あの日の約束に、誰も来なかった娘が心臓の病気を患い、私·石原小春(いしはら こはる)はやむを得ず、大学時代にいちばん嫌いだったルームメイトに金を借りるしかなかった。
ルームメイトはカフェに座り、気のない様子で私に10万円を送金してきた。
「あんた、あんなに早く結婚したから、てっきり何か得でもあるのかと思ってたのに。まさか結局、私に金を借りに来るなんてね」
娘のために、私はぎゅっと手のひらをつねり、愛想笑いを無理やり浮かべた。
「私なんか、あなたとは比べものにならないもの。見てるだけでわかるわ、毎日どれだけいい暮らししてるか」
彼女は鼻で笑った。
「そういえば、偶然ってあるのね。私の彼氏にも、あんたの娘と同じくらいの年頃の娘がいるの。
その家のくたびれた奥さん、ずっと娘の病気を治すために金を工面してるんだけど、実は私の彼氏、とっくに娘に高額の生命保険をかけてるのよ。
彼氏が体の調子が悪いって言ったら、そのくたびれた奥さん、すぐ10万円振り込んで病院に行きなって言ったの。でも実際は、その10万円で私のバッグを買うつもりだったのよ。今日は機嫌がいいから、あんたに恵んであげたってわけ」
全身の血の気が引いた。
ふいに思い出したのは、昨日風邪をひいたと言って、体を診てもらうからと私に10万円をせびた夫のことだった。