翌朝。瑠理子は自室で目覚めた。もう二度と淳に関わらないでおこうと思う反面、自分が突っぱねることによって、彼の行き場がなくなるのではないかと心配している自分もいた。 矛盾した感情が彼女の思考をおかしくさせる。 昨日、父の部屋での続きを思い出した。御堂直之との見合いの了承後、茶を持ってきた淳が出て行ってからの話だ。 「あの子の父親は、財務担当役員だったのだ。二十年前、うちが銀行に見放されかけたとき、たった一人で全国の取引先を回って頭を下げ続けた。あの人がいなければ、海原グループはとっくに消えていた」 知っている。 瑠理子は前世で何度もその話を父から聞いていた。 しかしまるで初めて聞いたようにふるまわなければならない。「その恩人の忘れ形見が、事故で両親を亡くして、身寄りをなくした。二郎が方々を当たって、あの子の居場所をようやく突き止めてくれたんだ。うちが引き取らなければ、あの子はどこへ行く」「……お父様」「瑠理子。海原の人間は、恩を返せなくなったら終わりだ」 瑠理子は膝の上で指を組み直した。淳を追い出すことは難しそうだが、彼が路頭に迷うのも気が引けた。 今はまだ、彼は自分を殺していない。 これからそうするのかもしれないが、そうなる前に手を討てばいい。 今世では関わらないように生きれば、いいのではないか。 「わかりました。では、条件を出させてください」 父が初めて振り返った。娘の顔に見慣れない硬さを見つけて、わずかに眉を寄せる。「彼の部屋は、母屋ではなく使用人棟にしてください。それから、会社の書類がある部屋には近づけないこと。役員の集まりにも同席させないこと。海原グループに入社などは認めません」「……瑠理子、お前」「恩を返すというのは、住まいと学費を用意することでしょう。海原グループとは関りを持って欲しくありません」 言い終えてから、瑠理子は自分の声が思ったより冷たく響いたことに気づいた。 長い沈黙のあと、父
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-09-14 อ่านเพิ่มเติม