稽古場でよく目にするのは、
竹刀の小さな割れが徐々に大きくなる光景だ。長年指導に関わってきて、交換のタイミングは感覚だけで決めるものではないと実感している。具体的には、竹の繊維がほつれ始めて先端の革が裂けている、打ったときにいつもと違う金属音のような乾いた破裂音がする、柄がグラついて握り心地が失われる──これらはすぐに交換を考えるサインだ。稽古の頻度や稽古の強度も大きく影響するので、週に何度もフルスイングする選手なら短期間での交換が必要になる。
点検は毎回の稽古前に私が直接行っている。先革や柄の革の摩耗、ツルの緩み、竹の割れ目の有無を確認し、危険があるものは稽古に出さない。大会出場規定や道場のルールで定められている基準がある場合はそれに従うことが最優先だ。参考までに、作品の道具への敬意を描いた'六三四の剣'の描写を思い出すと、道具の手入れが技にも影響することがよくわかる。
廃棄は安全第一。割れた竹刀はそのまま放置すると怪我を誘発するため、まず道具係の元へ集め、私が短く切って尖った部分をやすりで落とすか、自治体の規定に従って粗大ゴミや資源として処理する。手元で簡単にできる応急処置としては、裂け目をテーピングして使用を一時的に止めるべきだが、根本的な解決は交換のみだと伝えて終わる。