結婚して5年目、一ノ瀬尋(いちのせ じん)は、妻である私――千石栖(せんごく すみ)が変わったと言った。尋は私に捨てられるのが怖いのだと言い張り、夫婦円満を祈願するためにわざわざ人里離れた山奥の神社へ参拝に行くと言い出した。けれど1時間もしないうちに、彼は若い巫女を連れて引き返してきた。その巫女は整った顔立ちをしていた。記憶を失い、一日中、山の中を当てもなく彷徨っていたのだという。大きなお腹を抱え、むくんでやつれた私を前にしても、尋はその巫女の手首を握る手を離そうとはしなかった。「出会ったのも何かの縁だ。彼女を放っておくわけにはいかない」その後、友人が尋に尋ねた。私が怒るとは思わな
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