江戸時代の治安維持に関わる役人として、
捕吏と同心はよく混同されがちですが、実際には役割や立場に明確な違いがあります。
捕吏は、いわゆる『岡っ引き』と呼ばれる非公式の捜査助手で、町人から採用されることが多く、与力や同心の指揮下で活動していました。彼らは犯罪捜査や情報収集の最前線に立ち、町の噂や裏事情に精通していることが強みでした。服装は特に決まっておらず、町人と同じような姿で活動していたため、対象者に気づかれにくいという利点がありました。
一方、同心は幕府や藩に正式に任命された下級役人で、与力の補佐役として行政事務や警察業務を担当していました。十手持ちと呼ばれることもあり、公式の権限を持っていた点が捕吏との大きな違いです。服装は裃姿が基本で、公的な立場を明確にするため、一目で役人とわかる格好をしていました。
面白いことに、捕吏は『足で稼ぐ』現場主義、同心は『書類で動く』官僚的な要素が強かったようです。両者がうまく連携することで、江戸の治安が維持されていたのでしょう。時代劇で描かれるような緊張感あるやり取りも、この役割分担から生まれたのかもしれません。