浮雲の舟、落日の契り誰もが知っている。裴淮之(はい かいし)には、心の底から慈しむ妻がいた。だがその妻は、彼が帝都に戻る直前に起きた火事で、お腹の子もろとも、一つの亡骸となった、と。
その頃、彼は任地で私に隠れて囲い者と睦み合っていた。
彼が屋敷に戻った時、奥の院は一面の火の海と化しており、ただ私の焼け焦げた亡骸を抱きしめ、断腸の思いで泣き崩れることしかできなかった。
この世から、裴家の若夫人は永遠に姿を消した。
そして彼は知らない。私がとうに江南(こうなん)地方へ下る船に、密かに乗り込んでいたことなど。