あの過去設定に触れると、まず断片的な証拠の寄せ集めとして読み解くのが楽しくなる。私が追いかけているコミュニティでは、
ナルセの過去は“意図的な欠落”として扱われることが多く、作者が明言していない空白をファンが補完している場面をよく見る。たとえば、'Shadow Chronicle'の一場面を根拠に、幼少期に関する描写が匂わせとして機能しているという見方が広まったことがある。そこでは具体的な出来事が語られない代わりに、周囲の反応や小物の描写だけが残されており、それを基に複数の仮説が生まれたのだ。
次に、心理的な側面から読む人もいる。私はそういう読み方でナルセの行動パターンや人間関係の距離感が説明できると感じている。過去の痛みや喪失が現在の冷静さや皮肉に繋がっているという解釈は、キャラクターに厚みを与える手法として説得力がある。ファン同士の議論では、欠落を埋める創作(ファンフィクションや二次創作)がさらに多様な解釈を生み、コミュニティを活性化させている。
最後に、メタ的に考えると、作者の狙いとして“謎を残す”ことが作品の長寿に寄与しているとも思う。完全に説明されてしまうと想像の余地が減るため、あえて曖昧さを残すことで読者が能動的に世界に関与するよう仕向けているのではないか。そういう読み方をすると、ナルセの過去は単なる設定ではなく、物語体験を豊かにする装置に見えてくる。私はその装置としての不完全さがけっこう好きだ。