Semua Bab 『追放された聖女と呪われた竜王の契約結婚』: Bab 81 - Bab 90

116 Bab

第79話 真実が一つでも、記憶は一つではありませんでした

第79話 真実が一つでも、記憶は一つではありませんでした第三者記録の確認には、思っていた以上に時間がかかった。十七年前の資料だから、残っていないものも多い。気象局には年間の降水量と洪水発生記録が残されていたが、日ごとの水量までは分からない。中央会計局には堤防補修への補助金支出が記録されていたものの、実際にどこまで工事が終わっていたかについては現地報告と数字が一致していなかった。それでも、アルクとグレス、それから連邦側の記録官が数日かけて探した結果、いくつか重要な資料が見つかった。その中には、狼族側にも農耕側にも属していない商人の旅行記まであった。「こんなもの、よく残ってましたね」王城の資料室で写本を広げながら、ミオは思わず感心した。アルクが答える。「本人が大きな商会の会計責任者だったため、旅程と支出記録をかなり細かく残していたようです。日記というより業務記録に近いですね」「商人ってすごい」「金銭が絡むと、人はかなり正確になります」「妙な説得力がありますね」カエルも横から資料を覗き込む。「何が書いてある?」「十七年前の、水門騒動の三日前にデルナ川流域を通ってます」ミオは該当箇所を指で追った。『上流の堤、前年の崩落部いまだ補修不十分。通行荷車を一時停止。橋脚周辺に土嚢多数。』さらに、その二日後。『下流第三集落にて用水不足。住民より、上流より水来ずとの訴えあり。ただし途中水路二か所、崩落および漏水を確認。』ミオはそこで顔を上げた。「これ、かなり大事じゃないですか?」アルクも頷く。「はい。少なくとも、下流へ水が届かなかった原因が、上流側の水量制限だけではなかった可能性を示します」
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-10-05
Baca selengkapnya

第80話 仲直りはしませんでした。それでも、来年の水は分けられました

 第80話 仲直りはしませんでした。それでも、来年の水は分けられました 具体的な水利協定の話し合いが始まってから、最初の三時間で決まったことは、驚くほど少なかった。 デルナ川の上流で最低限確保する貯水量。 下流へ必ず流す基準量。 干ばつ時にどこまで減らせるか。 緊急時に誰が水門を操作するか。 共同監視員を何人置くか。 数字だけを見れば、役人が数日で案を作れる内容だった。 しかし、その数字の一つ一つに、十七年前の記憶が絡んでいる。 「下流六、上流四では話にならん」 ハルグが資料を置いた。 「夏場の家畜用水が足りなくなる」 ゼノアはすぐに答える。 「通常時から六対四にしろとは言っていません。種まきから初期生育までの二十日間だけです」 「二十日も長い」 「その二十日を逃したら、今年の収穫量そのものが落ちます」 「こっちはその二十日だけ水を飲めばいいわけじゃねえ」 「だから四割は残すと言っています」 「四割じゃ足りねえ」 「では何割必要なのです」 「最低五割」 「それでは下流が足りません」 「こっちも足りねえから言ってんだ!」 ハルグの声が大きくなる。 
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-10-06
Baca selengkapnya

第81話 「森と話してほしい」と頼まれても、私は木の言葉を知りません

第81話 「森と話してほしい」と頼まれても、私は木の言葉を知りません精霊森林境界評議会から届いた書状を読んだ翌朝、ミオは王城の会議室で、同じ一文を三度読み返していた。『人間と森の仲介を願いたい。』そこだけ抜き出せば、ずいぶん詩的な依頼に見える。しかし、添付されていた資料を読み進めれば、内容はまったく穏やかではなかった。精霊森林東端と人間諸国の辺境領が接する地域で、三年前から小規模な開拓が進められている。最初は街道沿いに十数軒しかなかった集落が、現在では百人を超える規模になり、畑も広がった。問題が起きたのは、その畑をさらに広げるため、森の一部を伐採したことだった。人間側の記録では、伐採したのは二十七本。その後、半年もしないうちに、森が村へ向かって異常な勢いで広がり始めた。畑へ根が入り込み、石垣を持ち上げ、街道には一夜で低木が生えた。二軒の家屋が大木の根に押されて傾き、倉庫一棟は使用不能になっている。死者はまだ出ていない。ただし、怪我人は七名。人間側はこれを「精霊の攻撃」と呼び、精霊側は「森の回復」と主張しているらしい。「攻撃か、回復か」ミオが資料から顔を上げる。「また最初から言葉が違いますね」向かいに座るアルクが頷いた。「はい。人間側は、自分たちの生活圏へ森が侵入していると認識しています。一方、精霊森林側は、人間側が先に森林領域へ侵入したので、本来の範囲へ戻しているだけだと」ザラが別の資料を読みながら鼻で笑う。「見事に前提から合ってないわね」「デルナ川より大変ですかね」ミオが聞くと、ザラは肩をすくめた。「種類が違う。狼族と農耕部族は、少なくとも水が必要だってところは同じだった。でも今回は、人間と精霊で『土地とは何か』から違う可能性があ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-10-06
Baca selengkapnya

第82話 森から来た通訳は、人間を一度も信用したことがありませんでした

第82話 森から来た通訳は、人間を一度も信用したことがありませんでした精霊森林へ向かう出発日の朝、王城の中庭にはいつもより少し変わった一行が集まっていた。ミオとカエル、ザラ、アルク、それに最低限の護衛と記録担当者。人間側との交渉資料や地図を積んだ荷馬車が二台あり、その隣には精霊森林側から来たリエンとセフィアが立っている。ただ、セフィアだけは馬車へ乗るつもりがないようだった。「乗らないんですか?」ミオが聞くと、セフィアは荷馬車を一度見てから首を横に振った。「狭い」「普通の旅客用馬車ですよ」「木で作った箱の中に閉じ込められて運ばれるのは好きじゃない」言われてみれば、樹精霊に木製馬車を勧めること自体が少し妙に思えてくる。「この馬車の木って、セフィアさんからすると嫌な感じなんですか?」「死んでから長い木だから、別に」「死んでから長い木」「切られ、乾かされ、意思も記憶もほとんど残っていない。もう材木」ミオは馬車の扉へ触れてみた。自分には、ただの木材にしか感じられない。「エリュネさんとは違う?」その名前を出した瞬間、セフィアの顔からわずかに表情が消えた。「違う」「どう違うんですか?」「その話は現地で」「分かりました」無理に踏み込まなかった。セフィアは少し意外そうにミオを見る。「聞かないの?」「現地でって言われたので」「人間は、聞きたいと思ったら止まらないものだと思っていた」「人によります」「あなたは?」「かなり聞きたいほうです」「なのに我慢する?」
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-10-06
Baca selengkapnya

第83話 開拓村の村長は、「森が先に家を壊した」と言いました

第83話 開拓村の村長は、「森が先に家を壊した」と言いました人間側の開拓村アーデルから来た村長オスカー・レインは、ミオが想像していたよりずっと疲れた顔をしていた。年齢は四十代半ばほど。日に焼けた肌に短く切った焦げ茶色の髪を持ち、服装も村長というより、長く畑仕事をしてきた農夫に近い。両手は大きく、指の節には固い豆があり、右の手首には古い火傷の跡が残っている。精霊側の話だけを聞いていると、「森を勝手に伐採した人間側の代表」という印象になりやすい。しかし、実際に目の前へ座ったオスカーは、森を切り開いて利益を得た開発商人には見えなかった。「先ほど申し上げたとおりです」オスカーは、卓上に置かれた水へ手を伸ばさないまま言った。「私たちは、森を襲ってはいません。あの土地へ入ったとき、人間側の行政記録では、すでに開拓許可区域になっていました」ミオは頷いた。「その許可書は持っていますか?」「写しを持ってきました」オスカーは革鞄から丁寧に折り畳まれた文書を取り出し、アルクへ渡した。アルクが確認する。「確かに、人間側の辺境伯府が発行した開拓許可証です。日付は四年前。対象地域については『セレム川西岸より旧街道南側の未利用地』となっています」ミオが尋ねる。「精霊森林との境界については?」「何も書かれていません」アルクが答える。「行政上、人間領として処理されていたのでしょう」セフィアがすぐに言った。「人間が勝手に人間領と書いただけ」声は冷たい。オスカーの顔が硬くなる。「こちらからすれば、領主の印がある正式書類です」「森は、その領主に土地を渡した覚えはない」「そんなことを、村人がどうやって知
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-10-07
Baca selengkapnya

第84話 精霊たちは、「木を一本切った」のではなく「一人殺された」と考えていました

第84話 精霊たちは、「木を一本切った」のではなく「一人殺された」と考えていました精霊森林の入口に立ったとき、ミオにはそこが「国境」には見えなかった。目の前に高い壁があるわけでも、門番がいるわけでもない。人間側の地図では、まだしばらく先まで人間領として色が塗られている場所で、道の両側には背の低い木と草原が続いているだけだった。それでもセフィアは、迷いなく言った。「ここから森」ミオは手に持った三枚葉の枝を見た。昨日、セフィアから渡されたものだ。『あなたが、私の客だという印。』その枝を見せた直後、地面の奥を何かが走った。音というより、振動だった。足元から脛へ、そこから背中へ上ってくるような、細くて奇妙な感覚。そしてセフィアが目を閉じたまま言った。「森が、あなたを見ている」ミオは思わず周囲を見回した。「全部からって言われても、どこを見ればいいのか分からないんですけど」「見なくていい」「でも、見られてるんですよね?」「そう」「ちょっと落ち着かないです」ザラが後ろから笑った。「王城へ来る人間のほうが、よっぽど露骨に見てるでしょう」「視線があると分かるのと、分からないのは違います」「まあ、それはそうね」カエルは黙って周囲を見ている。普段なら、ミオの前へ一歩出て警戒するところだろう。しかし今回は、森そのものが相手だ。剣を抜けばどうにかなる話ではない。「敵意は?」カエルがセフィアへ尋ねた。セフィアは目を閉じたまましばらく黙っていた。「強くはない」
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-10-07
Baca selengkapnya

第85話 同じ地図なのに、人間と精霊では国境線が違いました

第85話 同じ地図なのに、人間と精霊では国境線が違いましたアーデル村の半分近くが、精霊側の古い境界では森の内側に入っている。その事実が分かってから、ミオたちはすぐには村へ戻らなかった。まずは地図そのものを疑う必要があったからだ。人間側が間違っているのか。精霊側が間違っているのか。それとも、どちらも自分たちなりに正しく読み続けた結果、百年以上かけて境界の意味だけがずれてしまったのか。「国境って、もっと一本の線で決まっているものだと思ってました」リュネールへ戻る途中の宿で、ミオは卓いっぱいに広げた地図を見ながら言った。人間側の行政地図。精霊側の古地図。ザラが持ってきた条約の写し。さらに、森の中でセフィアとオルネから聞き取った根網の範囲をアルクが書き込んだ新しい図。同じ土地についての地図なのに、四枚とも微妙に違う。「一本の線で決める国もあるわよ」ザラが椅子へ深く座りながら答えた。「川、山、城壁、街道。目に見えるものを使えば比較的楽。でも、精霊森林みたいに『森の生きている範囲』そのものを領域と考える相手だと、話は面倒になる」「根が広がったら国境も動く?」ミオが尋ねる。セフィアが首を横に振った。「単純には動かない」「じゃあ、どう決まるんです?」「古い根網を基準にする」「古いって何年くらい?」「場所による」「また曖昧」「人間の数字だけが世界ではない」少し棘がある。しかし、以前ほど攻撃的には聞こえなかった。ミオも慣れてきた。「でも、人間側の役人が地図を作るな
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-10-07
Baca selengkapnya

第86話 私は初めて、料理を食べない相手と聖卓を作りました

第86話 私は初めて、料理を食べない相手と聖卓を作りました精霊側が「どうしても返してほしい」と求めている土地に、すでに一家族が暮らしている。その事実が分かった翌日、ミオは精霊森林の入口近くにある仮設の会議小屋で、エリュネの根網を示した地図を何度も見直していた。土地の中央には、小さな家の印がある。そこに住んでいるのは、カルド一家。夫婦と三人の子供。アーデル村へ最初に入った十二家族の一つで、四年前からそこに住んでいる。問題は、その家の真下にエリュネの古い根網が最も濃く残っていることだった。「森側としては、ここを再生域にしたいんですよね」ミオが確認すると、向かいに座るセフィアが頷いた。「エリュネの根がまだ生きている」「家があることで邪魔になってる?」「一部は」「根を掘り起こして別の場所へ移せない?」セフィアはすぐに首を横に振った。「できない」「完全に?」「根は、一本ずつ切り離して移せるものではない」「じゃあ、家をどかすしかない?」「森側から見れば」「人間側から見れば、そう簡単じゃない」「知ってる」以前なら、そこでまた「でも森が先だった」と返ってきたかもしれない。今のセフィアは、少しだけ変わった。納得したわけではない。それでも、人間側に暮らしがあることまで否定しなくなった。「カルド一家には、まだ話してないんですよね」「オスカーが話す予定」「私も一緒に行きます」「必要?」「必要かどうかは分かりません。でも、森側の希望を私が聞いてる以上、そこだけオスカーさ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-10-08
Baca selengkapnya

第87話 カエルは森に嫉妬しました

第87話 カエルは森に嫉妬しましたカルド一家の家の下に残る根網を測る作業は、その翌日から始まった。人間側からは辺境伯府の測量士が二人、アーデル村からはオスカーとカルド本人が立ち会い、精霊側からはセフィアと、根の流れを読める若い樹精霊が二人参加した。さらにアルクが記録役として入り、ザラは魔力の流れを測るために、朝から見慣れない金属棒や硝子板を地面へ並べている。ミオは一度、その光景を少し離れた場所から眺めてみた。人間。精霊。魔女。獣人の法務官。そして竜王。かなり妙な組み合わせだ。しかも、みんな同じ地面を見ている。少し前までは、同じ場所へ立つことすら嫌がっていたのに。「ミオ、そこ」カエルの声で我に返った。「え?」「根」足元を見ると、土から太い根が少し盛り上がっている。「危ない」「すみません、ぼーっとしてました」「見てた」「何を?」「みんな」「分かるんですか?」「顔で」まただ。最近、本当に顔へ出るらしい。ミオは少し恥ずかしくなった。「なんか、変な感じだなと思って」「嫌?」「逆です」ミオは改めて周囲を見る。測量士の一人が、セフィアへ何か聞いている。「この根は、どこまで続いている?」「地上から見えるところだけ測っても意味ない」「だから、地下の方向を教えてほしいんだ」「人間の線で書ける?」「書けるように教えてくれ」
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-10-08
Baca selengkapnya

第88話 森は謝罪を求めず、「伐らない場所を決めろ」と言いました

第88話 森は謝罪を求めず、「伐らない場所を決めろ」と言いましたオルネから届いた返答の中で、ミオがいちばん長く目を止めたのは、最初の一文だった。『謝罪は求めない。』その下には、もっと具体的な要求が続いている。今後、伐採してはならない区域を、人間にも分かる形で定めること。古樹や意思を持つ樹木については、精霊側だけが判別できる状態を改め、人間側と共有する印や記録を整備すること。境界付近では、伐採前に必ず精霊側へ確認を取ること。洪水などで標石や連絡地点が失われた場合、双方が再確認を行う仕組みを設けること。そして、エリュネの根網が最も濃く残る区域を再生域として確保すること。「謝ってほしい、じゃないんですね」ミオが言うと、隣で文書を読んでいたアルクが頷いた。「少なくとも、正式な要求としてはそうなっています」ザラが向かいの椅子へ座り、書状を軽く指で叩いた。「感情がないわけじゃないでしょうけどね。謝罪より、次に同じことを起こさない仕組みを優先したってことじゃない?」「セフィアさんはどう思います?」ミオが尋ねると、窓際に立っていたセフィアは少し考えてから答えた。「森の中では、謝ってほしい者もいる」「やっぱり」「エリュネと近かった精霊ほど強い。でも、オルネたちは、それを全体の条件にはしなかった」「どうして?」「人間が謝ったところで、エリュネは戻らないから」淡々とした声だったが、冷たくはなかった。「それより、次に別の誰かが切られないほうが大事だと考えた」ミオは文書をもう一度見た。少し前まで。この争いは、感情の衝突にしか見えなかった。森を切った。
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-10-08
Baca selengkapnya
Sebelumnya
1
...
789101112
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status