声をかけて数秒後、城門の脇にある小さな通用口らしき扉が開いた。てっきり巨大な城門がごごごごごごごと音を立てて開くと思ったので拍子抜けした。 中から出てきたのは豚の頭をした甲冑を着込んだ兵士だった。手には巨大なハルバードを持っている。 言葉は通じるだろうかと懸念していると、豚頭の衛兵はぺこりと頭を下げてきた。「お話は聞いております。遠いところからわざわざご苦労様です。本日はよろしくお願いいたします」「いえいえ、こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」 へこへこと頭を下げる南野と衛兵を見て、メルランスはこの世の終わりでも見たかのように口をぱくぱくさせた。 促されるまま通用口から中へと招かれ、南野は城内に足を踏み入れる。「ほら、なにぼうっとしてるんですかメルランスさん、行きますよ」「……あ、ハイ……」 完全にたましいが抜けている状態で、言われるがまま南野に付き添うメルランス。そのまま連れ立って魔王の城へと入っていった。 城内はいかにも魔王城といった風情で、石造りの冷たい床には血のように赤いカーペットが伸びている。ところどころに燭台の明かりがともっている以外は暗闇だ。 石の壁にはなにか得体のしれない赤黒い汚れがついていたり、かけられた絵画の目が動いたりしている。 ときおりすれ違うのは巨大なトカゲのような生き物だったり、鱗のついた緑の肌に真っ赤なドレスを着込んだ婦人(?)だったり、ものものしい武装をした兵士だったりと様々だ。 話は通っているのか、廊下を行く南野たちを見とがめるものは誰もいない。たまに向けられる会釈には頭を下げて返す。いつもの取引先の本社ビルと同じだ。 気楽な足取りの南野に対して、メルランスはおびえたように南野の安スーツのすそをつかんで離さない。 そうやってどれくらい進んだだろうか、豚頭の衛兵はやがて大きな扉の前で立ち止まった。「魔王様の謁見の間です。どうぞ、ご無礼のないように」「それはもう」 南野はにっこりと笑って頭を下げる。衛兵は別の兵士に何事か告げると、その兵士が扉を開く。 巨大な石の扉が重々しく開くと、そこは広大な広間になっていた。蝋燭の火が揺らめき、玉座につくものの影を踊らせる。 『それ』が魔王なのだろう。 身の丈は三メートルほどだろうか、とにかく大きかった。見た目はタロットカードの死神に似ていて、骸骨
آخر تحديث : 2026-09-05 اقرأ المزيد