです」 ​「何がおかしいの?」 ​「父は、亡くなる直前まで『闇の侵食』と『偽りの奇跡』に関する研究ノートを遺していました。……あの聖女様が使っている神聖魔法、あれは病気や怪我を治しているんじゃないんです」 ​セレスの言葉に、ルシエラは思わず身を乗り出した。 ​「やっぱり……!」
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-08-28
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64話 水面下のチェスゲーム

​セレス・オーガストがもたらした「生徒会の内部資料」と、亡き父の遺志を継ぐという言葉。 ルシエラはその純粋な告発を微塵も疑うことなく受け入れ、頼もしい協力者を得たという確信のもと、次なる反撃の準備へと着手していた。 ​しかし、現実はそう甘くはない。 ​「……授業の隙間を縫うのには、どうしても限界があるわね」 ​自室の机に向かい、セレスから託された巡礼スケジュールのファイルを開きながら、ルシエラは小さく息を吐き出した。 ​セレスは3年生であるため、1年生であるルシエラとは時間割や教室の棟が大きく異なり、日常的に行動を共にするわけにはいかない。そのため、彼女は「生徒会の雑務」という名目を活かし、内部からエルミナの動向や不穏な動きを探る情報係に徹することになっていた。 ​問題は、エルミナの「学内巡礼」の頻度とスケジュールだった。 ​王室と教会の特例許可を得たエルミナは、毎日昼休みや午後の放課後にかけ、学内のあちこちで大規模な浄化と治癒の儀式を行っている。 ルシエラは「悪役令嬢」としての立場を利用し、巡礼場所にわざわざ赴いて冷ややかな皮肉を叩きつけたり、表向きの妨害を演じたりして人々の目を惹きつけてきた。その隙に、生徒たちが気づかない死角で自らの『漆黒の浄化マナ』を密かに放ち、植え付けられかけた漆黒の核を一つひとつ摘み取っている。 ​だが――すべての巡礼時間にルシエラが張り付いて妨害できるわけがない。 当然ながら、ルシエラ自身にも魔導クラスの厳格な授業や実技の時間が存在し、学業を完全に放棄するわけにはいかないのだ。 ​ルシエラが授業を受けているその裏で、エルミナの光は無数の生徒たちに降り注ぎ、着々と悪魔の苗床を増やし続けている。 ​(私が授業に出ている間にも、あの光は生徒たちの魂に深く根を張っていく……。これでは、いたちごっこよ) ​根本的な解決策を見出さない限り、時間は確実に悪魔側に味方していた。 かつて世界を守っていた高位聖職者たちが壊滅状態にある今、この学園で悪魔の侵略を食い止めることができるのは、元大天使の魂を持つルシエラただ一人しかいないのだから。 ​焦燥が胸をかすめる中、セレスから新たな情報がもたらされた。 数日後に控えた、学園全体の「大規模行事」に関するものだった。 ​『ルシエラさん、次の日曜日に、全校生徒が中央大聖堂に集ま
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-08-29
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65話 聖堂の罠と、明かされる真実

​日曜日の午後、全校生徒の熱気が立ち込める中央大聖堂。 ステンドグラスから差し込む神々しい光の下で、白銀の髪を揺らすエルミナが祭壇の中央に立っていた。今日行われるのは、学園全体の結界を更新し、すべての生徒に「祝福の光」を一斉に授けるという大規模な儀式だ。 ​「さあ、皆さん……私の光で、心を清めましょう」 ​エルミナの澄んだ声が聖堂内に響き渡り、生徒たちがうっとりと酔いしれるようにひざまずく。 ​――その時。 ​――ガシャァァンッ!! ​大聖堂の重厚な正面扉が内側へ向かって激しく吹き飛び、冷徹な気配を纏った漆黒のドレスの少女が姿を現した。 ​「そこまでよ、エルミナ!」 ​ルシエラだった。 彼女は冷酷な美しさを湛えた悪役令嬢の笑みを浮かべ、毅然とした足取りで祭壇へと歩み寄る。 ​「いつまでもそんな茶番を続けさせないわ。ここで貴方のその化けの皮を完全に剥ぎ取ってあげる!」 ​「きゃあ……っ! ルシエラさん……どうして……?」 ​エルミナは怯えたように両手で顔を覆い、身を縮こまらせた。その無力そうな演技に、周囲の生徒や教職員たちの怒気が一斉にルシエラへと向けられる。 ​「またあの悪女が邪魔しにきやがったぞ!」 「聖女様を汚すな! 教職員の方々、早く彼女を拘束してください!」 ​待っていましたとばかりに、教職員たちが一斉に動き出した。 ルシエラは「ふん、まとめてかかってきなさい」と不敵に笑い、いつでも魔法を迎撃する構えを見せた――が。 ​――ビュッ……!! ​背後から放たれた数本の特製魔導拘束鎖が、ルシエラの両腕と足首を正確無比に絡め取った。 ​「っ……!? なに……!?」 ​それは生徒たちや教職員のものではなく、祭壇の足元、そしてルシエラの足元に張り巡らされた「完璧な罠の結界陣」から直接発動した高位の拘束術だった。 ​「ふふっ……かかったね、ルシエラちゃん」 ​先ほどまで怯えていたはずのエルミナが、スッと顔を上げた。 その白銀の髪の少女から発せられたのは、か弱い生徒のものではない。底知れず冷徹で、世界を嘲笑うような禍々しい魔力のうねりだった。 ​「エルミナ……? 貴方……最初から、これを狙って……!」 ​「ええ。あなたがどんなに賢くても、私の仕掛けた『信頼できる協力者』という甘い餌には抗えなかったようね。すべて、あなたの行
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-08-30
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66話 白銀の朝と、塗り潰された意識

​冷たい石造りの拘束室で、悪魔の嘲笑を聞いた瞬間――ルシエラの意識はプツリと途切れた。 ​深い、底知れぬ闇の底。 その意識の深層で、かつて天界を統べた大天使の魂の片鱗が、まばゆい光を放って抗おうとしていた。しかし、それを嘲笑うかのように、無数の漆黒の触手がその光に絡みつき、ドロリとした邪悪な澱(おり)を塗りたくっていく。 ​光が濁り、消えかけていく。 思考の輪郭が溶け出し、「なぜ自分がここにいるのか」「何をしなければならなかったのか」――肝腎な記憶や感情のピースが、霧散するようにスルリと頭から抜け落ちていく。 ​考えることができない。 ただ、冷たくて甘美な疲労感だけが、頭の芯を心地よく麻痺させていった。 ​◇ ​「……ん……あれ……?」 ​次に目が覚めたとき、ルシエラは冷たい石の床ではなく、ふかふかで上質な羽毛のベッドの上にいた。 ​差し込む朝の光がやけに眩しい。 見慣れない天蓋付きのベッド。ここはどこだろう、と思いながら隣に目を向けると、驚いたことに、白銀の髪をふわりと枕に預けたエルミナが、すぅすぅと穏やかな寝息を立てて隣で眠っていた。 ​(……え? 私、どうしてエルミナと一緒のベッドに……?) ​ぼんやりとする頭で、ルシエラは無意識に、眠るエルミナの頬へとそっと手を伸ばそうとした。その指先が触れかかる直前――。 ​「ん……むにゃ……」 ​エルミナがゆっくりとまぶたを開け、トロンとした甘い瞳でルシエラを見上げた。 ​「あ……ルシエラちゃん、おはよ〜」 ​無邪気で、まるで長年の親友に向けるような、あまりにも親密で無垢な笑顔。 ​「あ……おはよ……う……」 ​ルシエラは自分の声の掠れ具合に戸惑いながら、頭を軽く振った。 ​「うーん……なんだか、すごくぼーっとするね……。私、昨日まで何をしていたんだっけ……?」 ​「ふふ、なに言ってるの。昨日も一昨日も、ずっと一緒に楽しく過ごしてたじゃない。ねえ、ルシエラちゃん」 ​エルミナはクスクスと笑いながら、ルシエラの体にすり寄るように腕を絡めてきた。その温もりが妙に心地よくて、ルシエラは「そうだっけ……?」と首を傾げる。なぜか、深いところで引っかかっていたはずの鋭い疑念や怒りは、すっかり綺麗に洗い流されていた。 ​「ルシエラ様、朝でございます。お目覚めの時間ですよ」 ​その時、カ
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-08-31
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67話 黄金の日常と、完璧な調和

​柔らかな朝の陽光が学園の並木道を包み込む中、ルシエラはエルミナと並んで正門をくぐっていた。​白銀の髪を揺らしながら軽やかに歩くエルミナと、気品溢れる漆黒のドレスに身を包んだルシエラ。かつては一触即発の険悪なムードを漂わせ、全校生徒の前で激しく対立していたはずの二人が、いまや腕を組むようにして仲睦まじく歩いている。​「ねえ、ルシエラちゃん。今日の放課後、新しくできた中庭のカフェテラスに行かない? 特製のハーブティーが美味しいんだって!」​「ふふ、いいわね。行きましょう、エルミナ」​ルシエラはごく自然に微笑み返し、その甘美な響きの会話を交わした。登校してくる生徒たちが二人を見つけて、一斉に足を止める。しかし、そこにかつてのような恐れや敵意の色は微塵もない。​「あっ、エルミナ様だ……!」「それに、ルシエラ様もご一緒だわ! 最近、本当にお二人とも仲良しよね〜」「美しすぎる……あんな風に並ばれたら、目の保養どころの騒ぎじゃないよ!」​黄色い歓声と憧れの視線が、心地よい波のように二人を包み込む。ルシエラはその称賛を何の引っかかりもなく受け止め、心地よい幸福感に浸りながら校舎へと足を進めた。頭の中の霧はすっかり晴れ、ただ「今日という日常が平和で素晴らしい」ということだけが、絶対的な真実として存在していた。​◇​特別魔導Sクラスの教室。開け放たれた扉から中に入ると、クラスメイトたちが和気あいあいと談笑していた。​「おっ、おはよ、ルシエラ、エルミナ!」​いつも通り、自然な足取りで自分の席へと向かうルシエラ。驚くべきことに、かつてルシエラを恐れて教室の隅へと逃げ出し、エルミナの周囲に群がっていたクラスメイトたちの配置は綺麗に消え失せていた。​席替えをしたわけでもないのに、ルシエラの隣の席には――いつの間にか、エルミナの机がぴったりとくっつけられて配置されている。​「おはよ、ルシエラちゃん!」「おはよう、エルミナ」​二人は何の違和感もなく隣同士の席に腰を下ろした。周囲の生徒たちもごく自然に机を寄せ合い、「ねえ昨日の課題やった?」「放課後みんなでロビーに行こうよ」と、当たり前のように二人へ話しかけてくる。かつての孤立感や、冷ややかな視線などは夢幻だったかのように、教室全体が温かな和やかさに満ちていた。​そして、ルシエラのすぐ隣の列。そこに
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-09-02
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68話 深緑の森と、魔術訓練の陣

​季節は巡り、景色は一気に鮮やかな夏へと変わっていた。​かつての騒動が嘘のように穏やかな日常を取り戻した学園だったが、特別魔導Sクラスのカリキュラムは容赦なく次のステップへと移行していた。本日は、学内を離れて王都郊外に広がる広大な「ヴェルデの深緑林」での野外魔術訓練。​木漏れ日が揺れる特設の訓練場に、生徒たちの緊張感ある足音が響く。​「ふふ、ルシエラちゃん、少し汗ばんだね。大丈夫?」​白銀の髪をポニーテールに結い上げ、軽装の魔導戦闘服に身を包んだエルミナが、タオルを片手にぴょこっとルシエラの隣に歩み寄ってきた。その抜群のスタイルが際立つ戦闘服姿は、訓練場にいる他の男子生徒たちの視線を自然と引きつけている。​「ありがとう、エルミナ。これくらいの運動でバテたりしないわよ」​ルシエラは気品漂う漆黒の戦闘服を纏い、涼しげな笑みを浮かべて返事をした。​彼女もまた、鍛え上げられた無駄のないプロポーションと洗練された立ち振る舞いで、周囲の目を釘付けにしている。二人が並んで歩く姿は、まるで絵画のように美しかった。​「二人とも準備はいいか? 今日の訓練は、森の奥に巣食う魔獣の討伐と広域結界の展開だそうだぞ」​爽やかな風を切って歩み寄ってきたのは、ライネルだった。​引き締まった体躯に実戦用の魔導装具を纏い、前髪をラフにかき上げたその姿は、周囲が思わず息をのむほどの端正なイケメンだった。​「もちろん、バッチリよ。ライネル君こそ、足を引っ張らないでよね」​「はは、手厳しいな。見せてやるさ、王族の意地ってやつをね」​ライネルは涼しげな笑みを浮かべ、二人に軽やかに声をかける。​「ふふ、負けないわよ。どちらがより美しく効率的に魔獣を制圧できるか、勝負しましょう」​「望むところさ。ルシエラ、あまり調子に乗ってると僕に置いていかれるぞ」​三人の軽妙なやり取りを聞きながら、周囲のクラスメイトたちもそれぞれの装備を確認し、和気あいあいとした空気を漂わせている。かつてのような殺伐とした緊張感や、互いを疑うような影はどこにもない。誰もが穏やかな笑みを浮かべ、この平穏な訓練の時間を楽しみにしているようだった。​「それでは各員、出発準備を完了しなさい! 本日の訓練は班単位での行動となります。Sクラスは、ルシエラ、エルミナ、ライネルの3名で第4セクターの森の奥へ向かいなさい!」
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-09-03
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69話 薄氷の黄昏と、沈黙の従者

​「ヴェルデの深緑林」での野外魔術訓練は、何事もなく無事に終了した。​夕暮れ時、オレンジ色に染まる王都の街道を、生徒たちを乗せた大型魔導馬車が静かにな進んでいく。車内には疲れよりも充実感を漂わせたクラスメイトたちの会話が弾んでいた。​「ふう……今日は本当に楽しかったね、ルシエラちゃん!」​エルミナはルシエラの隣にぴったりと座り、満足そうに伸びをした。​「ええ。エルミナの華麗な魔術も見られたし、とても良い訓練になったわ」​ルシエラもまた、穏やかな微笑みを浮かべて頷く。二人の間に漂う空気はどこまでも甘やかで、かつて刃を交え、互いの命や存在を賭けて争っていた過去など、初めから存在しなかったかのようだった。​馬車が学園の正面ゲートに到着し、生徒たちがぞろぞろと降り始める。ルシエラとエルミナも並んで歩みを進めようとしたその時――。​「すまない、ルシエラ、エルミナ。僕は少し先に失礼するよ」​少し後ろを歩いていたライネルが、二人の横を通り抜けながら声をかけてきた。​「あら、ライネル君? これからみんなで寮の食堂でお茶でもしようって話していたのだけれど」​ルシエラが不審そうに首を傾げると、ライネルはいつもの爽やかで崩れない完璧な笑みを浮かべて見せた。​「教師陣から呼び出しがかかっていてね。今日の訓練での班長としての報告書を、大至急提出しなければならないんだ。……二人で先に戻っていてくれ」​「そっかぁ、残念。じゃあ、報告書が終わったら後で合流してね、ライネル君!」​「ああ、善処するよ」​ライネルは手を軽く一振りすると、二人から背を向け、早足で学園の敷地内へと姿を消した。​◇​背を向けた瞬間、ライネルの表情から「クラスメイト」としての穏やかな笑みが消え去った。​(報告書なんてものは口実だ。一刻も早く確認しなければならないことがある……!)​ライネルが向かったのは、教師たちの集まる職員塔ではなく、特別魔導Sクラスの女子寮の裏手に位置する馬車の待機場だった。​生徒たちが帰還するこの時間帯、寮の玄関口には主人の帰りを待つ従者や使用人たちが集まる。そして、ルシエラの忠実なる専属メイド――マルタもまた、そこに姿を見せているはずだった。​ライネルは身を隠すように陰から待機場を覗き込んだ。​案の定、夕闇が深まり始める木々の下に、寸分の狂いもない姿勢で佇む
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-09-04
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70話 疑念の影と、蠢く謀略

​暗さを増した夕暮れの学園通路。マルタとの会話を終え、冷たい焦燥感を胸に抱いたまま歩を進めていたライネルの前に、ひっそりと小柄な影が立ち塞がった。​「……ライネル様」​控えめで、か弱い声をかけてきたのは、生徒会の腕章を巻いた少女――セレス・オーガストだった。亡きオーガスト枢機卿の娘であり、生徒会の雑務をこなすおとなしい3年生。その儚げな瞳には、怯えと縋(すが)るような色が浮かべられている。​ライネルは立ち止まり、視線だけを彼女に向けた。彼自身は、この少女がかつて地下牢の罠へとルシエラを誘導した「エルミナ側の刺客」であることを知らない。しかし、この狂気に満ちた学園において、急に近付いてくる者すべてに対する警戒を怠るつもりは毛頭なかった。​「僕に何か用かい、セレス先輩」​ライネルは表情一つ変えず、王族としての洗練された立ち振る舞いで、距離を保ったまま問いかける。​「はい……。私、ずっと誰にもご相談できずにいて……。ライネル様なら、この学園の異変に気づいていらっしゃるのではないかと……」​セレスは震える手で胸元をぎゅっと握りしめ、涙ぐんだ瞳でライネルを見上げた。かつてルシエラをまんまと騙し取った、あの「守ってあげたくなるような健気な少女」の演技そのものだった。​「学園の異変……? それは一体何の話かな」​「聖女エルミナ様のことです……! 彼女の授ける祝福の光……あれは人を救うものではありません。みんな、あの方の言葉にしか耳を貸さなくなって、まるで心を奪われたようになってしまっています……! 亡き父の残した記録にも、あの光の危険性が記されていて……!」​真実を半分混ぜ込んだ、迫真の告発。もしこれが、かつて一人で孤独に戦っていた頃のルシエラであれば、喉から手が出るほど欲しかった「協力者」の言葉に見えただろう。​だが――ライネルの瞳は、驚くほど冷やかだった。​(……違和感がある)​ライネルは脳内で素早く思考を巡らせる。学園全体が完全にエルミナの掌握下にあり、教師も生徒も、あのマルタですら疑いを持たずに微笑んでいるこの現状。そんな完璧な箱庭の中で、なぜ今さら一人の3年生が、これほど都合よく自分に「告白」してくるのか。​(僕が洗脳を免れていることを見抜き、揺さぶりをかけに来たのか……? あるいは、僕の動向を探るための誘導か)​ライネルは口元
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-09-05
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