夜汽車の音が遠ざかるような感覚――それが『ヨモツヒラサカ』の作品を初めて読んだ時の印象だった。独特の時間感覚と、日常の隙間に潜む非日常を描く手法は、読者をゆっくりと異世界へ引き込む。登場人物たちの会話は一見
平凡だが、その裏側に流れる沈黙や間が重要な役割を果たす。
特に『ヨモツヒラサカ』の舞台設定は、現実と幻想の境界線が曖昧な点が特徴的だ。廃墟のような町、繰り返される日常、突然現れる不可思議な存在――これらの要素が絡み合い、読者は気付かないうちに物語の深層へと導かれる。散文的な文体の中に、鋭い社会
批評や人間観察が散りばめられているのも見逃せない。