手術を99回延期された私、ついに復讐の鬼と化すグリオーマを患い、私の命は風前の灯火だった。
だが幸運なことに、夫の桐生蒼介(きりゅう そうすけ)が天才脳外科医だ。
国内でこの手術を成功させられるのは、彼しかいなかった。
にもかかわらず、蒼介は私の手術を99回も強引に延期したのだ。
そのすべてが、白石莉乃(しらいし りの)の「頭痛」を理由とする中断だった。
腫瘍は想像を絶するスピードで肥大化していく。
99回目のこと。骨の髄まで響くような癌の痛みに耐えかね、私は膝を突いて彼に哀願した。
「蒼介、もうこれ以上延期しないで。私、本当に限界なの……」
しかし蒼介は私を一瞥だにせず、きびすを返した。
「結衣(ゆい)、いい加減にして。俺は医者だ。すべての患者に責任を持つ義務がある」
癌の激痛が瞬時に私を飲み込み、頭が張り裂けそうなほどの苦しみの中、私は声を上げて泣き叫ぶしかなかった。
手に検査結果を握りしめた看護師が、首を振ってため息をつく。
「これ以上は限界です。今週中に手術をしなければ、手遅れになる可能性が……」