翻訳の職場をちょっと覗いたつもりで話すと、英語タイトルには大きく分けて直訳寄りと意訳寄りの二通りがありそうだ。実際に見かけた例では、落ち着いた語感を残した『The Healer Who Was Exiled From the Party』という表現を採っていることが多い。ここでは“exiled”という語が使われていて、単なる追い出し以上の、コミュニティからの疎外感やドラマ性を強める効果がある。原語のニュアンスを丁寧に伝えたいタイプの翻訳者が好む選択だと思う。
一方で読み手の目を引くためにもっと短く、強いインパクトを狙ったものもある。例えば『Banished Healer』や『The Banished Healer』といった圧縮されたタイトルだ。こちらはキャッチーでサムネ映えする利点がある反面、元の「パーティーから追放された」という詳細が失われる危険がある。自分は作品のトーン次第でどちらが合うか変わると感じていて、コメディ寄りなら短め、シリアス寄りなら前者のような丁寧な英題がしっくり来る。
翻訳の背景には商業的な判断や出版社の方向性も絡むので、たとえば『That Time I Got Reincarnated as a Slime』の英題のように最初からブランディングを重視して大胆に変えるケースもある。だから実際どれが正解かは一義に決められないが、個人的には原題の細かさを残した『The Healer Who Was Exiled From the Party』が好きだ。