物語の論理構造そのものがへりくつによって変形することがある。政治や権力が絡む作品では、言葉のすり替えや理屈の押し付けがテーマを押し広げ、物語全体のトーンを定める役割を果たす。具体例を挙げると、『ゲーム・オブ・スローンズ』に見られる策略や詭弁は、単なる駆け引きではなく世界観の道徳的な荒廃を映し出す鏡になっている。
僕はこうした作品を追うたび、自分の倫理観が登場人物のへりくつに対して試される感覚を抱く。へりくつはしばしば物語の推進力にもなり、キャラクターの決断や裏切り、同盟の形成を正当化する言葉が事件を生み出す。読み手としてはその理屈の
綻びを探り、どの論法が真実を覆い隠しているのかを見抜くことが娯楽でもある。
結局、へりくつは単に悪役の手法ではなく、文明や価値観の脆弱さを浮き彫りにする装置だと感じている。僕は物語を楽しむとき、言葉がどれだけ人や集団を動かすかを常に考えてしまう。