王都へ戻る道は、行きよりも重い空気に包まれていた。城門をくぐると、街の様子は明らかに変わっていた。人々は道端で寄り集まり、声を潜めて何かを噂し合い、リーゼロッテたちの一行が通り過ぎると、ぴたりと口をつぐんで、探るような視線を投げかけてきた。「辺境伯夫人が戻られたぞ」「邪祟を連れて帰ってきたって話、本当かしら」「結界の亀裂、あの方が王都を離れている間には広がらなかったっていうのに」その最後の一言に、リーゼロッテは思わず足を緩めた。エルフリーデがすぐ隣で、聞こえなかったふりをするように、視線を前に固定したまま歩みを進めた。宮中に入ると、宰相が険しい表情で出迎えた。「陛下がお待ちです」御書房には、以前より人数が増えていた。国王、宰相、そして――大司祭。教廷の裁定権が分割されて以来、御前に呼ばれることの少なくなっていたはずの彼が、今日は上座近くに座を占めていた。「辺境伯夫人」大司祭が先に口を開いた。声には慇懃さが戻っていたが、その奥に刃のような鋭さが潜んでいた。「あなたが王都を離れている間に、護国結界に三本の亀裂が入りました。これは、単なる偶然でしょうか」「大司祭様は、偶然ではないとお考えのようですね」リーゼロッテは静かに応じた。「聖女制度が三百年守ってきたこの結界が、あなたに認証裁定権の一部を渡したその直後から揺らぎ始めた。民の間では、すでにこう囁かれております――帰元の力は、緋色の巫女の力などではなく、荊眸の毒そのものなのではないか、と」御書房の空気が張り詰めた。エルフリーデが一歩前に出た。「証拠もなく、そのような噂を放置しているのは、どちらの側だ」「証拠なら、これから示していただければよろしい」大司祭は動じなかった。「陛下、僭越ながら提案がございます。結界の亀裂を塞ぐには、聖女の力による浄化が必要です。辺境伯夫人に、その浄化を行っていただき、結界が安定するかどうかを、この目で確かめさせていただきたい」国王は眉をひそめた。「それは、また試練を課すということか」「試練ではございません、証明の機会です」大司祭の口調は穏やかだったが、リーゼロッテには、その言葉の裏にある意図が透けて見えた。もし浄化がうまくいかなければ、それこそが「邪祟である証拠」として使われる。もし力を使うこと自体を拒めば、それもまた「後ろめたさの証」とされるだろう。「私は
آخر تحديث : 2026-09-29 اقرأ المزيد