王都の喧騒を抜け、夕暮れの学園へと帰還したライネル。 馬車を降りた彼の足取りには、遠征前のような焦燥や孤独感はすでに存在しなかった。腰に佩いた『アルヴァ=クレイド』の重みと、胸元に秘めた『覚醒の聖鈴』のひんやりとした感触が、彼の精神を冷徹なまでに研ぎ澄ませている。 (悪魔の支配は、学園の隅々にまで行き届いている……。だが、僕にはもう迷いはない) 夕日に染まる校舎を見上げ、ライネルは密かに決意を新たにした。 ◇ 一方――特別魔導Sクラスの女子寮、その豪華な一室。 薄暗い室内のベッドの上で、ルシエラは一人、横たわっていた。 エルミナが学園の用事で席を外しているわずかな時間。いつもなら彼女の不在に寂しさを感じ、まどろみの中に沈んでいくはずだった。 だが、今日のルシエラは違っていた。 胸の奥が、激しく疼いていた。 まるで熱く爛れた烙印を押し当てられているかのように、魂の最奥が焼けるように熱い。 (なんなの……? この……不快な感覚は……) ルシエラは胸元を強く握りしめ、荒い息を吐いた。 頭の中に、見たこともない「知らない記憶」が波のように押し寄せてくる。 雲の上に広がる宮殿。澄み渡る蒼穹。血と炎に染まる天地。 そして――漆黒の翼を広げた悪魔に向かって、白銀の剣を振るう自分自身の姿。 (私は……ルシエラ・ヴァルハイト……公爵家の令嬢で……エルミナの……) 記憶を整理しようとすればするほど、脳裏に響く「もう一つの声」がそれを拒絶する。 『――目を開けなさい、私』 「っ……!?」 頭痛に耐えかねて瞳を閉じた瞬間、ルシエラの意識は暗闇の精神世界へと引きずり込まれた。 そこは、鏡のように透き通った水面が広がる無音の世界。 水の上にぽつんと立つルシエラの目の前に、もう一人の少女が佇んでいた。 容姿、髪色、瞳の輝き――すべてが瓜二つ。 しかし、目の前の少女は、ルシエラが一度も纏ったことのない荘厳な「純白の甲冑」を身に纏い、背中には輝く十二枚の羽を広げていた。 大天使ルシエラ。 かつて天界を統べ、悪魔と戦い抜いた彼女の魂の原像(オリジン)。 「貴方は……だれ……?」 ルシエラが問いかけると、大天使の姿をしたルシエラは、哀しみと怒りの入り混じった瞳でまっすぐに自分を見つめ返した。 『私は貴女
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-09-17 อ่านเพิ่มเติม