翌朝、ミオはいつもより少し早く目を覚ました。昨夜、机の上へ置いたままにしていた便箋には、『リリア・ウェストンさんへ。』という宛名だけが残っている。その下には一文字も書かれておらず、横には何度も読み返したせいで折り目の柔らかくなったリリアの手紙が置かれていた。一晩眠れば、もう少し穏やかな気持ちになれるかもしれないと思っていた。けれど、朝になっても「あなたが追放されたとき、私は少し安心していました」という一文を思い出せば腹が立つし、その一方で、リリアが何度もミオと比べられ、自分の価値まで他人の名前で測られていたことを想像すると、かわいそうだとも思う。そして何より厄介なのは、自分にも似たような感情があったことを、もう思い出してしまったことだった。リリアが召喚された直後、白い炎を見た夜。誰もが彼女を見て「これこそ本物の聖女だ」と騒ぎ始めた頃。ミオはほんの一瞬ではあるが、「この子が来なければ」と思った。あのときの自分は、リリアの名前すらろくに知らなかった。彼女が望んで召喚されたわけではないことも、突然知らない世界へ放り込まれたことも、何も考えていなかった。ただ、自分から何かを奪っていく存在に見えた。
Last Updated : 2026-10-02 Read more