Todos los capítulos de じじばばにゃんこと異世界奇譚: Capítulo 11 - Capítulo 20

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蒼き風の草原

爆煙が、 夜空へ広がっていた。 ヴァルグレイドの魔力砲が逸れ、 遥か山脈の向こうで爆発した余波は、 今も大地を震わせている。 焦げた草原。 吹き荒れる熱風。 そしてその中心で。 トシオは、 「なんか派手じゃのぉ」 みたいな顔で空を見上げていた。 「じーちゃん基準で話さないで!?」 タマの叫びが草原へ響く。 カリヴァ=ドラグニルは、 額を押さえていた。 理解が追いつかない。 国家兵器級の魔力砲を、 拳で弾き飛ばすなど、 歴史上の竜王ですら不可能だ。 しかも本人に、 その自覚がまるでない。 「……本当に何者なんだ、 あの男は」 竜人兵の一人が、 青い顔で呟いた。 その時。 ゴォォォ…… 空中要塞ヴァルグレイドが、 ゆっくり後退を始める。 ミーコが目を細めた。 「退いた……?」 「いや」 カリヴァは空を睨む。 「様子見だろう」 巨大要塞は、 一定距離を保ちながら旋回していた。 まるで。 “観察”しているように。 「気味悪いのぉ」 トシオがぼそりと呟く。 ミツコは、 そんなトシオの服についた土を払っていた。 「また破れとるよぉ」 「おぉ、ほんとじゃ」 「ほんとじゃじゃないの」 夫婦の空気が、 あまりにも自然すぎて、 周囲の緊張感がおかしくなる。 タマは呆れ顔。 ユキは少し安心したように笑う。 だがミーコだけは、 まだ空を見ていた。 その横顔には、 王女としての影が残っている。 カリヴァは、 そんなミーコへ静かに声を掛けた。 「アクアリア王女」 ミーコの肩が揺れる。 少しだけ間があってから、 彼女は振り返った。 「……何でしょう」 「ここは既に危険地帯だ。 ヴォルグラード帝国領まで同行願いたい」 竜人兵たちが頷く。 当然の提案だった。 今のミーコは、 世界中から狙われている。 だが。 「嫌じゃ」 トシオが即答した。 全員が固まる。 「……は?」 カリヴァの目が点になる。 トシオは腕を組んだ。 「知らん人ばっかりの所は疲れる」 「子供みたいな理由で断らないでください!!」 タマが
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竜人族の国境…

朝霧が、草原を覆っていた。昨夜の焚き火は、まだ小さく燻っている。空は薄青く、遠くで鳥の声が響いていた。そして。「……ぬくい」タマは、完全にトシオの腹へ埋まっていた。大の字で寝転ぶトシオ。鍛え抜かれた胸板。その上へ、タマが枕みたいに乗っている。「タマ、潰れとるよぉ」ミツコが笑う。ユキは、ミツコの膝へ寄りかかりながら、静かにお茶を飲んでいた。ミーコだけは少し離れた場所で、空を見ている。その横顔には、まだ不安が残っていた。ヴァルグレイド。王国。内乱。故郷はもう、帰れる場所ではない。その現実が、少しずつ胸へ重く沈んでいた。「眠れんかったんか」後ろから、トシオの声。ミーコは少し肩を揺らした。「……少し」トシオは、ミーコの隣へ座る。草を踏む音。静かな朝。「空見とると、考え事増えるのぉ」「……はい」しばらく沈黙。だが不思議と、気まずくはなかった。トシオは空を見たまま、ぼそりと呟く。「わしは海じゃった」「海?」「考え事したい時、よう見とった」ミーコは少し目を細める。トシオは続けた。「でも考えても、腹は減るんじゃ」ミーコが吹き出した。「なんですかそれ」「生き物じゃからのぉ」その言葉に、ミーコの胸が少し軽くなる。王女。責務。国。色んなものがある。でも。腹は減る。笑うこともある。それだけで、少し救われる気がした。その時だった。ゴォォォ……遠くから、重い羽音が響く。カリヴァが即座に立ち上がった。「来るぞ」竜人兵たちが武器を構える。空気が一変した。タマも飛び起きる。ユキは、ミツコの後ろへ下がった。霧の向こう。巨大な影が現れる。一つ。二つ。三つ。飛竜。銀灰色の鱗。巨大な翼。長い尾。広げた翼だけで、小屋ほどの大きさがある。そしてその背には、重装備の竜人騎士たち。先頭の飛竜が、地響きと共に着地した。ドォン!!風圧で、草原が大きく揺れる。そこから降りてきたのは、壮年の竜人だった。黒銀の角。鋭い目。深い傷跡。全身を覆う黒鉄の鎧。そして。身の丈ほどある巨大な竜槍。周囲の竜人兵たちが、一斉に膝をつく。「国境守護将、グランヴェル様!」空気が張り詰める。圧。それだけで、強者だと分かる
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竜人の砦…

飛竜が、静かに鼻を鳴らす。巨大な頭を、トシオへ擦り付けたまま、すっかり大人しくなっていた。竜人兵たちは、未だ呆然としている。瘴気汚染を受けた飛竜は、通常なら処分するしかない。正気へ戻る事例など、歴史上存在しなかった。だが。トシオは普通に、飛竜の顎をぽりぽり掻いている。「犬っころみたいじゃのぉ」「犬扱いするなよじーちゃん」タマが苦笑しながらツッコむ。飛竜は少し不満そうに鼻を鳴らした。「わ、分かってるのこれ?」「賢いんじゃろ」「いや絶対普通じゃないって……」タマが困惑する横で、カリヴァは乾いた笑みを浮かべた。「あはは……」もう何を驚けばいいのか、分からなくなっていた。その時。グランヴェルが、静かに槍を持ち直す。「……国境砦まで同行願いたい」低い声。だが敵意は無かった。カリヴァも頷く。「ガルディアなら安全です」ミーコは、少しだけトシオを見る。トシオは飛竜を撫でたまま、ぼそりと呟いた。「飯あるか?」「あります」「行く」「そこ即決なんだ……」タマが呆れたように笑う。ミツコは、そんなやり取りを見ながら、買い物かごを抱え直した。「お野菜あると嬉しいねぇ」グランヴェルが、僅かに口元を緩める。「……変わった人族だ」その言葉へ、ミーコは小さく頷いた。どこか誇らしげだった。──数時間後。巨大な岩山が見えてくる。黒鉄の城壁。無数の見張り塔。飛竜用の巨大滑走路。山へ食い込むように築かれた要塞。ヴォルグラード帝国国境砦、《ガルディア》。空気そのものが強かった。戦うための街。それが一目で分かる。「うおぉ……」タマが目を輝かせる。「でっか!!」ユキは少し怯えながら、ミツコの袖を掴んでいた。その時だった。「グランヴェル守護将閣下だ!!」門の上から声が響く。砦が一気に慌ただしくなる。兵士たちが整列。巨大門が開いた。重々しい音が響く。だが。空気が変わったのは、トシオが中へ入った瞬間だった。ざわ……兵士たちがざわめく。視線。困惑。そして。砦内にいた飛竜たちが、一斉に頭を下げた。沈黙。グランヴェルが目を細める。「……やはりか」カリヴァは遠い目をした。「あはは……もう隠せる段階じゃないですねこれ……」トシオ本人だけ、まるで気
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竜人達との…

ガルディア砦の中庭には、夕暮れの赤い光が差し込んでいた。巨大な飛竜たちは、石造りの飼育場で翼を休めている。兵士達の怒号。鍛錬の音。鉄と火の匂い。そこはまさしく、“戦う者達の国”だった。だが。その一角だけ、空気がおかしかった。「……うまい」竜人兵の一人が、呆然と呟く。「なんだこれは……」別の兵士も、木椀を持ったまま固まっていた。その中心では。ミツコが、大鍋を前ににこにこしている。「おかわりあるよぉ」「「「お願いします!!」」」即答だった。タマが吹き出す。「順応早っ」豚汁。それは、レヴァナスタシアには存在しない料理だった。味噌。出汁。根菜。肉。その全てが、竜人族にとって未知。だが。疲れた身体へ、異常なほど染み渡った。グランヴェルですら、静かに椀を見つめている。「……温かい」その呟きは、どこか不思議そうだった。ミツコは笑う。「寒い日は汁物が一番やねぇ」その横では。フィルニアが、完全に夢中になっていた。「うまっ!!なにこれうまっ!!」すごい勢いで食べている。タマが呆れる。「フィルニア、勝負したいんじゃなかったの?」「後だ後!!」「完全に胃袋掴まれてる……」ユキがくすっと笑った。ミーコは、そんな光景を静かに見つめていた。戦うための国。恐れられる竜人族。なのに今、みんな笑っている。それが少し、嬉しかった。その時だった。ぐぅぅぅ……静かな中庭へ、低い音が響く。沈黙。全員の視線が、トシオへ集まった。トシオは真顔。「足りんのぉ」タマが吹き出した。「じーちゃんが一番食うんかい」ミツコは慣れた様子で、追加の鍋を火へ掛け始める。「いっぱい作っといて良かったぁ」その横で。カリヴァは、じっと買い物かごを見ていた。古びた籠。どこにでもありそうな、ただの生活用品。だが。中から出てくる量が、明らかに異常だった。野菜。味噌。肉。布。鍋。底が見えない。しかも、魔力反応が一切ない。「……本当に何なんですか、そのかご」カリヴァが恐る恐る聞く。ミツコは、不思議そうに首を傾げた。「買い物かごよぉ?」「いやそれは見れば分かります!」タマがツッコむ。トシオは普通に答えた。「便利じゃぞ」「説明が雑っ」周囲
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暴竜…

夜のガルディア砦を、警鐘が鳴り響いていた。ゴォン!!ゴォン!!ゴォン!!兵士達が走る。飛竜騎士達が空へ上がる。怒号。悲鳴。そして。グォォォォォォッ!!獣の咆哮が、砦全体を震わせた。「西外壁だ!!」「避難急げ!!」砦の空気が一変する。先程まで、豚汁を囲んで笑っていた空間とは思えない。だが。トシオ達だけは、どこか落ち着いていた。トシオは、のそのそ立ち上がる。「行くかのぉ」「いやもっと緊張感持とうよじーちゃん」タマが慌てる。だがその横で、フィルニアは既に武器を担いでいた。赤い目が、獰猛に輝いている。「久々に暴れられそうだな!!」「駄目だ」グランヴェルが即座に否定する。「なんでだよ叔父貴!!」「お前は突っ込みすぎる」「それの何が悪い!!」「全部だ」カリヴァが頭を抱えた。「あはは……始まった……」ミツコは、慌ただしい周囲を見ながら、小さく呟く。「怪我人いっぱい出そうやねぇ……」その言葉に、グランヴェルの表情が曇る。飛竜暴走。それは、竜人族にとって最悪の災害だ。暴れた飛竜は、敵味方を区別しない。しかも。最近の個体は、異常に凶暴化している。原因不明。瘴気汚染。世界各地で起き始めた異変。嫌な予感しかしなかった。──西外壁。そこは既に、戦場だった。巨大な飛竜が、狂ったように暴れている。黒い霧。赤く濁った瞳。鱗の隙間から、瘴気が漏れ出していた。兵士達が吹き飛ばされる。石壁が砕ける。飛竜騎士達も、近づけない。「まずいぞ!!」「抑えきれん!!」飛竜が咆哮する。その瞬間。ドォォォン!!衝撃波が、砦の一部を吹き飛ばした。ユキが震える。ミーコが庇うように前へ出た。だが。フィルニアだけは、目を輝かせていた。「すっげぇ……」「感想が戦闘狂なんよ……」タマが引いている。その時だった。暴走飛竜が、兵士達へ向かって突進する。誰も間に合わない。だが。「ほれ」トシオが、飛竜の前へ立った。兵士達が絶句する。飛竜の巨体。巨大な牙。狂気の咆哮。それを前にしても、トシオはいつも通りだった。飛竜が突っ込む。その瞬間。トシオが、片手で鼻先を押さえた。ドゴォン!!大地が割れる。だが。止まった。巨大な飛竜が、
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伝承…

昼間の暴走騒ぎが嘘みたいに、飛竜達も落ち着きを取り戻している。石壁の上では、夜番の兵士達が見張りを続けていた。焚き火の火が、ゆらゆら揺れている。その傍で。フィルニアは、むすっとした顔をしていた。「……肉少なかった」「まだ言ってるの?」タマが呆れる。「成長期なんだよ俺様は!」「野菜も食べなよ」「うぐっ」ミツコの言葉が刺さる。ユキが小さく笑った。その時だった。砦の中央広場から、低い鐘の音が響く。ゴォン……ゴォン……重く古い音。空気が変わる。兵士達が一斉に動きを止めた。カリヴァが、静かに立ち上がる。「……集会鐘?」グランヴェルの表情も険しくなる。「こんな時間にか」ミーコが不安そうに周囲を見る。すると。一人の老竜人兵が、ゆっくりこちらへ歩いてきた。白い角。長い髭。深い皺。かなり高齢だ。だが。背筋だけは、槍みたいに真っ直ぐだった。兵士達が頭を下げる。「長老補佐官殿!」老竜人は、静かに頷いた。そして。真っ直ぐ、トシオを見る。その目は。恐怖でも敵意でもなく。“確認”だった。「……間違いない」掠れた声。周囲の空気が張り詰める。老竜人は、ゆっくり膝をついた。それを見て、周囲の兵士達が凍り付く。長老補佐官。帝国古参。その人物が、他者へ膝をつく。ありえない光景だった。「お、おい……」タマが困惑する。ミツコも驚いていた。だが。老竜人は、静かに頭を垂れる。「始まりの民よ」その瞬間。空気が変わった。フィルニアの表情が消える。カリヴァが息を呑む。グランヴェルですら、目を細めていた。ミーコは、静かに目を伏せる。やはり。竜人族にも、伝承が残っていた。老竜人は、震える声で続けた。「古き詩に記されております」そして。静かに、語り始めた。むかしむかし。まだ世界が幼かった頃。空を裂く竜も。森を統べる獣も。海を渡る翼も。皆、争っていたと言われています。血を流し。火を吐き。大地は、泣き続けていました。そんな時。西の海から、二人の旅人が現れました。大きな背中をした男と。優しい手をした女です。男は、怒れる竜を殴り飛ばしました。女は、泣いていた子供達へ、温かなスープを配りました。そして二人は、争う種族
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竜王の使者…

飛竜達の鳴き声。兵士達の怒号。鍛錬場から響く金属音。だがその空気の奥には、どこか張り詰めたものが混ざっていた。昨夜の集会鐘。老竜人による“始まりの民”の宣言。そして、空へ現れ始めた黒い異変。兵士達は平静を装っている。だが。不安は確実に広がっていた。そんな中。ガルディア砦の食堂だけは、妙に平和だった。「おかわり!!」フィルニアが木椀を掲げる。朝から三杯目だった。タマが呆れる。「朝から食いすぎじゃない?」「成長期なんだよ俺様は!!」「昨日も聞いたそれ」ミツコは笑いながら、炊き立ての米をよそう。「いっぱい食べんとねぇ」その横では。トシオが焼き魚をほぐしていた。炭火で焼かれた川魚。香ばしい匂いが広がる。竜人兵達が、ちらちらこちらを見ていた。完全に食堂へ通うようになっている。「……あの白いの何だ」「米らしいぞ」「うまいのか?」「知らん……」こそこそ話す兵士達へ、ミツコが笑顔を向けた。「食べる?」数秒後。「「「お願いします!!」」」即落ちだった。タマが吹き出す。「竜人族ちょろくない?」「飯は正義だ」フィルニアが真顔で頷く。グランヴェルは、深くため息をついた。「お前は少し王女らしくしろ」「腹減るだろ」「そういう問題じゃない」だが。どこか呆れきれない。それを見ていたミーコは、少しだけ微笑んでいた。最初は恐ろしかった。竜人族。戦いの種族。だが今は違う。笑う。食べる。騒ぐ。自分達と変わらない。そんな空気が、少し嬉しかった。その時だった。──ゴォォォォォッ!!突然。外から、飛竜の咆哮が響いた。兵士達が一斉に立ち上がる。グランヴェルも即座に表情を変えた。「敵襲か!?」だが。次の瞬間。見張り兵の叫びが響く。「伝令飛竜!!帝都からです!!」空気が変わる。グランヴェルが眉をひそめた。「……早いな」フィルニアが、露骨に嫌そうな顔をする。「あー……絶対面倒なやつだ」「お前は少し黙っていろ」「なんでだよ叔父貴」外では。巨大な飛竜が、砦中央へ降下してきていた。漆黒の鱗。赤い装甲。帝国紋章。そして。その背に立つ一人の男。銀の長髪。黒い角。細身。だが。異様な威圧感を纏っていた。兵士達が一斉に膝をつく。「帝都
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帝都への旅路…

ガルディア砦を出発したのは、朝霧が山肌を覆う頃だった。巨大門がゆっくり開く。重々しい音が、岩山へ反響していく。砦の兵士達が整列し、見送りに立っていた。その中央では。グランヴェルが腕を組み、険しい顔で立っている。「……本当に行くのか」トシオは、荷車へ魚を積み込みながら頷いた。「呼ばれたしのぉ」「理由が軽い」タマが呆れる。だがミツコは、のんびり笑っていた。「お魚いっぱい貰ったしねぇ」今回の旅路。グランヴェルが、大量の保存食を持たせてくれていた。干し肉。乾燥野菜。果物。そして。大量の魚。完全にミツコ対策だった。フィルニアが、じーっと荷車を見ている。「……魚」「食べる?」ミツコが聞く。「食う!!」即答だった。グランヴェルが、深くため息をつく。「お前は帝都へ戻る自覚を持て」「飯は大事だろ」「否定はせんが」その横では。セレスが、静かに飛竜の装備確認をしていた。相変わらず無表情。だが。魚が気になっているのが、少しだけ分かる。フィルニアがニヤニヤしていた。「セレスー」「なんですか」「魚食いたい顔してる」「してません」「してる」「してません」タマが吹き出した。「分かりやすっ」セレスの眉が僅かに動く。カリヴァが、遠い目をしていた。「あはは……帝都側の人達まで崩れてきた……」ミーコは、そんなやり取りを見ながら、少しだけ笑っていた。最初は不安だった。だが今は違う。気付けば。この旅が、少し楽しくなっていた。──数時間後。山道へ入る。ガルディア周辺は、岩山と断崖が続く地帯だった。上空では、飛竜騎士達が護衛につく。竜人族領内とはいえ、最近は魔物も異常化している。警戒は必要だった。「帝都ってどんな所なん?」タマが聞く。フィルニアが、胸を張った。「でっかいぞ!!」「雑」「空飛ぶ橋あるし!」「それはすごそう」「あと飯屋いっぱいある!!」「結局そこなんだ」ミツコがくすっと笑う。だが。グランヴェルだけは、少し真面目な顔をしていた。「ヴァルグランは、帝国最大都市だ」「飛竜騎士団本部」「竜王城」「各氏族の居住区」「巨大市場」「全てが集まっている」その声には、誇りが滲んでいた。ミーコは、少し驚いていた。竜人
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黒霧の主…

森の奥で。何かが笑った気がした。クスクス……乾いた声。子供みたいな笑い方。なのに。兵士達の背筋へ、冷たい汗が流れていた。誰も動けない。風も止まっていた。木々すら、息を潜めているみたいだった。巨大な熊型魔獣だけが、低く唸っている。グルルル……黒霧に覆われた巨体。額に浮かぶ、黒い“穴”の紋様。それが。ドクン。脈打った。まるで、心臓みたいに。セレスが、ゆっくり剣を抜く。「……総員警戒」静かな声。だが。張り詰めていた。フィルニアですら、珍しく笑っていない。「なんだよ……この空気」タマが、無意識に耳を伏せる。ユキは、ミツコの袖を掴いていた。ミーコも、周囲へ水魔法を展開する。だが。敵が見えない。気配だけが、森の奥を這っていた。その時。トシオが、静かに前へ出る。誰も止めなかった。止められなかった。トシオは、熊型魔獣ではなく。その奥を見ていた。「……おるのぉ」クスクス……返事みたいに、また笑い声が響く。その瞬間だった。──ギャァァァァァァッ!!熊型魔獣が咆哮する。衝撃波。木々が揺れる。兵士達が吹き飛ばされた。「ぐぁっ!?」「来るぞ!!」グランヴェルが怒鳴る。熊型魔獣が突進した。地面が揺れる。瘴気が噴き出す。まるで、黒い嵐だった。フィルニアが飛び出す。「どけぇぇぇッ!!」大剣が唸る。竜人族特有の怪力。岩すら砕く斬撃。──ドゴォォン!!熊型魔獣の肩へ直撃する。だが。止まらない。「なっ!?」フィルニアの顔色が変わる。黒霧が、傷口を覆っていく。再生していた。「冗談だろ!?」カリヴァが叫ぶ。普通の魔獣ではない。瘴気が、肉体そのものを動かしている。その時だった。巨大な腕が、フィルニアへ振り下ろされる。「フィルニア!!」グランヴェルが飛び出す。だが。間に合わない。その瞬間。──ドン。トシオが、片手で止めていた。沈黙。熊型魔獣の巨大な腕。それを。若い黒髪の男が、普通に受け止めている。地面が陥没する。衝撃波で木々が揺れる。だが。トシオだけ、動かなかった。フィルニアが、ぽかんと固まる。「……毎回おかしくない?」タマが頭を抱えた。「もう今更だけどね!?」熊型魔獣が咆哮する。黒
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ヴァルグラン…

森を抜けた頃には、空が赤く染まり始めていた。長く続いた黒霧地帯。瘴気魔獣との戦闘。空間裂け。あまりにも異常な出来事だった。だが。旅そのものは止まらない。セレスの判断で、一行は予定通り帝都へ向かう事になった。「……本当に大丈夫なのか」カリヴァが、疲れた顔で呟く。飛竜騎士達も、明らかに神経を張っていた。空間裂けなど、帝国史にも殆ど記録が無い。しかも。“目”がこちらを見ていた。あれは、絶対に普通ではない。グランヴェルは、黙ったまま前を歩いている。その横で。フィルニアだけは、妙に元気だった。「いやぁ!!久々に暴れた!!」「お前ほんと元気だな……」タマが呆れる。フィルニアは、けろっと笑った。「竜人族だからな!!」「便利な言葉だなそれ」その時だった。ミツコが、荷車をごそごそ漁り始める。フィルニアの目が光る。「飯!?」「おやつやねぇ」「最高かよ!!」数秒後。一行は普通に、街道脇で休憩していた。グランヴェルが、頭を抱えている。「……さっきまで世界の危機だったのだが」「腹減るだろ?」フィルニアが真顔で答える。「お前は黙れ」セレスは、静かに干し魚を食べていた。もう誰もツッコまない。完全に馴染み始めている。タマがニヤニヤする。「セレス、絶対魚好きだよね」「違います」「でも今三枚目だよ?」「……違います」耳だけ少し赤い。フィルニアが爆笑した。「お前ほんと分かりやすいな!!」ミツコが、楽しそうに笑っている。その様子を見ながら。ミーコは、静かに思っていた。こんな旅になるなんて、想像もしていなかった。異世界へ来てから。逃げて。怯えて。戦って。失う事ばかり考えていた。なのに今は。笑っている。誰かと、同じご飯を食べている。それだけで、少し救われる気がした。その時。上空から、飛竜騎士の声が響く。「見えたぞ!!帝都ヴァルグランだ!!」空気が変わる。一行が顔を上げた。そして。タマが絶句する。「……は?」遥か前方。山脈そのものへ、巨大都市が築かれていた。黒鉄の外壁。何重にも重なる巨大城壁。空を飛ぶ飛竜達。断崖へ張り付く街並み。巨大な吊橋。そして。山頂。そこには。雲を貫く巨大城が存在していた。夕陽を浴びた
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