合同コレクションでの『白夜の翼』発表から三日が過ぎても、クロハ・グランドシアターの熱気は冷めやらぬまま、連日メディアを賑わせていた。毒石の罠を仕掛けた白河結衣は、現行犯逮捕ののち、殺人未遂および建造物侵入の容疑で東京地検へ身柄を完全に送検された。警察の取調べに対し、結衣は取り乱して喚き散らすばかりで、もはやかつての傲慢な令嬢の面影は微塵も残っていないという。だが、南青山の『BLANC』本店アトリエの奥。真白は世間の喧騒から切り離されたように、作業台に散らばった工具や研磨剤の拭き掃除に没頭していた。キュッ、キュッと、布巾を動かすたびに無垢材の机が艶を帯びる。「……相変わらず、祝勝会のシャンパンより雑巾の絞り汁の方が性に合っているようだな」低く澄んだ声が落ちてきた。顔を上げると、仕立ての良い漆黒のスーツを隙なく着こなした黒羽蓮が、扉の脇に立っていた。鋭利な彫刻を思わせる冷淡な美貌。だが、その漆黒の瞳の奥には、真白だけに向ける微かな熱が宿っている。「黒羽さん。もうお仕事は一段落したんですか?」「結衣の件と、背後にいたオフィディアンの残党への法的手続きは、顧問弁護士団が完璧に包囲した。あの女が二度と塀の外に出ることはない」蓮は無駄のない足取りで歩み寄ると、真白の手から布巾を奪い取り、作業台の上へ放り出した。そして、ポケットから取り出した清潔なハンカチで、真白の指先に残る微かな金属粉を丁寧に拭い去っていく。「いつまでも雑用に手を焼いてはいられないぞ。……客が来ている」「客……? 今日のアポイントはすべて断ったはずですが」「断れる相手ではない。宮内庁、および内閣官房参与の特使だ」蓮の言葉に、真白は息を呑んだ。国家の中枢に関わる機関が、なぜ立ち上げたばかりの新興ブランドである『BLANC』のアトリエを直々に訪れるのか。蓮に促され、真白は奥の応接室へと足を踏み入れた。そこには、濃紺のモーニングを纏った白髪の初老の男が、背筋を凍るほど真っ直ぐに伸ばしてソファに腰掛けていた。男の横には、漆塗りの重厚なアタッシュケースが置かれている。「初めまして、白河真白代表。内閣官房参与、ならびに式典準備委員会の東條と申します」東條と名乗った男は、立ち上がると深々と頭を下げた。その視線は極めて鋭く、真白の佇まい、手の平のタコ、そして作業着の襟元にいたるま
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-09-28 อ่านเพิ่มเติม