晴音が個室に足を踏み入れた瞬間、全員の視線が彼女に集まった。大きく巻いた髪に、鮮やかな赤のワンピース。仕事に疲れきった社員たちの中で、彼女だけが別世界の住人のように華やいで見える。まっすぐ晃人のもとへ向かう晴音を見て、隣に座る田中さんが目を輝かせた。「来た、来たわよ……!まさかこんなドラマみたいな再会を目の前で見られるなんてね」ピコン、とスマホが鳴った。見ると、「はるあき推し会」というLINEグループに追加されていた。晃人を除く支社の全員が入っているらしい。田中さんがスマホを手にすると、グループには続きを催促するメッセージが次々と流れた。この支社で最も社歴が長い彼女なら、昔のことも知っていると思われているのだ。私はできるだけ存在感を消しながら、画面から目を離せずにいた。田中さんは二人のほうをそっと窺うと、ものすごい勢いでメッセージを打ち始めた。【茅島さん、3年前に本社からうちの支社へ研修に来てたの。そのとき柏木支社長といい雰囲気だったんだって】【若くして支社長になったエリートと、華やかで勝ち気な社長令嬢。当時はみんな、二人をこっそり推してたのよ】【でも、すぐに茅島さんが海外留学したから終わったと思ってた。まさか今も連絡を取り合ってたなんてね】私が入社した頃には、晴音はすでに留学していた。晃人からそんな話を聞いたこともない。私はグループにそっと書き込んだ。【茅島さんほどの人なら、ずっと独身だったとは限らないんじゃないですか】【柏木支社長だって、もういい年ですし。3年もたっているなら、どちらかが結婚していてもおかしくないですよね】田中さんは笑いながら首を振り、私にだけ聞こえる声で囁いた。「それだけじゃないの。二人、高校の同級生だったらしいわよ。紗世ちゃんはまだ若いから分からないでしょうけど、初恋の相手って男には特別なのよ。手に入らなかった相手ほど、忘れられないものだから」彼女は軽く顎を上げ、みんなに後ろを見るよう合図した。その視線を追うと、晃人が晴音の腰を支えていた。寄り添う二人は、どこから見てもお似合いだった。昨夜まで晃人の指にあった結婚指輪は、今はない。胸の奥が詰まり、痛んだ。田中さんに気づかれる前に、私は薬指からダイヤの指輪を抜き、慌ててバッグへ押し込んだ。昨日受け取っ
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