エロワーズは必死にタナーを押し返そうとしたが、彼の熱いキスのせいで全身の力が抜け落ちてしまっていた。タナーにとって、彼女のその弱々しい抵抗は拒絶というよりも、むしろ甘い誘惑のようにしか感じられなかった。タナーは再び彼女の唇を奪うと、彼女の片脚を強引に持ち上げ、己の腰へと絡みつかせた。まさにその時、誰かがトイレへと足を踏み入れてきた。個室の中から漏れ聞こえる艶めかしい音を耳にし、その人物はクスリと小さく含み笑いを漏らすと、大急ぎでその場を立ち去っていった。猛烈な羞恥心に襲われ、エロワーズはタナーの胸元へと顔を埋めた。「タナー、お願いだから離して……もうやめて……っ」彼女は彼の顔を正視することもできず、必死に懇願した。しかし、その言葉もタナーには全く効果がなかった。彼は彼女の耳たぶを優しく噛むと、からかうようなトーンで低く囁いた。「離せ、だと? 数日前の夜、君が言っていた言葉とはまるで違うようだがね。俺の記憶が正しければ、あの時の君は『もっと、もっと深く、強く頂戴』とおねだりしていたはずだが?」「っ……!」エロワーズの顔が一瞬で爆発したように真っ赤に染まった。こんな公の場所で、あんな恥ずかしい夜の密事の記憶を引き合いに出して自分を愚弄してくるなんて、信じられなかった。「タナー、離さないなら大声で叫ぶわよ……!」彼女は必死に脅した。「いい度胸だ。叫べるものなら叫んでごらん」彼は不敵な笑みを浮かべて言い返した。悔しさに歯噛みしながら、エロワーズはタナーの身体を強く押し、何とかしてその腕から逃れようともがいた。しかし、タナーに彼女を放す気など毛頭なかった。彼が再び彼女の唇を塞ごうとしたその瞬間、個室の外からザンダーの声が響き渡った。「グティエレス先生? 大丈夫ですか?」エロワーズは大慌てで乱れた衣服を整えると、ハッキリとした声で応答した。「大丈夫です、ハーヴェイ様。すぐに向かいますわ」彼女は素早く心を静めると、タナーの顔を見ようともせず、そのまま立ち去ろうとした。だが、タナーが二人の間の出来事をこのまま有や無やで終わらせるつもりがないのは明白だった。彼が引き止める言葉を口にするより早く、エロワーズは冷酷なトーンで言い放った。「あの夜起きたことは、単なる過ち(誤解)に過ぎませんわ。あんなことは最初から起きるべきではなかったのですから、ア
最終更新日 : 2026-10-27 続きを読む