現場で長く音楽まわりの手配を任されてきた経験を踏まえ、具体的にどう動くかを整理してみる。
まず、'
通りゃんせ'自体は古くから伝わる童謡・俗謡であり、メロディや歌詞の原典部分は一般にパブリックドメイン扱いになることが多い。ただし注意点が山ほどあって、映画で使うときは「どの部分を」「どの形で」「誰の演奏やアレンジを使うか」によって必要な手続きが変わる。既存の録音(既製の音源)をそのまま使うなら、作曲著作権の扱いだけでなく、その録音のマスター使用権や演奏者の権利もクリアにしなければならない。
私が現場でよく取る選択肢は二つある。ひとつは、既存録音をどうしても使う場合に権利者(レーベルや演奏者、編曲者、管理団体)に対して同期使用許諾(シンクロ権)とマスター使用許諾を取得することだ。配給地域や媒体(劇場公開、テレビ、配信、DVDなど)ごとに範囲と対価を明確にしておく必要がある。もうひとつは、オリジナルの演奏・録音を制作する方法だ。自前で演奏を起こせばマスター権の問題は回避できるが、編曲が独自の場合は編曲者の著作権が発生するため、事前に契約で権利処理と報酬を決めておくことが重要だ。
実務的には、JASRACなどの著作権管理団体が関与するケースが多く、使用報告(キューシート)を正確に出すこと、公開済みの作品なら著作権保有者の死亡年+70年など期間の確認をすること、国際配信があるなら海外での取り扱いも合わせてクリアにすることが必須だ。権利関係があいまいなまま使うと、配信停止や賠償請求につながるリスクが高いので、面倒でも契約書を残すのが最善だと実感している。