週末、千紘は待ち合わせより十分ほど早く駅に着いた。 改札近くで律を待ちながら、ショーウィンドウに映った自分を見る。 いつもより少しだけ時間をかけて髪を整えた。 服も何度か迷った。 映画を見るだけなのだから、そこまで気にする必要はないはずなのに。「雨宮さん」 呼ばれて振り返る。「すみません。待ちました?」「いえ、私も今来たところです」「よかった。じゃあ、行きましょうか」 律はいつもと変わらない。 そのことに安心したような、少し拍子抜けしたような気持ちになりながら、千紘は隣を歩いた。 ◇ 映画館は休日ということもあって混んでいた。 律が事前に席を取ってくれていたため、そのまま飲み物だけを買う。「ポップコーンは?」「いらないです」「そうですか」 答えたあとで、千紘は思い出した。 以前、律と映画を見に行ったときも同じことを聞かれた。 あのとき自分は、上映中に食べる音が気になるからいらない、と答えたはずだ。 律は覚えているだろうか。 ちらりと横を見る。 特に気にした様子はなかった。 千紘は胸の内で息をついた。 映画が始まると、いつの間にかそんなことも忘れていた。 二時間ほどの上映が終わり、明るくなった館内で律がこちらを見る。「面白かったですね」「はい。最後はちょっと意外でしたけど」「俺は途中で分かりました」「本当ですか?」「たぶん、あそこが伏線ですよね」「え、絶対あとから言ってますよね?」「本当に気づいてましたよ」「怪しい」 そんなことを話しながら劇場を出た。 まだ夕食には少し早い。「このあと、どうします?」 律に聞かれ、千紘は一瞬迷った。 映画は
Last Updated : 2026-09-20 Read more