出会いに報い、愛に後悔せず七年間、陸川辰巳(りくかわ たつみ)と恋愛してきたが、彼には絶えずスキャンダルがあった。
だが、彼のスマホは私が自由にいじれたし、出張先に確認の電話をしても嫌がらなかったので、私は誰かと一線を越えた証拠が一度も見つからなかった。
私たちの婚約の日までそうだった。
司会者は、辰巳がどうやって私の好きな白いバラをわざわざ海外から取り寄せたと語った。
その後、本来なら私たちの七年間の思い出映像が流れるはずのスクリーンから、突然赤ん坊の大きな泣き声が響いた。
映像には、病室で新生児を抱く辰巳の姿が映っていた。
その肩にもたれかかるのは秘書の小林詩乃(こばやし しの)で、その薬指には私と同じシリーズのダイヤの指輪が光っていた。
彼女は泣きながら、誤解だと私に弁解した。
辰巳も冷ややかな表情を浮かべた。
「詩乃はシングルマザーなんだ。上司としての義務で面倒を見ただけだ。お前もそこまでしつこく追及しなくてもいいだろ?」
会場は水を打ったように静まり返り、皆が私が取り乱すのを待っていた。
しかし、私は穏やかに指輪を外し、彼に差し出した。
「もちろんそんなことはしないわ。むしろお二人の幸せを願うわ」