群衆の反応を丁寧に積み重ねる手法は、作者の得意技の一つだと感じる。
ある場面では、リーダーを讃える歌や行列、象徴的なピクトグラムが次々と並べられ、私はそこに集まる人々の顔の描写に目を留めた。表面的には熱狂だが、皮膚感覚として描かれる疲弊や無関心も同時に提示され、崇拝が“演技”であることが暗示される。『進撃の巨人』の一部エピソードが示すように、恐怖と希望が混ざる状況では、強さに頼ることが尊ばれ、やがて強者そのものが崇拝の対象になる。
私が興味深く思ったのは、作者が偶像化のプロセスを断片で見せる点だ。宣伝だけでなく、偶然の英雄譚や噂話、メディアの切り取りが積み重なって
権威が築かれる様子を、私は冷静に追えた。最終的に権力が神格化されるのは、物語の外側にいる私たちにも通じる警告だと受け取っている。