声の質を言葉にしようとすると、まずは“柔らかさ”と“内向的な艶”が同時に思い浮かぶ。そういう意味で、私が最初に連想するのは『
化物語』の撫子(千石撫子)だ。高めのピッチにほんの少しの息の混ざり、語尾でふわっと力が抜ける感じ──
志帆の声にもその
徒然とした揺らぎと、聞き手の距離を一気に縮める繊細さがあると思う。静かな台詞や囁きの場面で情感が滲むタイプの声質で、台詞の細かな強弱で心情を見せるのが巧みだと感じるから、撫子の音像は非常に響く。
撫子と志帆を比べると、共通点は息の使い方と小さな震えの表現にある。撫子は時に幼さを残す透明感があって、それが弱さや不安を演出する武器になる。志帆も、同様に“守ってあげたくなる”色気と儚さが両立している。だが違うのは、志帆の方が感情表現の幅を広く持てる点で、芯のある強さを出すときは声がくっきりと輪郭を持ち、聞き手を引っ張っていく力がある。撫子の柔らかさを軸にしつつ、場面に応じて張りや締まりを作れる——そのバランス感が志帆の魅力だ。
自分の耳で聴くと、志帆の声はキャラクター表現で多彩に使えそうだと思う。内向的で繊細な少女役から、心に秘めた強さを持つヒロインまで、同じ声色で異なる印象を与えられる。だからもし志帆の声質を一人のアニメキャラで示すなら、撫子の持つ「柔らかさと脆さ」を基準に、そこへ志帆特有の芯を重ねたイメージが最も近いと感じる。そういう声って、耳に残るんだよね。