息子が死んだ後、私たちは離婚した件私――石川綾子(いしかわ あやこ)の息子、石川健一(いしかわ けんいち)は死んだ。
狭く、逃げ場のない学校のトイレの個室で、頭を殴られ、命を落とした。
校長である夫・石川孝信(いしかわ たかのぶ)が現場に駆けつけたとき、彼が真っ先に抱きかかえたのは、倒れていた我が子ではなかった。
健一を傷つけた加害者――かつての初恋の相手・山本和美(やまもと かずみ)の息子、山本智也(やまもと ともや)を腕に抱き、彼はそのまま救急車に乗り込み、私の前から姿を消した。
健一は、死の直前、私を慰めた。
「ママ、泣かないで。パパが僕を信じなくても、全然悲しくないよ。
ママが信じてくれれば、それで十分だから……」
葬儀の日、私は孝信に電話をかけた。
返ってきたのは、怒号だった。
「智也の腕はもう少しで骨折するところだった。全部、お前の息子がやったことだ。これ以上俺に絡むなら、帰ったら――二度と逆らえないようにしてやる」
――お前の息子。
私は、すでに血の流れが止まった健一の額を見つめ、静かに目を閉じた。
そう。
健一は、私の息子だ。
だから、孝信。私の息子が死んだその瞬間から、あなたと私を結ぶものは、何ひとつ残っていない。