勘違い体質のカンナさん

勘違い体質のカンナさん

last updateHuling Na-update : 2026-05-29
By:  京極かずらIn-update ngayon lang
Language: Japanese
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神崎カンナは、才色兼備の女子高生である。しかし彼女はなぜか過去の記憶が無く、そしてとんでもない勘違いが多かった。そんな彼女と出会ったのは、偶然同じ町に住んでいた霧山キセキ。彼を含め、周囲の人々を困惑させながら、カンナの青春は続いていく。

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Kabanata 1

目覚めと声

時は2012年4月。日本某所にて、一人の少女が目を覚ます。

そこは何処かの室内であり、真っ暗な暗闇の中に、一台のノートPCが置かれた場所だった。

奇妙なことといえば、そこにいるのは少女独りであることと、PCからの声が絶えず聞こえているということだ。

「……聞こえていますか? 目覚めてください……」

声を聞き、少女はゆっくりと目を開けた。

少女の瞳は深いブルーで、髪はロングのオレンジ色をしており、服装はパジャマ姿だった。

「目覚めましたね。気分はいかがですか?」

「…………」

声の問いかけにも、少女は答えない。突然、知らない声に話しかけられれば、警戒したり戸惑ったりするのは当然のことではある。

「そう、その反応は予測していました。おそらくは、警戒していることでしょう。しかし私はあなたの敵ではありません。それだけは理解してください。"神崎《かんざき》カンナ"」

その名前に、少女は視線をPCへと移す。

神崎カンナ。それが少女の名前だった。

「それは、私の名前ですね?」

「そうです。良かった、その記憶は持っていましたね」

声の主は安堵した様子だった。

「なぜ私の名前を知っているのですか? それにその記憶、というのは……」

「そのままの意味ですよ。思い返してみてください」

カンナは自らの記憶を探った。しかし、自分の名前以外の記憶はどうしても浮かんでこない。

「……ダメです。思い出せません、何も」

「そうでしょう。しかし、私はあなたの情報を全て存じ上げているのです」

声の主は、どこか得意げな調子で言った。

「全て、ですか?」

「全て、です。神崎カンナ、16歳。血液型O型、等々……」

「人にはプライバシーというものがあり、すべからく保護されるものだと思うのですが。……まさか私は、実は人間ではないとでも……!?」

「そのような事実はありません。安心なさい」

カンナは一人で考え込み、声はぴしゃりと否定する。

「それならば安心です。しかし……。あなたは何者なんですか? 顔も姿も見せずに」

声は加工がかかっており、聞いただけでは男か女かもわからなかった。

「私のことに関しては詮索は無用です。仮に呼び名をつけるとすれば、そうですね…………」

声はしばらく途切れた。通信が切れたのかと思ったカンナは、そっと声をかけた。

「あの、もしもし?」

「失礼。私の呼び名ですが、"Y"としておきましょう」

Yの言葉が、暗い部屋に静かに響いた。

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9 Kabanata
指示と接触
「あくまで素性は明かさないということですか。それで、そのYさんが私に何のご用なのでしょうか?」 「はい。それでは本題に入らせていただきます。単刀直入に申しますと、あなたにはこれから、私の指示に従っていただくことになります」 Yははっきりと伝えた。カンナの意思の有無を言わせずに。 「ずいぶんと強制的なご要件ですね。もし、私が拒否した場合は?」 「それはできないはずです。なぜなら、私の協力がなければ、あなたは生活できないのですから」 カンナはそこで、周囲を見渡した。何も変わった所がない部屋ではあるが、人がいなかった。 「ひとつ、いえ二つお尋ねしてもいいですか?」 「どうぞ」 「ここはどこなのですか? それに、私以外に誰かいないのですか?」 「この場所についてお答えします。ここは『花暁町』。都市開発が進み、近年目覚ましい発展を遂げています。メディアにも取り上げられることの多い町なんですよ」 「はぁ……」 カンナは気の抜けた返事をした。自分が聞きたかったことはそこではない、と言いたかったのである。 「それから、この部屋に住む人間ですが、あなた一人です」 「そうでしたか。私にも家族がいると思いましたが、その様子では、少なくとも今はお会いできないのですね」 カンナは絶望したかのように、仰向けに寝転んだ。彼女の目には、真っ暗な天井が映る。 「あまり悲観的になりませんように。私はあなたの敵ではありません。むしろ助けになるために、今こうして話しているのですから」 「助けに? 姿も見せない人がですか?」 「ええ。これからその証拠をお見せしましょう。もうすぐ、来るはずですから」 「来るとは、一体何が……」 ピンポーン。 カンナは言葉を切った。玄関からチャイムが鳴り響いたのだ。 「来たようですね。出てください」 何がなんだか理解できぬまま、カンナは立ち上がって玄関へと向かう。久しぶりに立ったかのように、足はガタガタと震えており、ゆっくりとした足取りで歩いた。 扉を開けると、一人の配達員が外に立っていた。 「こんにちは。神崎カンナ様ですね?」 「はい。そうですが」 「こちら、あなた宛のお荷物です。判子かサインをお願いいたします」 「はい……」 カンナは言われるがままサインを書き、小さめのダンボール箱を受け取った。
last updateHuling Na-update : 2026-04-19
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勘違いと逃走
それから数分後、渡された私服に着替えたカンナは、部屋の外へと出た。 (あのYという声の指示に従ってしまいましたが、本当に大丈夫でしょうか? 私の助けになるという言葉は信用できるかもしれませんが) 歩く間も、彼女の疑念や想像は止まらなかった。 (しかし、次の指示は一体何なのでしょう。"この町に住む、私と同年代くらいの少年に接触しろ"と言っていましたっけ?) 当てもなく、町中を彷徨うカンナ。すれ違う人々の中には、まだ条件に合う男はいない。 (それにしても接触、とはどうすればいいのでしょうか? ただ声をかければいいのか、後をつけて、自宅を特定すればいいのか……いえ、それはいけませんね) あれこれ考え、ふと視線を上げたカンナの前には、一人の少年が歩いていた。 少年の背丈はカンナとほぼ同じ。カンナは意を決して、少年の目の前に躍り出た。 「あの、少しよろしいでしょうか?」 「……はい、何か?」 突然現れた少女から、間違いなく自分に向けて言われた少年は面食らった。 (どうしましょう、何と言えばいいか全く考えていませんでした。謎の声に導かれて、あなたに接触することになりました。などと言っても理解されるはずはありませんし……) 声をかけてから、カンナは考えこんでしまっていた。 ずっと黙ったままの彼女を不審に思ったのか、少年は逆に声をかけた。 「あのー、大丈夫?」 「はい、私は問題ありません」 「それならいいけど。俺、用事あるから。失礼」 少年は踵を返して、来た道を引き返そうとした。 「待ってください」 チャンスを逃すまいと、カンナは再び少年の前へと立ち塞がる。 「何? 変な宗教の勧誘なら、お断りなんだけど……」 カンナは咄嗟に考えた答えを口にした。 「あなたと、お近づきになりたいのです」 少年は一瞬固まり、我に返った時にはまごついていた。 「あの、それはどういう、意味……?」 「ですからあなたとお近づきに」 「へっ?」 カンナは一歩踏み出す。少年は思わず、半歩下がった。 「なりたいの」 「ちょっ」 カンナはまた一歩踏み出す。少年は動揺して、今度は動けなかった。 「です」 少年との距離、約10センチの所で、カンナは足を止めた。視線はお互いの瞳を見つめている。 涼しい顔をしたカンナと対象的に
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クラスメイト
「おかえりなさい。いかがでしたか?」 少年が去った後、カンナはYのいる部屋へと戻り、結果を報告した。 「それが、お声をかけましたが、逃げられてしまいました」 「逃げられた?」 「はい。言われた通りにしたと思うのですが」 カンナはYに、事の顛末を話した。 「……なるほど。それでは彼が困惑したのも納得です。私が言った接触とは、『この近くに引っ越してきました』というような挨拶程度の話をしろという意味です。体に直接触れろということではないのですよ」 「そうだったのですか」 Yは、少し呆れ気味に説明した。カンナはどこか他人事のような返事をする。 「それに、接触と接近を間違えるとは。あなたはどこか早とちりや聞き間違い、勘違いが多いようですね。……わかってはいましたが」 「そう……なんでしょうか」 「まぁいいです。それで、あなたが出会った人はどういう方でしたか?」 「背丈は私とそう変わりませんでした。なので同年代かと。髪は癖毛で、黒髪でした」 「それはこんな人ですか?」 画面には、まさしくあの少年が映し出されていた。癖毛の髪型もやや冴えない顔も、そっくりそのままだった。 「この方です。間違いありません。……でも、なぜあなたがこの画像を?」 「詮索は無用。首尾は上々です。感謝しますよ、カンナ」 Yはそれ以上の質問はさせまい、といった調子で言い切った。カンナは黙ってしまった。 「それでは次の段階へと移ります。もうすぐ届け物が来ますので、それからお伝えします」 ピンポーン。 その言葉通り、再びチャイムが鳴った。 数日後。花暁町の私立高校『花暁第一高等学校』、通称花暁一高にて、新学期の始業式が執り行われた。 同校二年三組。そこに、カンナが『接触』して逃亡した少年がいた。黒板を正面に、一番右側の最後尾の席で、誰とも話すことなくボーッとしている。彼の隣は空席だった。 その時、ガラリと戸が開き、担任の教師が入ってきた。黒髪ロングヘアーでサバサバした雰囲気の女教師だった。 「えー、ご機嫌よう皆さん。今日からこのクラスの担任を務めさせていただく大山です。よろしく」 大山は全員の前で挨拶した。パラパラと拍手が起こった。 「新学期早々だが、三組に新しい仲間が入ることになっている。仲良くしてやってくれ。今呼んで来るからな」
last updateHuling Na-update : 2026-04-19
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 無事に編入を済ませた神崎カンナ。彼女の周りには、自然に同クラスの生徒たちの群がりが出来ていた。「神崎さん、よろしく〜。仲良くしよ〜!」「彼氏いる? ゼッタイいるよね。こんなに美人なんだもん」「ハーフ? オレンジ色の髪なんて、初めて見た〜」 カンナを質問攻めにする生徒たち。編入生が必ず通る洗礼のようなものだ。 当の本人は、慣れない環境に戸惑っていた。(皆さん、なぜ私の周りに集まるのでしょう? これが編入生のしきたりのようなものなのでしょうか。それに、仰っていることが良く分かりません……)  そんな中、一人の女子生徒の質問が飛ぶ。「ところで、どっから来たの? どこ中?」(ドコチュウ……とは? どういう意味なんでしょう。〇〇中というのは、何かの中毒のこと……?)「あ、あのっ」 カンナは賑わいを遮り、声を上げた。編入生の言葉を聞き逃すまいと、生徒たちは静まりかえる。「私たち、未成年ですよね。でしたら、そのようなお話は控えるべきだと思いますが」 カンナが話し終えても、すぐには賑わいは戻らなかった。誰もが、彼女の言葉の意味を理解するのに頭をフル回転させなければならなかったのだ。「……あ、ああそうだよね。あたしたち未成年、高校生だもんね。もしかして、マジメ系かな、神崎さん?」 周りの生徒たちも、笑いながらうんうんと頷いていたが、誰ひとりカンナの言葉を理解はしていなかったと思われる。「おーい、席につけ。授業始めるぞ」 その直後、国語の男教師が入室してきたため、質問タイムは終わりを告げた。「はぁ、やっと終わったか」 起立、礼、着席の号令の後、カンナの隣の霧山キセキはため息混じりに呟いた。「終わった? 授業はこれから始まるのでは?」 カンナは不思議な顔でキセキに尋ねた。キセキは面倒臭そうに質問に答える。「そうじゃなくて、あんたの周りでワイワイ騒いでたのが終わったって言ったの。正直、嫌だったんだ」「まあ、そうでしたか。でも、休み時間に会話をしてはいけないなんて校則はありませんし、悪いことではないですよね?」「そういう問題……? 俺が嫌だって言ったのは……」「おい、授業始まってんだぞ。新学期始まったばかりだからって甘く考えないように」 厳つい顔の教師に睨まれ、自身の声のボリュームを気にしていなかったキセキははっと気づき、口をつぐんだ。
last updateHuling Na-update : 2026-04-27
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追跡
 一時限目が終わり、教師が教室を出ると、生徒たちは途端にガヤガヤと会話を始めた。苦しい空気から解放された生徒たちは、溜まった鬱憤を晴らすかのように会話に花を咲かせるのだ。「あの、霧山さん。さっきのお話ですが、どういう意味ですか?」 大きく伸びをしていたキセキは、その姿勢のまま固まった。「お話……? もしかして、さっき俺が言ったやつ?」「そうです。"石"がどうとか言ってましたね。よくわからなかったので、教えていただけないかと」 カンナは無表情ながら、目だけはキラキラと輝かせてキセキに顔を近づける。キセキは身を反らせてできるだけ密着しないように顔を遠ざけた。「そ、その話はまた今度にしてくれよ。ほら、次の授業の準備とかあるし……」「次の授業? まだあと十分くらいあるじゃないですか?」 カンナは時計を見て首を傾げる。キセキは次の授業の教科書を広げて、カンナの方を全く見ずに呟いた。「……予習だよ。授業、ついてけなかったら困るからな」「なるほど。霧山さんって、とても真面目な方なんですね。私も見習いましょう」 カンナは席に座り、同じように教科書を取り出して授業の準備を始めた。 キセキは教科書に目を顔を埋め、大きなため息をついた。 その後、カンナは授業が終わるごとに、キセキに件の質問をしつこくした。キセキは昼食の時間だからとか、寝たふりをするとかして誤魔化してやり過ごしたが、放課後になる頃にはとうとうネタも尽きてきていた。「霧山さん、そろそろ教えていただいてもいいのではありませんか?」「……しつこいなあんたも。とにかく、深い意味はないから気にしないでくれ」「それでは私の気が済まないのです。お願いします。教えてください」「嫌だ。もう帰りの時間だろ? 俺、部活やってないから帰る。あんたもやる事ないなら帰りなよ。俺なんかに構わずにさ」 キセキはバッグを肩にかけると、教室を出ていった。 その背中を、カンナはすぐさま追いかける。「待ってください。石ってどういう意味なんです? 言えない理由が何かあるのですか? それだけでも教えてください!」「なんてしつこいんだ……。勘弁してくれって!」 キセキはカンナの追跡をひたすら逃げ続けた。 逃げ続けるうちに、元々体育会系ではなかったキセキは疲労の色が見え始め、最終的に男子トイレの個室に駆け込んでいた。(こ
last updateHuling Na-update : 2026-05-03
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キセキの秘密
 数刻後、二人は学校の屋上へと来ていた。転落防止のフェンスが張り巡らされ、下からの放課後の賑やかな声が隙間から入り込んでいた。「屋上って、生徒でも勝手に入れるものなのですね。私、知りませんでした」 カンナは段差に腰掛け、辺りを見渡しながらさらりと言った。キセキは咳払いをひとつしてから、彼女の元へと歩み寄る。「……そゆこと言うなって。ほら、これおごるから」「なんです?」 キセキが手渡したのは、自動販売機で買ったみかんジュース(果肉入り)だった。 カンナは物珍しそうにそれを受け取ると、開栓して唇を缶へと運ぶ。「……! 美味しいですね、これ」「ただのジュースだけど。飲んだの初めて?」「ええ。初めて飲みました。」「マジか。変わってんな、やっぱ」 キセキもカンナの横に座り、同じく買ったジュースを口に運ぶ。 初めてのみかんジュースの味に感動していたカンナだったが、ここにいる理由を思い出すと、忘れないようにすぐさまキセキに尋ねた。「そうです、例の話、教えてください」「そうだったな。……やれやれ、忘れてくれたかと思ったけど、そりゃ無理か」 キセキは観念し、話し始める。「俺が自分のこと石って言ったことだけど、一言で言えば存在感がないってことだよ」「ソンザイカン?」「そう。昔から目立たなくてさ。友達とかくれんぼなんかした時には、最後まで見つけられなかった上に、忘れられて帰られたこともあった。あとは遠足とかの点呼で俺の名前飛ばされたり、久しぶりに会った幼稚園の時の友達から存在を忘れられてたり……」 キセキはそこまで話し終えると、大きくため息をひとつつき、自嘲気味に笑みを浮かべていた。「ま、そんなわけだから、あんたも俺にはあまり関わらない方がいいよって……」 そう言いながらキセキはカンナの方を向くと、頬に何かが触れるのを感じた。それは、彼女の指だった。キセキは面食らった。「にゃっ!?」「驚きました。世の中には、柔らかい石もあるのですね。しかも、人の形をしているとは」 そう言いながら、カンナはキセキの頬をつまみ、引っ張り始める。キセキの口は引き伸ばされて、間抜けな表情になった。「むー、本当に柔らかいですね。私よりも柔らかいかも」 自らの頬を反対の手でつまみながら、カンナはまだキセキの頬を離さない。キセキは自分の顔が熱くなるのを感じていた。
last updateHuling Na-update : 2026-05-11
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報告
昇降口までの道すがら、カンナはキセキに尋ねる。「霧山さん、さっきの飲み物のお金、払いましょうか?」「いいよ。おごるって言ったろ?」「そうですか。あんなに美味しい物をいただいたのに、なんだか悪いですね」「いいってば。あとさ、できれば俺のことは霧山じゃなくって、キセキって呼んで欲しいんだけど」 キセキはそう言った。なぜか、名字で呼ばれることを拒んでいるかのような口ぶりだ。「そうですか。それでは、私のこともカンナと呼んでください」「いや、それは遠慮しとく」「なぜです?」「なんつーか、適度な距離ってもんがあるだろ。変な噂が立つかもしれないし……」 そんな会話をしながら階段を降りたところで、二人はクラスの二人組の女子と遭遇した。 彼女たちはカンナとキセキ、二人揃って現れたことを見ると、瞬時に想像がついたようだった。「あれ~、神崎さんと霧山クン……だっけ? 二人で一緒に何してたの〜?」「もしかしてだけど〜、二人付き合ってんの?」「いや違くて。これはその……」 ここで神崎カンナ、十数分前の記憶を遡る。「ええ、付き合いました」「はっ!?」 一瞬、静まる四人。女子二人は顔を見合わせると、満面の笑みを浮かべた。「やっぱりそうなんだ!!」「すごーい。編入初日にカップル成立なんて。一体何があったの?」「いやいや違うって。……おい、何を勘違いしてるんだよ。付き合ってなんかないだろ?」 興奮する女子二人を尻目に、キセキはカンナを嗜めた。しかし、彼女はきょとんとした表情で答える。「違うのですか? でも先ほど、キセキさんが付き合えと仰って、私は了承しましたよ?」「そういう意味じゃないんだって。あのな……」 その後キセキの帰宅時間を一時間ほど遅らせ、その場の誤解はひとまず解けたのだった。 その後自宅へと帰還したカンナは、すぐさま件のPC前へと向かった。正体不明の声、Yと話をするためだ。「あの、ただいま帰りました」「おかえりなさいカンナ。初日はいかがでしたか?」「とても楽しかったです。先日お会いしたキセキさんとも親密になれましたし」 嬉しそうに、カンナは今日の出来事を報告する。Yはどこか安心した風に話した。「そうですか。私の言った通りにはできたようですね」「それに色々なことを知ることができたように思います。キセキさんは石であって石ではな
last updateHuling Na-update : 2026-05-16
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上履き
 午前七時。神崎カンナは起床すると、歯を磨いて顔を洗い、朝食に自分で用意したトーストを齧り、制服に身を包むとPCの前に座し、画面に向かって声をかけた。「おはようございます。これから学校へ向かいますね」「おはようございます。気をつけて行ってらっしゃい」 正体不明の声、Yに送られて、カンナは家を出る。 霧山キセキと学校の屋上で、友好を深めた翌日のことであった。 学校へと向かう道中、カンナは見知った背中が視界に入った。黒い癖毛にカンナと同じくらいの背丈だ。「おはようございます」 カンナはその背中に向けて声をかけた。振り返った顔は、やや驚いた表情をしていた。「お、おはよう」 霧山キセキは、どもりながら挨拶を返した。カンナは気にせず、キセキと並んで歩みを合わせた。「朝もご一緒できましたね。お家、近いのですか?」「ん、まぁね。向こうの丁字路、右曲がって少し歩いたとこだから」 キセキは親指で背後を指しながら言った。「そうだったのですか。私たち、すでに少しだけお近づきになれていたのですね」「そうとも言えるのか……? はぁ、また変な噂立たなきゃいいけど」 キセキは昨日の、カンナの言葉による誤解を思い出しながら呟いた。 揃って学校へ到着し、靴箱で靴を履き替えていざ教室へ、というところで、カンナは立ち止まっていた。自分の靴箱の中をじっと見て、固まっている。「おーい、神崎? どうした?」 キセキは心配そうに尋ねた。カンナは不思議そうな顔だけをキセキの方に向け、答えた。「いえ、なんでもありません。先に行ってください」「そうか? あと十分で学校始まるからな」「ええ。大丈夫です」 曖昧な返事をするカンナ。キセキも不思議そうな表情を浮かべたが、とりあえず教室へと向かった。 キセキが教室に入ってから数分後に、カンナも入室した。昇降口では挙動不審だったが、今の彼女に特に変わった所はないように見えた。「遅かったな。何かあったのか?」「いえ、問題ありません。ただ……」 カンナは視線を自分の足先へと移す。キセキもつられてそちらに目を移すと、彼女の足には白い靴下だけが履かれていた。足の裏は、黒く汚れている。「……上履きは?」「ありませんでした。近くを探したんですが。でも名前を書いてありますので、見つかりますよね?」「いやだけど、それってやっぱ……」
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