「さあて、まずは目的のものを手に入れるとしましょうか。ま、安心してよ。無駄にお金使わせる気はないから」「どういうことですか?」「まあまあ、ちょっとした値引きのテクニックだよ。あれをこうしてね……」 メルランスが南野に耳打ちする。聞いた『テクニック』とやらに南野は目を剥いた。「そんな詐欺まがいのこと……!」「いやなら好きなだけお金使えばー?」「……やらせていただきます」 今にも血の涙が出てきそうだ。 こっちに来てからというもの、彼女の尻に敷かれっぱなしの気がする。見知らぬ世界を案内してもらっているのだから仕方ないかもしれないが、ちょっと不本意だ。「ほら、あそこにキャラバンの馬車がある。ああいうところは道すがら冒険者からマジックアイテムを買い付けたりしてるからね、ちょっと見てきなよ」 南野の腕を引き、メルランスは大きな店を開いている天幕へと向かった。彼女は天幕の中へは入らず外で待っている。 大きな天幕の中では数人の商人たちが商談中で、だれもかれもいかにも海千山千のあきんどたちといった風情だ。 並んでいる品物を見ていると、小太りの中年商人が揉み手をしながら寄ってきた。「なにかお探しですか?」「いえ、ちょっと寄ってみただけです」 基本テクニックその1。目的のものがあっても口には出さない。吹っ掛けられる可能性がある。 商人に付きまとわれながらあちこちの品物を見て回っていると、ふと赤い色が目に入った。『赤』というと苦い思いになるが、それは確かに頭巾だった。けものの耳をかたどった飾りがついている。「これなんていいな。かわいい。娘へのプレゼントにいいかもしれない」 娘なんていないけど。噓も方便だ。「これはお目が高い!」 商人は声を弾ませてずいっと近寄ってきた。商品を手に取って見せてくる。「これはですね、動物の声が聞こえるといういわくつきのマジックアイテムでして。遠く砂漠のダンジョンから帰ってきた冒険者から買い付けたものです」「ふぅん、本物なんですか?」 基本テクニックその2。なんでもいいからケチをつけろ。 しかしさすがプロ、気分を害した様子をおくびにも出さず、商人は大きくうなずいた。「魔力反応はありますから、何らかのマジックアイテムであることは確かです。この耳! いかにも聞こえそうでしょう?」「それだけじゃなぁ」「そう言わずに
آخر تحديث : 2026-09-27 اقرأ المزيد