相談を予約した日、芹奈は朝から落ち着かなかった。 旧端末は鞄に入れてある。 何をどこまで話すのか、昨夜も何度も考えた。 彰人に呼ばれて、あの場所へ行ったこと。 彰人が千紘を海へ落としたこと。 自分がそれを止めなかったこと。 それどころか、「早くして」と急かしたこと。 全部話せば、自分もただでは済まないかもしれない。 それでも今日は逃げないと決めていた。 ◇ 午後三時を過ぎた頃だった。「芹奈、ちょっといい?」 彰人に呼ばれ、芹奈は顔を上げた。「何?」「これ、今日中に確認してもらえる?」 渡された資料を見て、芹奈は眉を寄せた。 自分の担当に関係するものだった。確認を頼まれること自体はおかしくない。 ただ、量が多い。「今日中?」「悪い。明日の朝使いたいんだ」 時計を見る。 相談の予約までは、まだ時間がある。 けれどこれを全部確認していたら、定時には出られない。「明日の朝じゃ駄目?」「朝一で必要なんだよ」「……そう」 芹奈は資料を受け取った。 彰人がふと首を傾げる。「何か予定あった?」 心臓が跳ねた。「別に」「なら悪いけど、お願い」 彰人はそれだけ言って、自分の席へ戻っていった。 芹奈はその背中を見つめた。 偶然だ。 予約したことは誰にも話していない。 雨宮にも言っていない。 彰人が知っているはずがない。 そう思いながら作業を始めた。 だが、確認すべき箇所は予想以上に多かった。 時計の針だけが進んでいく。 このままでは間に合わない。 途中で切り上げることも考えたが、明日の
Last Updated : 2026-09-26 Read more