竹取物語のファンフィクションで主人公とヒロインの成長を描いた作品なら、『月の雫に映る君』が圧倒的におすすめだ。かぐや姫と彼女を見守る翁の養父的な関係を軸に、人間らしい弱さと強さが交互に光る展開が胸を打つ。特に竹林で過ごす幼少期のエピセードが、後の別れの悲しみをより深く感じさせる。作者は古典のテキストを巧みに再解釈しつつ、現代的な情感を宿らせている。竹取物語のファンなら誰もが共感できる普遍性と、オリジナリティのバランスが絶妙なんだ。
この作品の真骨頂は、かぐや姫が月へ帰る決意をするまでの心理描写にある。従来の物語では省略されがちな「人間界への未練」と「月の民としての使命」の狭間で葛藤する様子が、詩的な比喩を交えながら丹念に綴られている。五人の
貴公子とのエピソードもそれぞれに意味付けされ、彼女の人間的な成長を際立たせる仕掛けになっている。最後の別れの場面では、翁の「もう一度竹を取りにいこう」という台詞に、読んだ後もずっと胸が熱くなる。