画面の一コマが持つ力を改めて感じさせられたことがある。アニメ化によって
特級呪物の見せ方がどう変わるかを考えると、まず第一に「物質としての重み」と「語るべき情報」の配分が変わることが大きいと思う。
『呪術廻戦』で言えば、漫画のコマ割りで断片的に示される指や呪具の描写は読者の想像力にかなり委ねられている。一方アニメは動き、音、色彩で直感的に畳み掛けるので、指のぬめりや光の反射、微かな気配まで視覚化される。それによって特級呪物が「ただの物」ではなく、生々しい存在感を持った“敵”として画面に現れる。僕が特に好きなのは、静寂を使って恐怖を増幅させる演出だ。ページでは間(ま)が読者の読み速さに左右されるが、アニメは音響と間の取り方で狙った感情に誘導できる。
もう一つ挙げるなら説明の仕方が変わること。原作では長めの語りや回想で背景を補うことが多いが、アニメは省略してビジュアルで補強したり、逆に語りを追加して解りやすくすることもある。その結果、呪物の“正体”や危険性の伝わり方が変わり、キャラの行動動機や恐怖の受け止め方まで変化する。つまりアニメは視覚と聴覚を使って呪物をより即物的に、あるいは鮮烈に感じさせる手段を持っているということだ。